COVID-19が猛威を振るうNew York Cityから、通常診療の中で得られたデータをまとめたcase seriesが報告されました。鼻咽頭swabのPCRでSARS-CoV-2の感染が確定され、2020年3月1日から4月4日までにNorthwell Health acute care hospitalsに所属する12病院での入院加療が必要であった患者が対象です。全部で5700人の患者が含まれ、平均年齢は63歳(interquartile rage, IQR 52-75歳, 0-107歳)、39.7%が女性でした。人種別では黒人が22.6%、アジア系が8.7%、白人が39.8%、その他(ヒスパニックなど)が28.9%でした。併存疾患としては高血圧56.6%、肥満41.7%、糖尿病33.8%が主たるものでした。Charlson Comorbidity Index(CCI)の中央値は4点(IQR 2-6)、トリアージの際には1734人(30.7%)に38度を超える熱発があり、986人(17.3%)において呼吸数>24/分、1584人(27.8%)が酸素吸収を受けていました。1度目のPCR検査で陽性だったのが5517人(98.1%)で残りは2度目以降の検査で陽性でした。他のウイルス性呼吸器感染症との混合感染は2.1%に見られました。最終観察時に退院(含死亡退院)していたのが2634人で、死亡退院が553人(21%)でした。373人(14.2%)がICU管理を必要とし、320人(12.2%)に補助換気が、81人(3.1%)に透析などの腎代替療法が必要でした。補助換気が必要な患者のうち282人(88.2%)が死亡し、18-65歳では76.4%、65歳超では97.2%が死亡しました。補助換気が不要だった患者の死亡率は18-65歳の19.8%、65歳超の26.6%でした。入院日数は4.1日(IQR, 2.3-6.8)で45人(2.2%)が再入院しました(再入院までの中間中央値3日, IQR, 1.0-4.5)。退院患者のうち436人(16.6%)はCCI 0点の50歳未満の患者で、このうち死亡退院は9人でした。死亡者の中で糖尿病を有する患者は補助換気あるいはICU管理が必要な割合が高い傾向がありました。Angiotensin-converting enzyme inhibitor(ACEi)を内服していた患者は7.8%、angiotensin II receptor blocker(ARB)を内服していたのは11.1%で、ACEi内服患者の48.1%、ARB内服患者の50.1%はそのまま内服を継続し、残りは中止しました。これらの薬物使用でウイルス受容体であるACE2の発現が上昇して予後に影響するのではないか、という予測がありましたが、今回の調査ではこれらの薬物使用は必ずしも予後が悪いとは言えないという結果でした。
COVID-19に対する薬物治療の内容などは記載されておらず、またどのような患者に補助換気を行ったかは不明です。今回の死亡率は中国武漢からの191例の報告(Zhou et al., Lancet. 2020 Mar 28;395(10229):1054-1062)の死亡率(54/191, 28.3%)よりは有意に低く、入院適応の違いではないかと考察しています。しかし補助換気患者の88.2%が死亡というのは極めて高く、かなり重症の患者にしぼって補助換気を行ったのではないかと思われます(ちなみに日本集中治療学会からは4月20日時点でECMO治療終了患者における回復67%、死亡33%と報告されています)。また今回は人種別の死亡率は報告されていませんが、入院患者の中では白人の割合が高いことが示されました。これまでに発表されている人種ごとの死亡率(年齢調整あり)データ(ヒスパニックは10万人に22人、黒人は10万人に20人、白人は10万人に10人、アジア系は10万人に約8人 https://www.mashupreporter.com/nyc-covid-19-deaths-race-et…/)およびアジア各国で死亡者数が少ないことと考え合わせると、罹患率や重症度に何らかの人種差があるのではないかと思われます。また医療保険として、民間保険加入者が33.1%、私的な医療保険に加入することが難しい低所得者が加入するメディケイド加入者が21.2%、高齢者および障害者向け公的医療保険制度であるメディケア加入者が42.4%という点も重要かもしれません。これ以外にアメリカに1/6いるといわれている無保険者が入ると死亡率はもう少し高くなるのかもしれません。
COVID-19に対する薬物治療の内容などは記載されておらず、またどのような患者に補助換気を行ったかは不明です。今回の死亡率は中国武漢からの191例の報告(Zhou et al., Lancet. 2020 Mar 28;395(10229):1054-1062)の死亡率(54/191, 28.3%)よりは有意に低く、入院適応の違いではないかと考察しています。しかし補助換気患者の88.2%が死亡というのは極めて高く、かなり重症の患者にしぼって補助換気を行ったのではないかと思われます(ちなみに日本集中治療学会からは4月20日時点でECMO治療終了患者における回復67%、死亡33%と報告されています)。また今回は人種別の死亡率は報告されていませんが、入院患者の中では白人の割合が高いことが示されました。これまでに発表されている人種ごとの死亡率(年齢調整あり)データ(ヒスパニックは10万人に22人、黒人は10万人に20人、白人は10万人に10人、アジア系は10万人に約8人 https://www.mashupreporter.com/nyc-covid-19-deaths-race-et…/)およびアジア各国で死亡者数が少ないことと考え合わせると、罹患率や重症度に何らかの人種差があるのではないかと思われます。また医療保険として、民間保険加入者が33.1%、私的な医療保険に加入することが難しい低所得者が加入するメディケイド加入者が21.2%、高齢者および障害者向け公的医療保険制度であるメディケア加入者が42.4%という点も重要かもしれません。これ以外にアメリカに1/6いるといわれている無保険者が入ると死亡率はもう少し高くなるのかもしれません。