11人の侍

「生きている間に日本がワールドカップを掲げる瞬間をみたい」ひとたちの為のブログ

違いをみせつける石川直宏

2009年07月04日 22時16分02秒 | サッカー
今シーズン噂の石川直宏を一目見たいがために、FC東京とヴィッセル神戸の試合を観戦した。

石川といえばアテネ五輪世代で群を抜く才能を誇りながらも、生まれてくる国を間違えた選手という印象があった。

五輪代表として名を連ねた20代前半の石川は、ライバル国である韓国の代表監督をして、「石川がいれば韓国は世界と互角に戦えるチームになる」とまで言わしめたほど突出した選手だったけれど、ドリブラーを好まない日本サッカー界においては、その能力は異質なものとして扱われた。

アテネ五輪で代表チームを率いた山本昌邦監督は、石川をベンチで飼い殺しにした挙句、予選敗退が決まったあとのガーナとのグループリーグ最終戦で、敗戦処理の仕事を命じた。石川は健気に奮闘をみせたが、後半に交代を命じられると、さすがにそのときばかりは周囲をはばからずに涙を流した。

その山本元五輪代表監督の言葉を拝借すると、石川はもともと「世界基準」の選手だった。

その才能はむしろ海の向こうの方で高く評価された。

第一の絶頂期を迎えた2005年には、当時セリエAに昇格したトレビゾから手助けを請われた程だ。このオファーを見送る決断を下し、その直後に選手生命を左右するほどの大怪我に見舞われたことは、若い才能にとって不運という他なかった。

しかし今シーズン、突如の再ブレークに周囲は沸きかえることになる。個人的にも、あの偉大な才能がどのように開花したものかと、大いに楽しみにしていたのだけれど、期待以上のパフォーマンスに爽快な気分にさせてもらった。

凡庸なアタッカーと比べ、石川の狙いはもっとずっとシンプルだ。

目的のみえない会議のようにダラダラとしたパス回しに関与することもなければ、守備やポストプレイ、スペースを作りだすためのフリーランニングといった仕事に忙殺されることもない。

ゴールというもっとも重要な成果をあげることに、最大の集中力を発揮している。

成果をあげるアタッカーは一度にひとつのことしかしないものだ。

サッカーは通常、わずか90分の時間しか与えられない。巡ってくるチャンスは多くても片手の指の数くらいにしかすぎず、試合を決する選手はそんななかで得点をあげることを求められる。余計なことに気をまわしている余裕はない。

つまり、成果を手にするためには、集中する時間が必要だ。そのためには厳しい自己管理と、雑務に「NO」といえるだけの不動の決意が必要となる。

そして今の石川はその両方を備えている。

プロのスポーツ選手といっても普通の人間だから、ある日突然、急激に実力がついたりするようなことはないだろう。大切なのは日々の積み重ねだ。石川にはもともとずば抜けた能力があった。得点ランキングトップにたつほどの今日の大活躍は、メンタル面によるところが大きいと考えられる。

得点力不足に悩む日本代表の岡田武史監督は、石川の「ゴールへの集中力」を誰よりも強く欲しているひとりに違いない。


↓面白いと思ったら応援はこちら
人気ブログランキングへ


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (宇多田ヒカルファン)
2009-07-26 23:08:35
連続得点は止まりましたが
石川直宏の覚醒は本物でしょう。
これからマークはきつくなるでしょうが
その壁を乗り越えれば代表も視野に入ってくるのでしょうか
返信する
継続は力なり (11人の侍)
2009-07-27 19:30:46
宇多田ヒカルファンさん

コメントありがとうございます。
とても嬉しいです。

仰るとおり、このパフォーマンスを継続していくことが大切かと思います。
そして石川君が調子を維持し続けるのならば、我々サポーターが彼の代表入りを後押しすべきでしょう。

W杯ベスト4を現実のものにするためには、サッカーに携わるもの皆が一丸となって、最高の“代表”チームを求めていく必要があるはずです。
返信する