ほの暗い林の縁にポッと朱赤色の灯をともすように咲いていた。
フシグロセンノウの、この揺るぎのないきっぱりとした朱赤色を、
子ども心にも好んだ。軽井沢千ヶ滝の遥かな夏の日の自然。
フシグロセンノウーー 茎の節の部分が、黒っぽい色になることからの名。
ナデシコ科の多年草。本州、四国、九州の山地の林下に自生する。
〇十年後に、セゾン美術館の庭の、山側の茂みに咲いているのを見た。
そこは自然のままの小流れを生かした庭園で、
木々の生い茂る縁には、青い珠実のついた葉っぱも見つけた。
それはルイヨウボタン(類葉牡丹)。牡丹にそっくりな葉の形に因んだ名前であった。