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(90年代のパチンコ・パチスロ情報がメイン)

ほんの5g(松竹映画・1988年)

2011-11-21 18:19:46 | 懐かしのパチンコ・パチスロ映画

「ほんの5g」

(松竹映画・1988年公開)

 

監督…太田圭
脚本…一色伸幸、丸内敏治
出演…富田靖子、布川敏和、福山雅治ほか

挿入曲:竹内まりや「不思議なピーチパイ」  エンディング曲:フェビアン「冒険クラブ」


松竹映画といえば、古くは1962年(昭和37年)に「ちんじゃらじゃら物語」という手打ちのパチンコを題材にした映画を製作している。本作の公開後も、1990年(平成2年)に「パチンコ物語」(古尾谷雅人主演)が公開されるなど、松竹はパチンコ映画と縁が深い。

(あらすじ)
就職活動中の短大2年生、寿明日香(富田靖子)は、なかなか内定が貰えず悪戦苦闘する。そんな時、気晴らしに入ったパチンコ屋でフィーバーを体験してしまった事で、パチンコの楽しさを知る。そこで出会った若いパチンコ店長・薫(布川敏和)とも仲良くなり、新しい恋の予感も…。しかし、彼女には幼馴染みの三蔵(福山雅治)という相手がいた。浮気性でグウタラの三蔵に、ほとほと呆れていた明日香だが、どこか彼を憎み切れない。次第に、明日香・薫・三蔵の間には、奇妙な三角関係が生まれる。その行方は、盤面を跳ねる5gのパチンコ玉のように、誰にも予測できない。肝心の就職活動も、ようやく最終面接まで辿りつくが、そこで彼女を翻弄したのも、他ならぬパチンコ玉だった…。


本作は、「女子大生の就職難」というバブル末期の世相を背景に、主人公の明日香と彼女を取り巻く男性達との微妙な恋愛関係を描いた作品である。同時に、パチンコ店に出入りする個性的な常連にも焦点を当てている。なぜか毎日パチ屋にいる主婦(藤田弓子)、黒スーツにサングラス姿で毎日ドル箱を積み上げるパチプロ(いしかわじゅん)、落ちている玉を拾い集めては、月に一台打止めして母国に送金する健気な留学生(サイード・ミア)、三人の子を連れて頑張るお母さんパチンカー(清水ひとみ)、手打ち時代からパチンコを打っている修験者風の怪しい老人(浪越徳次郎)、パチンコの知識は豊富だが実践経験がない能書きギャル(芦田けい)など…。明日香は、パチ屋の中にも、様々な「人間模様」があることに気付かされる。

他にも、若手店長を補佐するキャリア十分な副店長役に岸部シロー、大手企業の口うるさい人事部長に大地康雄、最終面接を担当する社長役に三木のり平など、多彩なキャストが見どころである。

 

主人公・明日香を演ずる富田靖子の、朴訥で飾らぬ魅力が詰まった本作。「さびしんぼう」(1985年)や「BU・SU」(1988年)で高い評価を得た彼女の優れた演技力は、ここでも存分に発揮されている。富田は、パチンコをこの映画で初めて体験したとの事である。

相手役の若手パチンコ店長を演じるのは、元・シブガキ隊のフックンこと布川敏和。劇中では、自分の店を訪れた明日香を見初め、積極的にアタックする。布川は、後にパチンコVシネマ不朽の名作「パチンコグラフィティ」(1992年、にっかつ)でも主演しており、パチンコ店員として派遣される不遇の商社マン役を好演した。

また、今やトップスターでもある俳優・歌手の福山雅治が、本作で映画デビューを果たした事は、意外に知られていない事実であろう。パソコンオタクの留年大学生・三蔵を見事に演じている。

意外なキャスティングでは、知性派タレントの麻木久仁子が、バブル全開のボディコン女子大生役で出演している(酔った麻木が同級生らと共に、明日香に「お茶汲み・コピー取り出来ますか?」などと面接官よろしく夜道で問いかけるシーンが印象深い。このロケ地は、新百合ヶ丘駅近く「麻生スポーツセンター」前と思われる)。また、明日香の憧れの先輩役として、勝村政信も一瞬ながら登場。明日香の家に電話を掛ける人事課の生真面目な担当者は、髪がフサフサの頃の酒井敏也だ。また、「さびしんぼう」で富田と共演した尾美としのりが、明日香に花を届ける花屋役で出演している。

 


レトロパチンコ的な観点からは、本作のロケ地となった東京・武蔵小山の「パチンコ・26号線」という店に触れておこう。「2Fにヘリコプターが飾ってある店」として有名なパチ屋で、日本テレビの深夜番組「11PM」や「DAISUKI」などでもロケが行われている。

 

店内の設置台については、映像からは判別が難しい。ただ、映像や音声から西陣のハネモノ「スーパーブラザーズ」が確認できる。そして、大当りシーンなどで登場する「メイン台」は、西陣デジパチ「スーパールーキー」である。店長の薫が明日香に誕生日プレゼントを渡す店内シーンでは、やはり西陣のハネモノ「ちんどんや」の合成音声が聞こえる。(☆追記あり)

追記…パチ屋で薫が明日香にプレゼントを渡す場面は、富田自身も「私、この場面好き。」と当時のTV番組※で述べている。薄暗い店内で、周りのパチンコ台が一斉に大当りして、無数の玉が出て来て2人のひざ上まで積もる…という非常に幻想的なシーンだ。但し、この撮影場所は東京・調布のにっかつ撮影所のセットであり、武蔵小山「26号線」の店内ではない(入店シーン及び照明が落ちるまでの一部カットは26号線)。撮影には60万個という大量のパチンコ玉が使用された。(追記終り)

※1988年11月26日放映「鶴ちゃんのプッツン5」のコーナー「スターグランプリスペシャル」での発言(ゲスト:富田靖子、布川敏和、「ほんの5g」の番宣)

 

 

残念ながら、パチンコ「26号線」は既に閉店している。因みに、「26号線」の名前であるが、店の脇を通る道路が「都道・補助26号線」(国道ではない)という名称である事に由来している。

 

また、劇中で福山演じる三蔵が、得意のパソコン知識でパチンコ台(デジパチ)の攻略に精を出す場面は、レトロパチンコファンなら見逃せないシーンであろう。まずは書店で「パチンコ攻略マガジン」を読み漁り、中古パチンコ台の販売広告(サンコー通商の雑誌広告が映る)を見つけて、実際に台を買い付けに行くという場面だ。

購入した台は、26号線にも置いてあった西陣の「スーパールーキー」である。ゲージ棒でデジタルを回し出目をビデオで撮影&パソコンに記録したり、基板からロムを取り外しロムライターにかけて解析したり、ストップウォッチでデジタルの回転時間を計測して体感器の周期を割り出したりと、非常に本格的なデジパチの攻略シーンである。

それから、映画の終盤で、最終面接に向かう明日香が、たまたま通りかかったパチンコ店に入ってデジパチを打つ、というシーンも非常に印象深い。サッと打って帰るだけのつもりが、店を出ようとした時に最後の一発が大当りして、慌てて台に戻る…という場面だ(映画「マルサの女」でも、同様の場面がある)。上皿に玉が残っておらず、明日香は玉貸機に百円を入れるが、機械の調子が悪くて玉が出て来ない。焦った明日香は、玉貸機を叩くとようやく玉が出てくるが、今度はハンドルの調子が悪く玉が飛ばない。そうこうしているうちに、無情にも大当りは「パンク」してしまう。「私に、どうしろっていうのよ…」とポツリとつぶやく明日香…。

このロケが行われたパチ屋は不明だが、当時の富田の話によれば「新橋のパチンコ店」という事である(※追記あり)。なお、映像からは、山手線ガード近くの商店街にある小さなパチ屋(緑の屋根)が確認できるが、パッと見ではJR大久保駅と新大久保駅の間のアーケード商店街(当時)にも見える。また、使用された台は、マルホンの「スリープパート3W」というデジパチである。但し、台がアップになる場面では、西陣「スーパールーキー」に差し替えられている。

追記…さらに調査を進めた結果、このロケ地となったパチンコ店は、新橋・烏森通りにあった「パチンコ明星」(既に閉店)である可能性が濃厚となった。富田の自著「きょうから、明日香」では、パチンコ店のロケ地について、武蔵小山・26号線の他に「新橋のパチンコ屋」を挙げている。映像では、JR新大久保駅の大久保通りのようにも見えたが、位置関係を詳しくチェックしたところ、ほぼ新橋の「明星」である事が判った。(追記終わり)

 


そんな訳で、23年前というバブル絶頂期の雰囲気が味わえる本作は、パチンコファンならずとも大いに楽しめる筈である。中古ビデオ等で、もう一度ご覧になってはいかがだろうか。