うまさいと

お馬さんは好きですか?

「日米」という表記。

2006-04-07 20:49:17 | 競馬
昨日のシーザリオさんの記事に関連して。以前に
しーざりお祭り(05/7/4)
でも少し書いたことで、某所でも少し書いたのでそこから抜粋してみます。

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昨年夏、シーザリオがAmerican Oaks Invitational S.(USA-G1 T9f:アメリカンオークス)を制した時にあちこちで話題になっていた日米オークス制覇と書いたマスコミの報道について一言。
シーザリオが勝ったこと自体は私も手放しで喜びましたし、非常に価値のある、そして日本競馬界の歴史に燦然と輝く一勝だったと思います。この勝利は、10年経っても、100年経っても、色褪せることは無いでしょう。

でも。

もしですね、昨年のKentucky Derby(USA-G1 D10f)を制したGiacomo(ジャコモ)がジャパンダートダービー(JPN Gd1 D2000m)を制したとしたら。そして向こうのマスコミが
Derby double in USA and Japan(米日ダービー制覇)
という表記をしたとしたら、違和感を覚えませんか?

もしですね、昨年のKentucky Oaks(USA-G1 D9f)を制したSummerlyが関東オークス(JPN Gd3 D2100m)を制したとしたら。そして向こうのマスコミが
Oaks double in USA and Japan(米日オークス制覇)
という表記をしたら、違和感を覚えませんか?(こっちはちょっと無理やりな気もしますが)

もしですね、アメリカ人に
「~ってお馬さんはアメリカに続いて日本のDerbyも制覇したんだよ!」
と言われたら
「それはダートのジャパンダートダービーであって、日本ダービーとは違うよ」
と言ってしまうと思うのです。最初は笑いながら訂正するでしょうが、最後には怒る人もいるかもしれません。
そして、向こうから見れば今回の表現は正にそういうことだったのだろうと思います。

外国調教馬にこの二つのレースに出走する権利はありませんから、この例は現実には有り得ないことです。でも、海外競馬を普段から観ている人間が受ける違和感というのは、日本の競馬ファンの立場に置き換えてみると、こういうことなんだと思っています。
シーザリオの偉業を、そしてジャパンダートダービーや関東オークスの価値を貶めるつもりは全くありません。ですが、日本の、特に中央競馬を観ている大多数の競馬ファンにとっては「芝」こそが日本のメイントラックであり、どうしても「ダート」のダービーなりオークスなりを芝のダービー、オークスと同等に評価するというのは難しいことだと思います。
そもそもAmerican Oaks(USA G1 T10f)は創設自体が2002年。ダンスインザムードが遠征した2004年からG1になったばかりであり、その前年までの2回は単なるステークスレース(グレード無し)の一つにしか過ぎませんでした。つまりは、昨年で第4回目の単なる新設G1であると言わざるを得ません。まだまだ歴史の浅いレースということです。
アメリカのオークスと言えば、それは
Kentucky Oaks(USA-G1 D9f:ケンタッキーオークス)
を指すのであって、それ以外の何物でもないでしょう。

「ダート」こそがメイントラックであるアメリカにおいての芝レースの存在というのは、日本におけるダートレースという位置づけと同等であります。従ってマスコミの方々に言いたかったのは、絶対にこの表現はグローバルスタンダードではないということを言いたかっただけです。揚げ足を取るわけではありませんが、その辺りの報道をきちんとして欲しかった、そして競馬マスコミの方の海外に対する認識の薄さを感じ取ったある夏の日でした。

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(抜粋ここまで)

といったエントリを書いたんですよ。で、昨日Thoroughbred TimesとBloodhorseを訳してて気付いたことがありました。
やっぱりアメリカではどの記事も「Dual Oaks Winner」とか「Oaks Double」なんて書いてないじゃん。だから日米オークスってやめようよ。
ということです。「日米オークスなんて表記やめろ、それがグローバルスタンダードだ」と書くと単なるアメリカかぶれって言われそうなので、具体的に自分の身に置き換えてみた上のエントリ抜粋してきたわけです。
我々日本人のイメージする『オークス』と米国競馬ファンの『Oaks』にどれだけ隔たりがあるかはわかりませんが、少なくともAmerican Oaks Invitational S.(USA-G1 T10f)は明らかにアメリカの「オークス」ではないでしょう。勿論、アメリカ側が「日米オークス制覇」って書いたらきっと「それは侵略されたことに他ならない」という気分になるでしょうから、その書き方はつかわないでしょう。でも「日本と米国のオークスを両方勝っちゃったという表記」というのはもとより「米国のオークスを」という表記がありません。日本での報道のされ方をあてはめると、普通ならタイトル辺りに「Dual Oaks Winner Cesario」といったような表記があっていいはずでしょう。しかし、無い。これはやはりAmerican Oaksをいわゆる「3歳牝馬が凌ぎを削るオークス」とはみなしていないということではないかと思います。レース名から考えても「American Oaks Invitational Stakes」と語尾に「招待ステークスだよ」ってわざわざついていますし。ただ単に「3歳牝馬同士で競い合うから」ということでこの名前にした感ありありです。

ん、でも逆に考えると「権威のある『オークス』って名前をわざとつけて、その名前と賞金につられた欧州と日本の芝のトップホースを集める」って計画だとしたら。・・・というかそれが正解なのかもしれないなと思いつつ、疑問を投げかけただけで終了してみる。

彼女がのこしたもの。

2006-04-06 23:36:43 | 競馬
American Oaks winner Cesario retired(Thoroughbred Times)

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日本調教馬として2005年のAmerican Oaks Invitational S.(USA-G1 T10f)初の米国G1馬となったシーザリオが右前脚の靭帯の怪我により引退することになった。どこで繁殖牝馬として過ごすことになるかはまだ知らされていない。Sadler's Wellsを肌に持つKirov Premiereを母とし、スペシャルウィーク産駒の同馬はHallywood Park競馬場における昨年7月のAmerican Oaksでの4馬身差の勝利以来出走が無かった。「残念ながら、彼女の靭帯の炎症は慢性的なもののようです。復帰するには少なくとも一年は必要になるでしょう。残念ながら、彼女をレースで再び見ることはできないでしょう。」と調教師のKatsuhiko Sumii師が言っています。シーザリオはHollywood Park競馬場での圧勝より以前に東京競馬場で行われたYushun Himba(Japanese Oaks)を勝ち、阪神競馬場で行われたOka Sho(Japanese One Thousand Guineas)では頭差の2着でした。2005年度のJRA最優秀3歳牝馬に選出され、2シーズンで6戦5勝、収得賞金は$2,578,568でした。シーザリオは生産者であるKatsumi Yoshidaの北海道にあるNorthern Farmで繁殖牝馬になるでしょう。

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Japanese Filly Cesario, Won American Oaks, Retired(Bloodhorse)

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2005年のAmerican Oaks Invitational S.(USA-G1 T10f)を勝ち、日本生産馬として初の米国G1優勝馬となったシーザリオが、右前脚の靭帯の炎症のために引退することになった。サンデーサイレンスの孫にあたる4歳の牝馬は昨年夏の$750,000の勝利からは出走していない。「私は4月3日に状態を確認しました。残念ながら、彼女の炎症は慢性的なもののようです。復帰するには少なくとも一年はかかるでしょう。私は彼女が再びレースで走る姿を観られないことがとても残念です。しかし、彼女がセカンドライフを楽しんで、良い産駒を故郷であるNorthern Farmで産んでくれることでしょう。」とKatsuhiko Sumii師が言っています。Northern Farmで生まれたシーザリオはAmerican Oaksの勝利の約6週間前にYushun Himba (Jpn-I, Japanese Oaks)も勝利しています。彼女は11頭のライバル達を尻目に1 1/4-mileを楽に駆け抜け、Hollywood Park競馬場におけるstakes-record timeである1,59,03をマークしました。Blood-Horseによると、彼女が2着のMelhor Aindaにつけた4馬身という着差は、もし鞍上のYuichi Fukunagaが望めば三倍になっていたかもしれない。スペシャルウィークとSadler's Wellsを肌に持つKirov Premiereとの間に生まれたシーザリオは6戦5勝で引退し、Carrot Farmのために稼いだ賞金は$2,578,568である。彼女の落としたレースは頭差のOka Sho (Jpn-I, Japanese One Thousand Guineas)だった。繁殖牝馬としてのプランはまだ発表されていない。

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サラタイとブラホの全訳はこんな感じです。ちょいちょい怪しいところはありますが大方の雰囲気は掴めていると思います。どちらの記事にしろ端的ながらきちんと要所を掴んでいると思います。この二つの新聞(?)は通常、牝馬のG1馬の引退でもきっちり扱っているように思いますが、日本から来て衝撃的な勝利を飾ったシーザリオについてもきちんと書いてくれています。あの一戦だけで戻ってくるというのは正直勿体なかったと当時は書いたかもしれませんが、華やかな桜がすぐに散るかの如く、印象度ということを考えると、あれが世界に示した彼女のベストパフォーマンスだったことを疑う余地はありません。アグネスタキオンにしてもそうですが、未完の大器に対しての評価というのは非常に大きいのではないかと思います。
また「Sunday Silence granddaughter」といった表記に見られるように、米国側としてもSunday Silenceという国民的ヒール(多分。Easy Goerがいたし)が、はるばる日本の地から送り出した刺客の素晴らしい勝利を認めた(親近感もあってのことでしょうけど)ということもあったのかもしれません。『芝だから』『Sunday Silenceの孫だから』という条件はあるものの「日本馬の勝利」をまだ暖かく見守ることができる余裕はあるけれども「芝のレースなら日本馬に全部勝たれちゃうんじゃね?」という危機感と「日本のダートはFleetstreet Dancerレベルでも十分勝負になるんじゃね?」といった憶測(Lido PalaceとかTotal Impactは砂が合わなかったとして)が、話題になっているA・ベイヤー氏の発言に凝縮されている気はします。勿論あの発言がDubai Wold Cup Dayでの日本馬の活躍を受けてであったことは否定しませんが、こと「衝撃度」に関する点では百聞は一見にしかずなわけで、シーザリオの圧勝により自分達の土地を荒らされた時の方がショックは大きかったことでしょう。以前のMairzy DoatesがJCを制した時のような安穏とした雰囲気ではないけれども、まだ気持ちに余裕はある。日本馬の強さを認めてはいるけれども、しかし潜在的な危機感は徐々に大きくなっている、といったところが「開放しろよ」って発言になったのだろうなと。
Her four-length margin over runner-up Melhor Ainda could have been triple
などという表現も単なる誇張ではなく「もしかしたら」という部分があるからこそ書けたのでしょう。
追うものの立場にいる者は、追われる者の立場はわからないので何とも言えないわけですが、スーパー301条の時のような奥の手を出してくることがちょっと怖いかな、と。
アメリカ人を「焦らせた」という意味では、シーザリオさんの植え付けたイメージは相当大きかったのかもしれません。

非ステロイド系薬物の誤検出について。

2006-04-05 22:01:05 | 競馬
Kentucky officials issue warning on naproxen(Thoroughbred Times)

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ケンタッキー州競馬統轄機関は最近の三例の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるNaproxen(ナプロキセン)の陽性反応について罪を免除した。これは、月曜日にケンタッキー馬薬物審議会がケンタッキー州の「48時間の使用中止」というガイドラインについて、レースを走った場合は馬の体内から薬物が抜けることを保証するのに十分ではないと警告を発したからである。
ケンタッキー州の新しい薬物規則はレース前24時間以内まで、三つの内一つの非ステロイド性抗炎症薬(phenylbutazone, fluxin, ketoprofen)が投与されていることを許している(phenylbutazoneの商品名はビュート。これなら馴染みがあるはず)。この規則は他の全ての非ステロイド性抗炎症薬が少なくともレース前の48時間に与えられていることを意味している。薬物審議会の最新の研究成果によると、Naproxenは他の類似した薬物よりも代謝、排泄が遅いことがわかった。「この薬物投与方法はレースまでの一連の大きな投与量に関係がある。彼らはレースの48時間前には投与していないが、我々は残留物を見つけ出す。そこで、我々は『もしその薬物を数日間に渡って多量に使用するならば、レースの5日前には確実に使用を中止するべきだ』と忠告したい。」とケンタッキー州競馬統轄機関の理事長であるJim Gallagher氏は述べている。
月曜日の薬物審議会では満場一致でケンタッキー州競馬統轄機関が通告したホースマンと獣医がレースの5日以内に陽性反応を避けるためにNaproxenを使用しないように勧告することを可決した。ペナルティーとしては、Naproxenを含んでおり、初犯の場合は$500の罰金に決定した。競馬統括機関はこの決定を4月17日から考慮することにした。その間、薬物審議会はKeeneland競馬場で水曜の朝にホースマンと獣医にこの発見についての通知を行うことを予定に組み込もうとしている。Keenelandの春開催は金曜日に始まる。「陽性反応が出た後では、全員がこの問題に焦点を当て、我々は少なくとも5日間は使わない方がよりよい結果を得られると考えた」と馬薬物審議会の座長であるConnie Whitfield女史(競馬統括機関の副議長でもある)が述べている。また、ケンタッキー州の担当官はNaproxenの閾値を明言していない。「閾値はありますが、公にはしません。研究機関が絡んでいるので」とConnie Whitfield女史が言っている。

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ということで米国では最近、色々と薬物で話題になっています。これまでもステロイド系のドーピングに関して色々と取り沙汰されていました。私の以前の記事にも何か書いているかと思います。
どーぴんぐかっこわるい!(05/7/12)
さて、今回は非ステロイド系の薬物ということですが、ケンタッキー州での規制の審議というのは以前にも
ケンタッキー馬薬物審議会、厳しい罰則の承認を求める(アメリカ)
(JAIR 05/6/23)(Thoroughbred Timesより)

などの記事があります。今回のようなケンタッキー州で言うところの「B区分(馬の競走成績に影響を与える合理的な可能性があり、レースのない日に馬の体内に存在する根拠のありうる薬物)」に相当する非ステロイド系薬物への規制というのも段々と厳しくなっていることと思います。

さてさて、今回の記事を要訳すると
新規則施行後にNaproxenが検出されて失格なりになったお馬さんについては冤罪であった可能性が大いにある
Naproxenに関してはレースの5日前までに使用をやめとけば大丈夫でしょってことに決めてみた
ということです。例えば競馬統括機関の副議長も兼ねているConnie Whitfield女史がいるように、複数の機関が協力し合い問題の迅速な解決に至るというのは日本ではあまり見られないのかも・・・とか思ったりします。

困る馬券親父。

2006-04-04 00:47:42 | 競馬
Massachusetts simulcast laws expires(Thoroughbred Times)

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Suffolk Downs競馬場(ひいてはマサチューセッツ州)におけるサイマルキャスト法は3月31日に期限が切れました。というわけで、4月1日に行われたFlorida Derbyをはじめとする他場でのサラブレッドのレースの賭けを受け付ける法的権限が無くなりました。Suffolk Downs競馬場が発表したのは無期限のサイマルキャストの停止でした。5月6日まではSuffolk Downs競馬場においてレースが開催される予定はありません。マサチューセッツ州議会での投票では、一ヶ月間のサイマルキャスト法延期と4月10日までの論議が決まった。マサチューセッツ州の議会はサイマルキャスト法の年末までの延期を要求していました。議会での期限の延長要求が合意に至らなかったため、サイマルキャスト法の期限が切れました。4つのパリミューチュエル方式(の会社)のオーナー間の長期間の意見の不一致の問題がくすぶり続けており、この問題の根本的な部分でもある。Raynham Taunton Greyhound Parkを管理するGeorge Carney氏は、彼のトラックのサラブレッドのサイマルキャストの権利を拡大したい。この議論により、競馬場での雇用者の職が失われました。「現在、彼らはみんな失業中です」とSuffolk Downs競馬場のパリミューチュエルの職員の代表であるLouis Ciarlone氏が言っています。約80人の職員が現在East Boston trackで雇用されています。政治的な議論での決着がなければ、サイマルキャストによる収入が競馬場の財源に深刻に影響してくるでしょう。

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とまぁ直訳してみました。意味わかんないよこれ。このThoroughbred Timesの記事だけでは不完全(ってか曖昧な表現が多い)なので、Bloodhorseの方にもちょこっと目を通してみました。ところどころ間違っているかもしれませんが、要訳すると「マサチューセッツ州では議会での法案が通らずに、通常の馬券購入者が他場のレースの馬券を買うことができなくなった」というわけです。これは馬券親父は困るよなと。5月6日まで丸々一ヶ月間競馬できないんだから。アメリカの馬券購入というのは(アンドリュー・ベイヤーがある意味で批判していたけれど)サイマルキャストによって「いつでもどこでも競馬やってる=馬券をいつでも購入可能」というのが強みだったはずです。これが無くなるということは、ただでさえ馬券売り上げ問題が深刻になっているのに、これは追い討ちをかける大きな痛手でしょう。マサチューセッツ州というのはスロットマシンが合法ではないはずですが、上記の文面からドッグレースはやっているようです。競合するギャンブルというものが存在しているわけでしょうし、もたもたしてるとまずいんじゃなかろうかと勝手な心配をしてみました。ブラホを読むと「この問題の根っこには二つの要素があって、一つは上院で『どれだけの期間サイマルキャスト法を延長するか』が合意に至らなかったこと、もう一つは『競馬場のオーナーが幾つのレースを自前の設備でサイマルキャストに使用するのかを示すこと』が合意に至らなかったこと」という書き方がされています。私にはマサチューセッツ州の議会がこういった決定をした(単に意地の張り合いによる時間切れという気もしますが)背景にどういった事情があるのかはちとわからないのですが(どうやら議会の一番偉い人であるRobert Travaglini氏が『サイマルキャスト年末まで延長案』をてこでも譲らなかったっぽい)、これによってマサチューセッツ州の競馬産業が衰退してしまうことは間違いないかと思います・・・。スロットマシンについての審議も同時に行われたような節もありますし、競馬に取って代わるギャンブルもたくさんあるということでしょう。こういった社会的、政治的な事情に関しては1972さん辺りが詳しく書いてくれることを祈って、リハビリ一回目を終わりたいと思います。

就職活動も終わり、学会も終了したのでこれからはぼつぼつ書いていくつもりです。これからもよろしくお願いいたします。