とはずがたり

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大腿骨近位部骨折を受傷したCOVID-19患者の手術について

2020-06-29 13:53:33 | 新型コロナウイルス(治療)
日本でも新型コロナウイルス感染が拡大していた時期には予定整形外科手術が延期となっていた病院が多かったと思います。そのような場合でも大腿骨近位部骨折については緊急性があるという考えから手術を行っていた病院が多かったのではないでしょうか。この論文はCOVID-19が猖獗を極めたイタリアLombardy地方からの大腿骨近位部骨折受傷COVID-19患者についての報告です。
19人の大腿骨近位部骨折患者の平均年齢は85歳(74-90歳)で、骨折型はOTA/AO4 type 31-A1 (8 fractures; 42.1%), 31-A2 (5 fractures; 26.3%), 31-B2 (5 fractures; 26.3%), 31-B33 (1 fracture; 5.3%)でした。3人は発熱や呼吸器症状がなかったため、本studyから除外されました。残りの16人すべて熱発および酸素飽和度低下を示し、14人は補助換気が必要でした。全員胸部CT上、間質性肺炎などの肺炎像を呈していました。薬物療法としては低分子ヘパリン、ヒドロキシクロロキン(200 mg x 2/day)、アジスロマイシン(500 mg x 2/dayが投与されました。術後呼吸不全および多臓器不全(multiple-organ-failure syndrome, MOFS)のため3人が術前に死亡しました。残る13人のうち10人は入院当日(12-24時間後)、3人は抗凝固療法を中止していたため、安定後3日間手術を延期しました。手術は脊椎麻酔+神経ブロックで外側骨折はintramedullay nail(γネイル)を、内側骨折は人工骨頭を行い、平均手術時間はそれぞれ30分、50分でした。
術後呼吸不全のため4人死亡しましたが、9人は平均7日で血液動態や呼吸状態は安定しました。基本的に手術によって患者の可動性が改善し、呼吸状態にも好影響があり、全身状態も安定したということで、大腿骨近位部骨折に対する手術はCOVID-19患者に対しても推奨されると結論しています。ただし呼吸状態が非常に悪い(PO2<90%)、38度を超える発熱、全身の臓器不全を呈するなど、生命予後の悪い患者については手術の適用にならないだろうとしています。




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