時戻素

昔の跡,やがてなくなる予定のもの,変化していくもの,自身の旅の跡など・・・

(No.24) 竜ヶ水

2008年11月18日 02時24分52秒 | 現在の中の過去
撮影日:2008年11月12日

 川の記事を取り上げているときに,「8・6水害」という言葉をよく使っていた。その「8・6水害」で大きな被害が出た場所の一つが竜ヶ水だ。
 竜ヶ水という地名は住所には使われない。吉野町の一部だ。
 しかし,竜ヶ水駅があることやバス停の名前でも耳にすることがある。
 今回はその吉野町の竜ヶ水地区について紹介したい。



 国道10号線を鹿児島市街方面から竜ヶ水地区へ向かう。
 姶良カルデラの急崖が海から道路と線路を挟んですぐにある。
 ちょうど目の前が竜ヶ水地区の中心。



 竜ヶ水のバス停付近。国道の山側にガソリンスタンドがある。



 ガソリンスタンドの裏側には竜ヶ水駅の裏口がある。草がぼうぼうで歩きにくい。



 国道の海側からは錦江湾を挟んで桜島が見える。(この風景はあとで駅からのものを取り上げる。)この日は,見通しがよく鹿児島市街の方をみると,遠くに開聞岳が見えた。



 裏口を使わずに竜ヶ水駅に行くには,バス停近くのこの坂を登る。
 結構急な坂だ。



 坂道を登りきるとすぐに踏切がある。今は警報機と遮断機がついている。しかし,かつては「とまれみよ」と書かれた警報機をまねた看板があるため,それらもなかったのではないだろうか。この辺は線路がまっすぐで見通しがいいからいいが,他にはカーブが多いところもあり,警報機がない踏切を渡るのは怖い。この日,別の場所で列車が来る20秒前ぐらいに線路を渡っていた。



 踏切を渡ると駐車場のような場所から上を見上げるとこのような碑があった。
 ここに屋敷を構えていた住民が作ったものだ。その屋敷は8・6災害(集中豪雨)で土石流により,押し流されてしまった。復旧に当たって住民が,二度とこのような災害が起こらないことを祈って建てたものとある。



 竜ヶ水駅の駅舎。普通列車にすら通過されることもあるこの駅だが,駅舎は存在する。ベンチやトイレ(ボットン)もついている。駅舎の屋根はやや低く,中に入る時は,背の低い自分でも天井を気にしてしまうほどの高さだ。
 駅舎を出るとホームには花壇があり,花壇いっぱいではないが,花が植えられている。
 写真向かって左側の壁には,何かが貼り付けられていた跡がある。ここには,竜ヶ水周辺を説明した案内板があったが,いつの間にかなくなっていた。
 その案内板に書かれていたことをいくつか並べる。

「駅裏の急崖を登る約40分のハイキングコース」
 吉野台地上に着き,寺山公園や吉野公園にも行こうと思えば行ける。

「ロッククライミングの絵」
 確かにロッククライミングできそうな崖があるが,実際しているところを見たことはない。

「竜ヶ水の由来」
 錦江湾奥の縁にあり,切り立った岩壁,斜面のところどころに岩清水や湧水が流れ出し,糸をひくような滝も見られることから,この一帯から湧き出る水のことを竜ヶ水といった。ここの水はきれいで冷たく,うまい水として知られ,龍(水神様の化身)が授けたと言われる水が引かれ,ホームに噴水のある駅として知られている。

 との説明があるが,ホーム上のどこを探しても噴水はない。近くの施設に親戚がいたことからこの駅を15年ぐらい前から,利用したことがあるが,一度も見たことはない。以後も自転車でそのホームに通うようになった時,ついでにこの駅にいくことはあったが,そのときも見ていない。(余談:自転車で国道10号を通るのはかなりきつい。道は平らだが,磯~花倉間は白線の外側がほとんど存在しない上に,かなりのスピードでトラックが飛ばすこともある。現在,対策が検討されているが,場所がせまいだけになかなか進展しない。)その噴水の名残かと思われるのが次の写真・・・



 最上段の中をのぞくとパイプのようなものが何本か見えるのでここから水が湧いていたのかと思う。今は水が出てくることもなく,くもの巣まで張っていて,竜ヶ水の由来を見ることができない。看板自体,相当古っぽいものだったので,結構昔の話かもしれない。



 駅舎と反対側のホームへ渡る歩道橋の上から海の方向を見る。
 眼前に桜島が迫り,きれいだ。海では養殖をやっており,海の上の家のような作業場もある。



 竜ヶ水災害復旧記念碑。背後に桜島も見える。
 この記念碑の土台の岩石(9t),碑文石(5t)は,災害時に土石流の中に含まれていたもの。土石流で線路や国道がふさがれたとき,竜ヶ水駅には上下2本の列車が停まっていた。両側の線路がふさがれてしまった段階で,乗務員が機転を利かせ,規則を破って乗客を避難させた。その結果,乗務員の指示を無視し,車内の残った乗客3人以外の多くは,避難に成功した。その後,土石流により列車は海まで流され,大破した。
 その乗務員は,その後に過労死で亡くなっている。

 このことから,乗務員の判断の素晴らしさも感じられるが,もう一つ重要な問題があるように思う。規則(法)というものの存在だ。
 規則を破っての判断が,結果的に多くの乗客の命を救った。場合によっては,この成果にもかかわらず,この乗務員を規則違反で処分することも可能である。規則(法)に縛られすぎるあまり,正確な判断ができなくなってしまうこともある。規則や法が誰を守っているのか分からないような存在になることも意外と多い。(軽犯罪法,道路交通法や個人情報保護法など(解釈も含め)でその事例があるように感じる。インターネットソースなので,事実かどうかの保証なし。)



 今度は駅の山側を見てみる。砂防ダムが2ヶ所ある。



 ダムの脇の階段を上ってみる。
 ちょうど駅では,特急列車が上下の入れ替えをしていた。
 
 景色もいいが,危険性も高い竜ヶ水。雨の日には通りたくないが,国道10号や日豊本線は鹿児島市と姶良町,加治木町,霧島市などを結ぶ重要な場所なので,かなりの通行者がいる。自分自身も,普段は通らないが,姶良方面へ行く時もあるし,18切符で出かけたときなどは,すべてJRで済ませようとすると絶対に通らなければならない場所だ。雨だけでなく,雨が続いて地盤がゆるんでいる時にも注意が必要になる。

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