そして時の最果てへ・・・

日々の雑感や趣味の歴史についてつらつらと書き並べるブログ

即位20周年ということで

2009-11-15 23:34:50 | 雑感
平成天皇即位20周年、ということで、少しだけ天皇制について考えます。

明治維新以後、日本は西洋に追いつくための努力を重ねました。福沢諭吉以来、「近代的個人」を創出するための涙ぐましい試みが続けられています。

しかしそれは失敗と挫折の連続でした。共同体のメンバーに後ろ指を指されようが、殺されようが、自身の内なる声に殉じろ!という西洋の近代的で一神教的自我は、共同体に溶け込もうとする日本人のもつ強固な前近代性の前に敗れ去ることとなります。

政治学の丸山眞男、経済学の大塚久雄、歴史学の阿部謹也なんか読むと、いかに日本人が近代的でないかの愚痴がずら~っと書かれてます。政治学や経済学は、日本が近代的個人の創出に失敗したことを嘆き、どうすれば前近代的な遺制を打破できるのか、どうすれば日本が近代化できるのかを考えました。

しかし社会学だけは意見を異にしました。社会学は、「『近代的個人』など創出しなくても社会の近代化は可能だ」という理論を示したのです。

古典的な政治学や経済学は、「近代的個人」という「OS」の上に立って初めて「近代社会」が作動すると考えたんですが、社会学は、全然別の「OS」の上でも「近代社会」は作動すると主張しました。これがいわゆる「社会システム理論」となります。

宮台真司は、「近代的個人」とは異なる仕組みで「近代社会」が作動する「OS」のことを、「天皇制」と呼んでいます。

そういう目で日本国憲法の第1章の第一条
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
を眺めると、よくできてるなぁ、と思った次第です。