疎開してきた人たちは、谷あいの小川に沿った
土地を開墾し、畑を作りました。
○●○●
○
大通りから谷あいに通じる道は、急坂の小道である。
谷あいは、きれいに整地され、幾つもの小さな畑が並んでいる。みんな、疎開してきた人たちが自分たちに必要な食物を得るために、土おこしして造ったものだ。いままで、作物か草かもわからない都会人が、見よう見真似で造った、これでも汗の結晶である。
「居るかなあ、いないかなあ?」
「こんないいお天気だから、みんな喜んで、出ているんだろうなあ」
「みんなで、日向ぼっこを楽しんでいるかも」
そんなことを思いながら、問題の小道にさしかかった。こわいもの見たさに、つと、左手を見ると、居るわ、いるわ、1メートルもあるものから、30センチくらいの小さなものまで、蛇が重なり合って静かに日光浴をしている。
千ヶ滝華やかなりし頃は、ごみ捨て場であったらしく、上に幾重にも落ち葉が積もって、彼らには最高の棲家に違いなかった。
しらぬ振りをして、一歩一歩、私たちは石ころ道を下る。一歩間違えて、肩のものをこぼしたら、それこそ一大事である。
人々の畑を抜けて、小川の橋を渡ると、そこが、我が家の開拓地だ。木を倒した跡に造った、四,五坪の畑で、最後に住人となったので、一番奥だ。
春になると、「千ヶ滝桜」といわれている、小梨(ズミ)の白い花が一面に山を飾る。あまり大きくない木なので、毎日少しずつ切り倒して、根を掘り起こして面積をひろげた。そこにまず、大根の種を蒔いた。
(ume記)
土地を開墾し、畑を作りました。
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大通りから谷あいに通じる道は、急坂の小道である。
谷あいは、きれいに整地され、幾つもの小さな畑が並んでいる。みんな、疎開してきた人たちが自分たちに必要な食物を得るために、土おこしして造ったものだ。いままで、作物か草かもわからない都会人が、見よう見真似で造った、これでも汗の結晶である。
「居るかなあ、いないかなあ?」
「こんないいお天気だから、みんな喜んで、出ているんだろうなあ」
「みんなで、日向ぼっこを楽しんでいるかも」
そんなことを思いながら、問題の小道にさしかかった。こわいもの見たさに、つと、左手を見ると、居るわ、いるわ、1メートルもあるものから、30センチくらいの小さなものまで、蛇が重なり合って静かに日光浴をしている。
千ヶ滝華やかなりし頃は、ごみ捨て場であったらしく、上に幾重にも落ち葉が積もって、彼らには最高の棲家に違いなかった。
しらぬ振りをして、一歩一歩、私たちは石ころ道を下る。一歩間違えて、肩のものをこぼしたら、それこそ一大事である。
人々の畑を抜けて、小川の橋を渡ると、そこが、我が家の開拓地だ。木を倒した跡に造った、四,五坪の畑で、最後に住人となったので、一番奥だ。
春になると、「千ヶ滝桜」といわれている、小梨(ズミ)の白い花が一面に山を飾る。あまり大きくない木なので、毎日少しずつ切り倒して、根を掘り起こして面積をひろげた。そこにまず、大根の種を蒔いた。
(ume記)