11人の侍

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前人未踏の地を駆ける中村俊輔

2007年02月21日 09時10分59秒 | サッカー
 セルティック・グラスゴーが本拠地セルティック・パークにACミランを迎えたた欧州チャンピオンズリーグ決勝トーナメント第1戦。
 後半なかばに差し掛かり、疲弊したセルティック守備陣がミランの攻撃の脅威に晒されていたとき、ベンチには守備力のあるMFのトーマス・グラベセンが控えていた。

 レアル・マドリードでもプレーしたこの経験豊富なデンマーク代表選手を、誰と交替させるのかなと考えていたけど、セルティックのゴードン・ストラカン監督が選んだのは、主将のニール・レノンだった。

 この交替の理由としては、レノンと中盤の中央でコンビを組んでいたエファンデル・スノのプレーが素晴らしかったことが第一に挙げられる。スノは強靭な体躯を生かしたボールキープと正確なパスで、90分を通してただの一度もボールを奪われることがなかった。このオランダ代表選手が、まだ19歳にすぎないことは驚くべき事実だ。

 そして、もう一方ではやはり、ストラカン監督の中村俊輔に対する期待の大きさを表していると言うことができるだろう。
 守備面でのリスクを考えると、中村は交替させられていてもおかしくなかった。しかし、実際にそうはならなかった。中村はセルティックにとってほとんど唯一の、得点を予感させる武器だったからだ。

 ただし、百戦錬磨のミランはさすがに中村のことをよく研究していた。
 ヨアン・グルキュフやマッシモ・アンブロジーニ、マレク・ヤンクロフスキーらは中村を常に厳しく監視し、たとえセルティック陣内においても決して前を向かせようとはしなかった。とくに中村が得意とする、またぎフェイントから内側に切れ込んでいくプレーは完全にブロックしていたし、また、ファウルをしないように細心の注意を払ってもいた。その結果、中村はマンチェスター・ユナイテッドを沈めた得意の位置でのFKを最後まで与えてもらえなかった。

 とりわけ、対面に若いグルキュフが位置取ったことは、中村にとっては大変な負担だった。馬力のあるグルキュフの突破を止めるために、かなりの労力を守備のために使わざるを得なくなったからだ。中村の疲労は、前半の時点で随分と呼吸が乱れていたことからも明らかだった。守備の弱点を突くと同時に、セルティック攻撃の脅威を削ぐここにも成功したミランの戦い方をみるかぎり、日本代表を率いるオシム監督が、単純に中村をレギュラー当確としてしまわないのも納得がいく。

 もっとも試合の勝負の行方は、まだ半分の地点を折り返した過ぎない。
 セルティックとしては、第1戦を終えて0-0は決して悪い結果ではないだろう。ミラン相手にアウェーゴールを許さなかったことは重要だった。これで敵地ミラノで1-1の引き分けに持ち込めば、勝ち抜けを決めるのはセルティックのほうになる。
 そして1点が大きな重みを持つ試合とくれば、第2戦でも再び中村の左足にスポットライトが当たることになりそうだ。

 ちなみに、僕が試合を観戦したアイリッシュ・パブでは、4時半開始の一戦にも関わらずどの席も人で埋まっていた。
 前人未踏の地を駆ける中村の挑戦からは、とても目が離せそうにない。