九州は熊本県の静か山間の盆地で、1時間に一本もしくは2時間に一本の列車を待っていました。第三セクターで運営しているくま川鉄道の、ここは一武駅という無人駅。本当にここが熊本なのか、いまいちピンときません。駅前には民家が数件あるだけで、他に何もありません。唯一あるのが、トイレと自動販売機です。
そろそろ列車が到着する時刻。まっすぐのびた線路の向こうから列車が近づいて来ました。はじめは気にしていませんでしたが、近くに来た列車を見てビックリ。なんでしょう、この変わったデザインの列車は!呆気にとられていると、後方の扉が開きました。無人駅の場合、駅に乗車証明書を備えている場合もありますが、ここはそれがありませんでした。という事は、車内で整理券を発行してくれるはずです。乗車した瞬間、予想通り「整理券をお取りください」のアナウンスが流れました。目の前に整理券の発券機があるので、よしと思い整理券を取ろうとしました。すると発券機から整理券が出てくる気配なし?あれ・・・壊れているのか?少し動揺気味の僕。車内には学生を含め、数名の乗客が乗っていました。ワンマンカーなので運転手さん一人いましたが、運転席に聞こえる声で訪ねるのもちょいと恥ずかしい。またもや「整理券をお取りください」のアナウンスが。何度も言うなら整理券を発行してくれと言いたかったけれど、録音メッセージに文句をいっても仕方ありません。まもなくして扉が閉まりました。あたふたしても仕方ないので、そのまま席に座りました。なんだかおのぼりさん状態というか、人吉盆地の無人駅に居てもおのぼりさんと言うのか?
この日は雨上がりで、少しむしむし状態。平常心を保とうとするが、汗がジワーと出て来ます。なんとか落ち着こうと、車内をキョロキョロ見回し、余計に挙動不審な僕。すると列車の車内が、列車ではない雰囲気に目が点!
それが上の写真です。車内全部が明るい木の素材で出来ており、奥に草木を飾ったギャラリーがあったり、本棚があったり、ちょっとした図書室を思わせる雰囲気です。それに窓のカーテンに黄色を使っているところが、全体的に明るく統一感があっておしゃれ。車内の中央にはソファー席と、個々に座るベンチ席が設けられてありました。後で知ったのですが、僕がたまたま乗ったこの列車は、観光用の自然博物館列車・KUMA-1でした。これが第三セクターだから出せる楽しさですね?なんだか列車に乗っている気分ではありませんが、でいつまでも乗っていたい気持ちにさせてくれます。
人吉温泉駅に到着。運賃を払おうとすると、運転手さんが僕が乗った駅を覚えていました。なるほど、整理券発券機を動かす必要がないわけですね。これも一つの人との出会いですね。
九州にはいろんなおもしろい列車が走っていますが、熊本の静かな田園風景の中に、こんなユーモア溢れた列車があったとは驚きです。
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