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TNF阻害薬不応例に対するrituximab vs tocilizumab: a biopsy-driven study

2021-03-03 13:29:08 | 免疫・リウマチ
RituximabはB細胞の表面抗原であるCD20に対する抗体で、海外では関節リウマチ(RA)の治療薬として承認されています。しかしrituximabについては患者によって有効性に差が見られることが報告されています。またtocilizumabは抗sIL-6受容体抗体であり、日本でもRA治療薬として多くの患者さんに用いられています。
この研究では従来型の抗リウマチ薬 (conventional synthetic DMARD)および (rituximabおよびtocilizumabを除く)少なくとも1種類の生物学的製剤に抵抗性のRA患者に対するこれらの薬剤の有効性を検討してものですが、治療前に滑膜バイオプシーを行い、滑膜の組織型によって①B-cell rich, ②B-cell poor, さらに③germinal center positive, ④unknown histologyの4つの集団に分類し、それぞれの群ごとにランダム化してrituximabとtocilizumabの臨床的効果を比較しているのが新規性の高い点です。治療16週後の疾患活動指標CDAI50%改善をprimary endpointにしています。Rituximabは1000 mgを2週間間隔で2回投与、tocilizumabは8 mg/kgを4週ごとの投与です。
また組織学的な検討に加えてRNA-sequencing (RNA-seq)を行い、FANTOM5 gene expression dataの解析によってB-cell rich, B-cell poorに分類しています。
滑膜バイオプシーを受けた患者は、組織学的に①79人 (49%) ②64人 (40%) ③9人 (6%) ④9人 (6%) に分類されました。Rituximab, tocilizumab投与患者は①38人および41人、②33人および31人、③5人および4人、④6人および3人でした。
治療後16週後のCDAI50% (CDAI≥50%)達成率は②B-cell poor集団ではrituximab, tocilizumab投与患者間に有意差はありませんでした (45% vs 56%, p=0.31)。しかし予め定めたsupplementary endpointであるCDAI≥50%かつCDAI≤10.1 (CDAI-major treatment response; CDAI-MTR)は24% vs 46% (p=0.035)とtocilizumab群が有意に良好でした。その他のsecondary endpointsの多くにおいてもtocilizumabは良好な結果を示しました。SF-36のFunctional Assessment of Chronic Illness Therapy (FACIT)によるQOL改善度もtocilizumabの方が良好でした。RNA-seqによって分類したB-cell poor群では、CDAI50%達成 (rituximab群36% vs tocolizumab群63%, p=0.035)、CDAI-MTR (12% vs 50%, p=0.0012)ともtocilizumabが良好な結果を示しました。
一方①B-cell rich群では、組織学的に分類した場合も、RNA-seqで分類した場合もCDAI50%達成およびCDAI-MTRにrituximab, tocilizumab群に有意差はなく、ほとんどのsecondary endpointにも差はありませんでした。
ACPA, RF陽性、陰性は両治療薬の効果に影響しませんでした。
また48週までの安全性には両群に差はありませんでした。
日本ではrituximabはRAに適応になっていないのでそもそも選択の余地はないのですが、この論文はTNF阻害薬などの生物学的製剤が無効であった症例に対する治療オプションを決める際に、特にRNA-seqを用いたB-cell poor, B-cell richの分類が有効である可能性を示しています。将来的にはこのように病理学的に層別化したprecision medicineがRA治療の中心になってくることを予期させる興味深い研究です。
Humby et al., Rituximab versus tocilizumab in anti-TNF inadequate responder patients with rheumatoid arthritis (R4RA): 16-week outcomes of a stratified, biopsy-driven, multicentre, open-label, phase 4 randomised controlled trial. The Lancet VOLUME 397, ISSUE 10271, P305-317, JANUARY 23, 2021


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