11人の侍

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高原と森本はW杯に間に合うか?

2009年08月15日 12時15分28秒 | サッカー
選手の“不調”というのはどれくらい続くものだろうか。

高原直泰が日本に帰ってきて1年半以上が経過したけれど、いまだに期待通りの活躍をみせてはいない。代表のユニフォームも遠ざかったままだ。
1年半。これは“不調”と表現してしまうにはあまりにも長い期間だ。高原はもうかつてのような活躍ができないと考える人の数は、日に日に増えているように思える。

浦和レッズで高原が期待通りの活躍をみせられない要因はいくつかあるだろう。
チームのスタイルに合っていない。波長の合うアシスト役の存在がいない。Jリーグのテンポに身体が馴染んでいない(高原はJリーグより海外でのプレイ経験のほうが長いのだ)、など。

なかでも、エジミウソンの補佐役を任されているというのはストライカーにとって致命的だ。
ゴールから遠いポジションでのプレイを強いられ、得点を量産していたときのようにペナルティーエリア内でこぼれ球に詰め寄る姿をみる機会はめっきりと減った。

とはいえ、これだけ長い低迷期間となると、もはや不調だと捉えるのは無理があるだろう。
むしろ、高原が圧倒的な活躍でMVPと得点王を獲得した02-03シーズンと比べて、Jリーグのレベルが向上したと捉えるほうがずっと自然だ。ブンデスリーガでシーズン11得点の実績やアジアカップ2007得点王といった勲章は、アジア最高のリーグでの活躍を保証するものではないということだ。

例えば、高原がドイツに活躍の舞台を移す前と比べ、Jリーグのセンターバックの平均身長は数センチ高くなっている。以前は、日本のセンターバックといえば判で押したように180センチだったけれど、今や190センチ前後の選手は珍しくない。
高原がジュビロ時代のようにフィジカルで対戦相手を圧倒することは難しくなった。

いずれにしてもW杯まで1年をきった今、日本代表を率いる岡田武史監督は当然のことながら、高原抜きで南アフリカに向かう可能性を考えているはずだ。

このまま名古屋グランパスエイトの玉田圭司をフォワードの軸に据え続けるのか、それともアジアカップ2007で高原が果たした役割を任せられる選手を探しているのかは、岡田監督以外の誰にもわからないけれど。



“ストライカー”を語彙通り“点取り屋”だと訳すならば、森本貴幸は現在の日本で、その称号が当てはまる数少ない選手だ。

確かに、サンフレッチェ広島の佐藤寿人や清水エスパルスの岡崎慎司、東京ヴェルディの大黒将史もそのカテゴリーに組み込めるけれど、森本は体格で佐藤や岡崎を上回り、また大黒が馴染めなかったセリエAで日々、屈強のディフェンダーと対峙する機会を得ているということから、より大きな期待をかけられている。
カターニアでは1トップでプレイすることもあるから、日本代表の基本布陣にも収まりやすい人材だ。

“ストライカー”森本と、他の日本人“フォワード”には、わかりやすい違いがある。差といってしまってもいい。

ゴール前での落ち着きという才能に関して、森本は他の日本人選手にないものをもっている。
彼はトップスピードでもとても正確にボールコントロールできるし、巨躯の相手ディフェンダーにプレッシャーを駆けられても慌てない。だからシュートの際に不要な力みがない。シュートを放った後、多くの日本人フォワードがピッチにひっくり返ってしまうのとは対照的だ。
森本のプレイに欧州の選手のような優雅さが漂うのは、このゴール前での冷静さがあるからだ。

Youtubeで森本のゴールシーンを振り返ってみればそれは一目瞭然だ。例えば、セリエAデビューとなったアタランタ戦であげたゴールの、トラップからシュートまでの一連の流れは完璧だった。得点後、頭を抱えて極度の興奮状態でピッチを疾走したけれど。シュートにもっていくまでの身体の運びは恐ろしいほど冷静で、一級のストライカーそのものだった。これは森本がゴールの感覚を身体で覚えていることの証明になる。

また翌2007-2008シーズン、パルマとの開幕戦でみせた、左足の完璧なトラップから右足で弧を描いたシュートも、たまらなく優雅で何度観ても飽きない。

2得点をあげたローマ戦の最初のゴールにいたっては、まるでロマーリオのようだった。縦への長いパスを完璧にコントロールして、左足でゴールに流し込んだのだ。

森本は左右両足をごく自然に使ってみせるし、シュートを外しても後に引きずることがなく、精力的に次のチャンスに備えるのがいい。自信満々の風情で、ゴールを奪うという目的に対して迷いがない。元フランス代表のダヴィド・トレゼゲを目標としているというのも好感がもてる。イタリアではデビュー戦を皮切りに、開幕戦やユベントス、ローマ相手の大一番でゴールを決めるなど、大きな舞台で萎縮するような性格でもない。

イタリアへ渡った錚々たる日本のスターたちが早期の都落ちを余儀なくされているにもかかわらず、森本はすでに4シーズン目を迎え、ますます存在感を高めている。この事実はもっと評価されてしかるべきだ。

北京五輪ではほんの少しだけ出場機会を得たものの、実際のところ森本は五輪に間に合わなかった。いや、より正確に記すならば、北京五輪で指揮をとった反町康治代表監督には、森本の才能をチームに組み込むだけの力量がなかった。

反町監督はこの非凡なストライカーに必要以上の守備や、訳の分からないスペースメイキングの動きを課した。森本が世界最高峰のリーグで学んできたこととはまったく異なるサッカーだ。プロサッカー選手として、もはやイタリアでのキャリアの方が長い森本は、監督の言葉が理解できないかのように、しばしば首を傾げたものだものだ。

彼が日本代表への想いを語る際に慎重な姿勢を崩さないのは、おそらくこのときの悪しき思いがあるからだと推察する。

南アフリカW杯で、日本が待望するストライカーの姿をみることができるだろうか。大会まであと1年もない。北京五輪と同様に、森本に残された時間はあまりない。だから僕はあまり期待しすぎずに状況を見守っていようと思う。

おそらく当の本人も、同じような心境なのではないだろうか。


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2 コメント

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Unknown (口臭注意)
2009-08-25 15:33:57
森本は代表にはあわない気もするので
召集して欲しくない気持ちもあります。
単純に中村や本田とどのようなプレーができるかは
すごい興味あるけど
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おっしゃるとおり (11人の侍)
2009-08-25 18:41:11
確かに森本君をフィットさせるのは時間がかかるかもしれませんね。逆に、この本格派ストライカーのほうに代表をあわせてみたほうがおもしろいのではと思ったりします。

本田君についてはしばらく書いてないですけど、9月は久しぶりにワクワクした気分で代表戦が観れそうです。
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