例の某パチンコチェーン店、相変わらず、チェーン展開の歴史を改ざんして憚らない様子。
なので、この問題を取り上げた過去記事を、再びアップする事にした。
別に、出玉が良いとか悪いとか、サービスの良し悪しとか、そんな事は問題にしていない。
80年代、90年代のパチンコ史を学ぶ者として、大手チェーンともあろうものが、自社の歴史を歪曲して紹介する事が許せないのだ。
まぁ、初めて読む人には、何のことかさっぱり判らないだろうが…。
以下は、その過去記事の再掲(一部加筆・修正)である。興味があればご覧いただきたい。
今回は、某・パチンコチェーン店の歴史・沿革にまつわる話。
ほぼ完全な事実に基づいたフィクションである。
大手パチンコチェーン「ヘンリー」は、首都圏のファンなら「あー、あの店か」とピンとくるほど、その名を知られた存在である。
この「ヘンリー」チェーンを運営する「エスプ商会」は、古くからパチンコ業界に参入。
1960年代に直営1号店を東丘駅前にオープン。その後も、各地でホールを開業し、既に40年以上が経過している。
但し、1号店開業時に「ヘンリー」の屋号は無く、まだ「銀玉会館」という名だった。
銀玉会館は、開業から30年以上経った2000年に、「ヘンリー東丘店」と屋号変更して再オープンしている。
この図式は、エスプ商会が1960年代~1990年に立ち上げた全直営店に当てはまる。
これらの直営店は、「チューリップ」「天釘ホール」(1970年代に開業)、「ブッコミ会館」(1990年に開業)と、地域ごとにバラバラの屋号で営業していた。
その為、一般のパチンコファンで、「銀玉会館」「チューリップ」「天釘ホール」「ブッコミ会館」が同一の系列店と知る者は、ほとんどいなかったと思われる。
いずれも、2000年~2004年の時期に一旦休業後、新たに「ヘンリー」と屋号を変えて、リニューアルオープンしている。
一方で、1992年以降にエスプ社が新規開業した店については、当初から屋号は「ヘンリー」である。
このように、エスプ商会は、古くからホール運営に携わってはいるが、現在の屋号「ヘンリー」については、1992年から使用を開始した。
その後、都内を中心に規模を拡大した結果、有名なチェーンへと成長したのだ。
同社が、「ヘンリー」のブランド展開をスタートしたのは、まさに1992年からだ。
さて…
エスプ商会のHPには、同社の歴史を紹介する「会社沿革」の欄がある。
ここには、同社がこれまで立ち上げたホールが、年表形式でリスティングされている。
私が問題だと感じたのは、この年表の書き方である。
その一部を紹介すると…
1965年 直営第1号店として、東丘駅前に「ヘンリー」東丘店を開業
1970年 山手通りに「ヘンリー」山手店を開業
1975年 光町駅前に「ヘンリー」光町店を開業
率直に言って、この年表には強い違和感を覚える。
これでは、「ヘンリー」の屋号が、昭和時代から存在すると誤解される可能性が極めて高い。
確かに、1号店の開業時期は、1965年と古い。
しかし、開業時の屋号は「ヘンリー」ではなく、「銀玉会館」である。
当然、「ヘンリー」なる屋号は、まだ存在しない。
同様に、2号店、3号店についても、「チューリップ」「天釘ホール」のように、「ヘンリー」ではない屋号で長く営業していたのだ。
上記各店舗が現在の「ヘンリー」に屋号を変更したのは、いずれも2000年以降の話だ。
屋号を変更して10年そこそこの店舗を、「昭和の昔から40年、ずっとヘンリーでした」と不特定多数にアピールするのは、どう考えても不適切であろう。
先程も書いたが、エスプ商会が初めて「ヘンリー」の屋号を用いたのは、20年前の1992年に遡る。
都内私鉄沿線に、「ヘンリー東都店」を立ち上げた時だ。これは、当時のパチンコ雑誌やTV番組などでも、大々的に取り上げられた。
すなわち、「ヘンリー」の名が世に知られてから、現時点で20年というのが正しい。
パチ屋に限らず、会社や店舗の名称は、使用期間が長ければ長いほど、その名称に蓄積する会社の信用(ブランド価値)は大きくなる。
したがって、特定の名称を使用した期間が「40年」と「20年」では、そのブランド価値も大きく違ってくるのだ。
パチンコチェーンにおいても、長年使用された屋号には、「周知性」や「著名性」が発生する。
それゆえ、屋号の使用期間は非常に重要で、他者には正しく伝える必要がある。
そうしないと、屋号のブランド価値を不当に高めることになり、競業者である他チェーンのブランド力が、相対的に弱まってしまうからだ。
すなわち、不正競争防止法の観点からも問題が生じかねない。
いうまでもなく、会社のあゆみ(社史)を紹介するのが、歴史・沿革の意義であろう。
しかし、上記年表では、「ヘンリー」の屋号が昭和40年代から存在すると誤解され、「ヘンリー」ブランドの過大評価にも繋がりかねない。
昭和を知らない若年層ファンなら、「ヘンリーという名称は、既に40年も使われているのか。随分と歴史のあるブランドだな。」と、錯覚してしまうだろう。
もし、そういった錯覚・誤解を期待して年表を作成したならば、とんでもない話だ。
なお、全国の主要パチンコチェーン50社の会社沿革を調査したところ、特に老舗ホールにおいては、開業時の古い屋号をキチンと年表に明記するケースが多い。
或いは、「1970年に駅前店をオープン」と記すにとどめ、当時の屋号を伏せるケースもある。
また、過去に屋号変更を伴うリニューアル等があった場合、その事実を紹介する例も少なくない。
いずれにせよ、沿革を見る者が「現在の屋号が、昭和の昔から使用されている」と誤解しないよう、一定の配慮が加えられているのだ。
自社の歴史を包み隠さず、正しく伝えようとすれば、必然的にそのような体裁になる筈だ。
調査の結果、開業時の屋号が後に変更されたケースで、変更後の屋号を開業時のものとして沿革に記した例は、今回のエスプ商会の例を除き、他には全く見当たらなかった。
エスプ商会が、1960年代に1号店、1970年代に2号店、3号店と開業してきたのは事実だ。
しかし、それならば「1965年、直営1号店を東丘駅前に開業」として、開業の事実のみ示せば、実績紹介としては十分であろう。
それを「1965年、直営1号店としてヘンリー東丘店を開業」と書いたのでは、開業当時の屋号が「銀玉会館」であり、「ヘンリー東丘店」への屋号変更が開業から35年も後である以上、事実とは異なる表示になってしまう。
ちなみに、「ヘンリー」チェーンの一部店舗HPにおいて、数年前「ヘンリーグループ・35周年感謝祭」と称する創業イベントを告知していた事も、既に判明している。
しかし、実際には、「ヘンリー」の屋号が使われてから、まだ15年に過ぎなかった。にも拘らず、イベントでこうした表現を用いる事は、やはり「ヘンリー」ブランドの誇大宣伝に繋がる。
「ヘンリー」というブランド名を顧客にアピールして商売する以上、実際にヘンリーの屋号が使われ始めた時期は、キチンと明確にすべきであろう。
よって、上記の会社沿革は、社史の紹介としては、極めて不適切と言わざるを得ない。
正確を期す為にも、以下のように差し替えるべきであろう。
1965年 直営第1号店として、東丘駅前に「銀玉会館」を開業
2000年 「銀玉会館」を「ヘンリー東丘店」としてリニューアルオープン
これならば、開業時の「銀玉会館」という古い屋号が、2000年のリニューアルを機に「ヘンリー」へ変わった事が、一目で理解できる。
もし、「過去の古い屋号など、今さら表に出す必要はない」との立場ならば、
1965年 直営第1号店を東丘駅前に開業
のように、単に「ヘンリー」の文言を入れなければ良い。エスプ社の実績は、十分に伝わる。
また、どうしても「ヘンリー」の屋号を古い沿革に関連付けたいなら、
1965年 直営第1号店として、東丘駅前に「銀玉会館」(現・「ヘンリー東丘店」)開業
として、少なくとも開業時の屋号が「ヘンリー」でない事を明記すれば、何の問題もない。これが、もっとも現実的な記載方法であろう。
自社の沿革をどのような体裁にするかは、基本的には各社の自由である。
だからといって、見る者に誤解を与えるような表記まで、許されている訳ではない筈だ。
過去の屋号変更に触れない以上、それなりに沿革の書き方を工夫する必要があるのは、当然のことだ。
多くのパチンコ店が、チェーン展開の歴史を正しくHPで公表する中、エスプ商会だけが「抜け駆け」行為をする事は、好ましくない。
エスプ社が、「ヘンリー」という新しい屋号を初めて冠した店が、1992年に開業した「ヘンリー東都店」である。これは、同社にとって記念すべき出来事であろう。この店が、実質的な「ヘンリー第1号店」といっても、過言ではないのだから。
なぜ、そうした歴史的事実に沿革で触れようとしないのか、理解に苦しむ。
パチンコ業界に対する風当たりが強い昨今、業界の老舗たるエスプ社には、老舗としての「良識」を期待したいものである。
そろそろ、フィクションではなく「実名」で、すべてを公表すべき時が来ているかもしれないな…