11人の侍

「生きている間に日本がワールドカップを掲げる瞬間をみたい」ひとたちの為のブログ

日本チームを骨太にする稲本

2007年09月08日 11時34分40秒 | サッカー
 クラーゲンフルトで行われたオーストリアとの試合は、スコアレスドローの末にPK戦で敗れた。
 欧州のチームを相手に、レベルの違いをみせていただけに残念な結果だけど、試合内容に関してはアジアカップと比べると、ずいぶんサッカーらしくなっていたと思う。
 アジアカップでプレーしなかった稲本潤一や、田中マルクス闘莉王、田中達也、そして松井大輔といった、アグレッシヴに前へと進む意識を持った選手がメンバーに加わったからだろう。

 もちろん今後の更なるレベルアップは必要だけど、例えばこの日のメンバーにエースストライカーの高原直泰、左利きのウイングバック三都主アレサンドロ、セントラルミッドフィルダーの阿部勇樹といった面々が加われば、チームの完成度はさらに高まることになる。

 個人的に印象に残ったのは、久しぶりに日本代表に帰ってきた稲本の活躍だった。
 前回、召集された際には、本来のポジションではない攻撃的ミッドフィルダーの位置でテストされただけに、このオーストリアとの試合を「代表復帰戦」と位置づけて差し支えないかもしれない。稲本はブンデスリーガのフランクフルトでのプレーそのままに、中盤の中央で絶大な存在感を放っていた。

 この試合をみた海外のスカウトがいれば、例え何の情報を持っていなくても稲本が欧州リーグでプレーする選手であることに気付くはずだ。他の選手とはまるで馬力が違う。ルーズボールに対する反応速度がひとりだけ抜きんでて速く、ひとたび射程距離に捉えると、強烈かつ重厚なタックルで必ずボールを狩り取ってみせた。

 また、ボールの受け方も秀逸だった。プレミアリーグでのプレー経験がある稲本にとっては、オーストリアの中盤のプレスは相当に緩く感じられるのだろう。後方からのパスを受ける際でも、コンパスのようにくるりと反転して前を向き、そのまま2タッチ目で30メートルの寸分も狂いのないロングパスを、両サイドに振り分けていった。

 攻撃的ミッドフィルダーの中村俊輔と遠藤保仁に加えて、最終ラインの司令塔である闘莉王、そしてこの稲本と、日本にはボール回しの起点となる選手が4人もいたから、オーストリアの選手たちはずるずると後方の自陣に退却せざるをえなかった。

 稲本はたった1試合のプレーにして、イヴィツァ・オシム監督率いる日本代表チームのレベルを、まったく異なるレベルへと引き上げられるという可能性を示してみせた。