あ・しねま・たいむ

今日も映画でまったり

ムーンライト

2017-07-08 12:25:13 | 映画 2017
犯罪が多発するマイアミの貧困地域で暮らすシャロンの人生を、 
あだ名をリトルと呼ばれていた子供時代、
多感な少年期のシャロン、
そしてブラックという通り名で暮らしている20代、  
の三部構成で描いた作品です。 

シャロンは、内向的で身体も小さく、学校でいじめられていました。
母親は麻薬中毒者で、育児放棄状態。
シャロンの居場所はどこにもありませんでした。
ある日、いじめっ子たちに追われていたシャロンは、
麻薬ディーラーのフアンに助けられます。
フアンは恋人テレサとともに、
シャロンの保護者代わりとなっていくのでした。

高校生になってもシャロンは学校で孤立していましたが、
幼馴染みの同級生ケヴィンにだけは心を許していました。
そしてシャロンは、ケビンに惹かれている自分に気づきます。 
しかし、ある事件が彼らの運命を変えてしまいます。

月日が流れ、大人になったシャロン。
身体を鍛え上げ、少年時代の面影はもはやありません。
アトランタでフアンと同じ、麻薬ディーラーをしています。
シャロンの元には母親からたびたび、
家に帰ってくるようにと電話がかかってきました。
無視していたシャロン。
そんなある日、ケヴィンから電話がかかってきたのです。


人種問題、貧困、LGBT、家族の問題と、
これでもかというくらい重いテーマが詰まっています。
でも、最初から最後まで、静かな空気が流れているような感覚です。
置かれている環境は理不尽でも、
シャロンは声高に抗議していないの。
内向的なシャロンの雰囲気そのままの物語です。 
でもだからこそ、考えさせられてしまいます。 

じつは、大人になってからのシャロン、
金のネックレスに金時計、金のブレスレットに金を被せた歯と、
金尽くしなのはともかく(笑っちゃったよ~)
あまりにも筋骨隆々の胸板厚いオトコになってまして、
いくら鍛えたといっても骨格が違うだろ~?と思ったけど、
和解したケヴィンに優しく抱きしめられた顔を見たら、
やっぱり内向的なシャロンの顔になっていて、
ああそうか、
あの厚い筋肉は心を守るための鎧だったんだね、
と思えました。

母親との再会のシーンもよかったなあ。

監督 バリー・ジェンキンス 
20代のシャロン〝ブラック〟 トレヴァンテ・ローズ
10代のシャロン アシュトン・サンダース
子供時代のシャロン〝リトル〟 アレックス・ヒバート
20代のケヴィン アンドレ・ホランド シャロンの幼馴染み
10代のケヴィン ジャレル・ジェローム
子供時代のケヴィン - ジェイデン・パイナー
ポーラ ナオミ・ハリス シャロンの母
フアン マハーシャラ・アリ 麻薬ディーラー 
テレサ ジャネール・モネイ フアンの恋人
テレル パトリック・デシル シャロンの同級生
2017年3月公開


フアンがシャロンに言った、
「月あかりの下、黒人がブルーに見える」

これがこの映画のタイトル「ムーンライト」に繋がるのですね。
印象的な言葉でした。

監督は、本作が2作目となるバリー・ジェンキンスです。
ジェンキンスは物語の舞台と同じマイアミ出身。
12歳の時に父親を亡くし、母親にも見捨てられた彼は、
劣悪な環境の中で血縁関係のない女性に育てられたのだそうです。
この「ムーンライト」は、監督の物語でもあるのでしょうか。