11人の侍

「生きている間に日本がワールドカップを掲げる瞬間をみたい」ひとたちの為のブログ

勝負強さを見せつけている青木孝太と林彰洋

2006年11月10日 19時19分37秒 | サッカー
 ペナルティスポットから放たれた力強い弾道が、ゴールネットの真ん中に突き刺さった。

「ほらッ!最初からコイツを5番目に蹴らせとけばよかったんだって!」と、思わず僕は叫んでしまった。
『今まで中央に蹴った選手はいなかったですからね』と、勇敢なPK戦6人目のキッカーを賞賛したのは”考えながら走る”コメンテイター、現役時代はジェフユナイテッド市原(当時)のセンターバックだった宮沢ミシェルさんだ。
 数的不利を補おうと、交替と同時にピッチ中を走り回ったため、疲労していた脚はつりかけていたらしい。

 勝負強さという非凡な才能を持った青木孝太は、出場機会に恵まれないのであれば、所属するジェフユナイテッド市原・千葉から移籍したほうがいい。11月10日の北朝鮮とのアジアユース決勝戦でも、日本ユース代表の吉田靖監督が青木をスタメンに抜擢することを強く望む。

 野洲高校のエースとして、滋賀県に史上初となる優勝カップを持ち帰った将来有望な若武者は、準々決勝のサウジアラビア戦でも重要なシュートを決め、日本チームに世界大会への切符をもたらした。
 韓国との準決勝でも、一時は決勝点だった値千金のゴールを決めている。決勝進出が賭かったPK戦では、プレッシャーに圧されて勢いを欠いたキックが相次いだけれど、青木は自信に満ち溢れた表情で、ど真ん中に、しかも思いっきり蹴りこんでみせた。

 勇猛果敢なストライカーの卵が決勝の桧舞台でスタメン出場を果たせば、きっと大きな自信になることだろう。

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 この豪快な青木のPKに最も勇気づけられたのは、おそらくゴールキーパーの林彰洋だった。

 林は6人目のキッカーを目の前にした時点で、すでに2つの韓国のキックをストップしていた。さらにポストを直撃したものが他に2本あったから、勝負は既に決していてもおかしくなかった。ポーランド人GKデュデクのダンスを真似た林はどっしりとした体躯を誇り、まるで有能なプロ野球のキャッチャーのように、どんなボールも捕球してしまう。

 これまで日本のGKといえば韓国のFWに見下ろされるくらい小柄だったけど、190センチで奇妙に身体をくねらせる林は、明らかに韓国のキッカーにプレッシャーを与えていた。日本相手となると無類の勝負強さを発揮する韓国の選手が、2人もポストに当ててしまったのは、決して偶然ではない。
 林は韓国6人目のチョ・チュルソンのシュートも見事に止め、日本を決勝の晴れ舞台へ導いた。

 青木にしろ、林にしろ、このチームでは常にレギュラーを張ってきたわけではない。
 しかし、ふたりは過酷なアジア予選を経ることで、驚くほどの成長をみせている。ユース代表に選ばれるような選手はいずれも才能豊かで、将来性があるものだ。だからこそ、この年代の選手たちが最も必要としているのは、自信と経験なのだと思う。
 決勝戦という大舞台のピッチを踏むふたりはどのように化けるだろうか。僕は大いに楽しみにしてる