週刊 最乗寺だより

小田原のほうではなく、横浜市都筑区にある浄土真宗本願寺派のお寺です。

勝田山 最乗寺
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億劫(おっくう)な日々

2010-09-08 01:38:08 | 法話のようなもの

毎日、夕方になると息子の散歩に出掛けます。
日中に比べれば、陽射しも和らぎ、うだるような暑さも少しだけ穏やかになっているはずなのですが、もともとがインドアな性分なので、外に出るのも正直おっくうでなりません。
一昔を思い、夏とはこんなに腰を重たくさせる季節だったかと首を捻ってしまいます。

さて、こんな「おっくう」な気分が続いているのですが、この「おっくう」を漢字にすると「億劫」となります。
「億」は馴染みのある字ですが、見慣れない「劫」という字、これは時間の単位を表す語であることをご存知でしょうか?

「劫」は本来「こう」と読み、一説には20km四方の岩に、100年に一度天女が舞い降りてきては、羽衣でその大岩を一度撫でて天へ帰るということを繰り返し、その大岩が磨耗してなくなっても終わらない時間を一劫というのだそうです。

浄土真宗において、日常に読まれるお経に『正信念仏偈』があります。
その中に「五劫思惟之摂受」という経文があるのですが、これは阿弥陀さまがまだ仏(如来)となる前、菩薩として修行をされていた頃に、誰一人も漏らすことなく救い上げるためにどうすればよいのかと、五劫の間お考えになられたという意味があります。

尽きることのない欲望に塗れた者たちを救うということが、いかに困難なことであり、他でもない私自身がいかに救い難い存在であったかということを、この劫という時間が知らしめてくれます。

劫の一億倍で億劫。
想像すらできない長い時間が転じて「面倒臭い」という意味になったと言われていますが、一劫を生き永らえるどころか、いつ命の灯火が消えるかも分からない人生を歩んでいるのですから、「おっくう」などと言っている暇など本当はないのかもしれませんね。

息子が一緒に散歩をしてくれるのは今だけでしょう。
本当に、おっくうなんて言っていては勿体無い勿体無い。

さて、この『正信偈』を皆さんと一緒に読む会が、今週の土曜・午後2時より本堂でございます。
事前予約は要りません。
どなたでも参加できますので、どうぞお越し下さいませ。

おっと、蛇足ですが、落語で有名な「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ…」の五劫は、上記のように阿弥陀さまの考えられていた時間に由来します。
ちなみに、この「寿限無」に続くとんでもなく長い名前の中には、スーパーマリオというゲームの登場人物や武器の名前に使われているのが幾つかあるので、興味をもたれたら探されてみては…?