とはずがたり

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関節リウマチの再燃は事前に検出できるか?

2020-07-17 10:01:00 | 免疫・リウマチ
 関節リウマチ(RA)の治療戦略はMTXを始めとした抗RA薬(DMARDs)や生物学的製剤、そしてJAK阻害薬の登場とともに劇的に変化しており、現在では早期に診断されれば寛解導入が現実的な目標になっています。しかし寛解はゴールではなく、それ以降も治療は続くわけで、特にいかにして治療のde-escalation、つまり薬物の減量や中止を行っていくかがlife-longの治療戦略において重要になってきます。このような中で、疾患のflare up(再燃)を早期に検出できれば治療の組み立てに大いに役立ちます。このRockefeller大学からの論文は血球細胞のRNA-seqデータから、flare upに関与する遺伝子群を明らかにしたものです。
 RA患者自身に依頼して、毎週Routine Assessment of Patient Index Data 3 (RAPID3) という質問票を記入してもらうのに加えて、3滴ほどの血液を採取してもらい(血糖値測定みたいな感じでしょうか)、これを決められたチューブに入れて大学に送ってもらい、血球細胞の発現遺伝子をRNA-seqで調べました。経時的にデータを収集して、flare upを起こした患者について、臨床的にはflare upが明らかではない8週間前、そしてflare upを起こした4週後の血液サンプルのRNA-seqデータ(65検体)を解析しました。
 解析の結果、flare upに先立って上昇する遺伝子群antecedent cluster 2, 3(AC2, 3)が同定されました。AC2はnaive B細胞や白血球の分化に関係するpathway、AC3はあまり血液サンプルでは見られない、軟骨形成、軟骨内骨化、細胞外マトリックス構築などに関係する遺伝子でした。AC3はflare up前に上昇し、flareが持続すると減少しました。著者らはこれらのデータと滑膜炎との関連を調べるために、これまでに発表されていた滑膜組織のsingle cell RNA-seqデータを参照にし、AC3の発現遺伝子が炎症滑膜のsublinig frobroblastsと共通することを見出しました。RA患者血中で滑膜線維芽細胞の特徴を有する細胞としてはCD45−CD31−PDPN+細胞が最もよく見出されますが、この細胞の発現遺伝子はAC3と共通するものが多く、flare upの前に血中に増加し、flareが起こると徐々に血中から消失します。これはこの細胞が炎症局所に動員されているためと考えられます。著者らはこのような細胞をpreinflammatory mesenchymal(PRIME) cellsと呼んで、RAのflare up予測に有用であるとしています。内容も大変面白いのですが、患者さん自身に検体採取をお願いして送ってもらうというアプローチもコロナ時代に合っているように思います。今後AC2など他の群についても検討を進めるとのことで、期待したいと思います。


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