うまさいと

お馬さんは好きですか?

欧州前半局地的回顧

2006-08-19 22:55:50 | 競馬
随分と前に1972さんから言われてはいたのですが、パソコンの不調などで書いたのが全部消えました。MARLさんも最近やられていたので、ひっそりとやってみようと思います。マイルも短距離もコロコロ勝ち馬が変わるんで何とも言いようがありませぬ。Les Arcsは強いんだろうけども。なので、10~12fのみで考える上に昨年と違い至極個人的な回顧になりますのでご注意を。


走った数と存在感は比例しない

「いっぱい走って存在感を示した」のがOuija Boardならば反対に「ほとんど走らないのに存在感を示した」のがShiroccoというところ。

Ouija Boardは昨年のPrince of Wales's S.(GB-G1 T10f88y:York開催だったからこの距離)での大敗からおそるおそる復帰してBreeders' Cup Filly & Mare Turf(USA-G1 T10f)ではR Bejaranoが巧かったのもありますがIntercontinentalに逃げ切られて2着。決してIntercontinentalが弱いわけではない(西海岸ではトップクラスだったし)が、Oaks S.(GB-G1 T12f10y), Irish Oaks(IRE-G1 T12f), Breeders' Cup Filly & Mare Turf(USA-G1 T11f)と勝った3歳時を思い起こせば「こりゃもうだめかな」感は拭えなかったわけです。そして年末の香港で引退という話だったのでJC時にOuija Boardの厩務員さんの「2分22秒台でも走れるよ」発言で思わず笑ってしまったのですが、不利さえなければ3着は充分にあったろうという競馬でした。返す刀でHong Kong Vase(HK-G1 T2400m)を快勝しました。「じゃあドバイまでいくか」ってことでDubai Sheema Classic(UAE-G1 T2400m)では4着でしたがいつの間にか引退の話は立ち消えになり、その後はQueen Elizabeth II C.(HK-G1 T2000m)で3着、欧州に戻ってCoronation C.(GB-G1 T12f10y)でShiroccoに劣るもののEnforcerやAceにはきっちり先着しました。因縁の(昨年は骨折してるし)Prince of Wales's S.(GB-G1 T10f)では逃げ粘るElectorocutionistと伸びあぐむDavid Juniorという中距離のスペシャリスト相手に勝ち、二度目の黄金期の到来を告げる結果となりました。Eclipse S.(GB-G1 T10f7y)ではC Soumillonがきっちりやられて5着に敗れますが、"King George"を回避して臨んだNassau S.(GB-G1 T9f192y)ではAlexander Goldrunとの際どい叩き合いを制して勝利します。

騎手を固定できないというのが表向きの最大のネックであります。例えば今年は既にK Fallon, L Dettori, O Peslier, C Soumillonと4人も乗ってます。そんなこと言ったら実は昨年も4人が乗ってるのですが、Cartier Award Horse of the Yearを受賞した一昨年はK Fallonで固定(当時K FallonはM Stoute師の専属だったため、North Lightが出走したArcに関してはJ Murtaghが騎乗)されており、鞍上の心配はありませんでした。今後はそこがどうなってくるかが一番の問題だと思われます。

もう一つは「10fも12fも走れる」ということで、12fで古牡馬のトップクラスを相手にすると分が悪いのですが、10fならばやれるという辺りが判明しており、King Georgeも最後の最後まで出否を悩んだという経緯があります。どこに出てくるかは12f路線の有力馬の出否によって左右される部分がありますが、次走はIrish Champion S.(IRE-G1 T10f)かPrix Vermeille(FR-G1 T2400m)と言われています。Irish Champion S.はHurricane Run, Electrocutionist, David Junior, Visindarの回避が判明し、残るはDylan Thomas, Alexander Goldrunといったところですので、勝機ありと見てこちらに回ってくることも十分考えられるでしょう。


今後の見どころ
1. Alexandrovaとの対戦
2. あといくつG1を勝てるか


対するShiroccoは戦績ではなく生産面にスポットを当ててみることに。05年シーズンに斜陽のドイツからA Fabre師のもとに移ってきました。今年もPrix Jacques le Marois(FR-G1 T1600m)で2着したManduroもA Fabre師の下に移籍させています。で、オーナーのUllmann男爵(Baron Georg Von Ullmann)のことを全く知らなかった私(失格)なのですが、現在のGestut Schlenderhan(シュレンダーハン牧場)の共同所有者(もう一人は母親か)なのですねぇ。現在はShirocco, Gentlewaveなどを輩出してお馴染みのMonsunをはじめとする種牡馬がいますが、この牧場の真骨頂はそこではなく、A, Sラインという著名な名牝系にあるのでしょう(ここは勉強中だから許して)。殿下かきっと大好きであろうOleanderを生産したのもここよね。さて、このUllmann男爵の自家生産馬であるShiroccoは、昨年ドイツ生産馬としてもはじめてBreeders' Cupを制したわけです。その前の二戦はやはり少し物足りないものではありましたが、Breeders' Cup Turf(USA-G1 T12f)での勝利はそれを補って余りあるものです。多少馬場に左右される面はある(04年のArcは硬い馬場を理由に回避)ものの、Good程度なら何とかなる(そういった意味でもレース直前に雨が降ってGoodだった04年のArcは不運ではあったのかも)わけでして、同厩のHurricane Runとキャラがかぶらんでもない。

後半戦はHurricane Runと目標が同じだということもあり、その出方が注目されます。M Tabor氏とUllmann男爵との駆け引きということになりましょうが、種牡馬入りすることを考えれば、Coolmore StudとGestut Schlenderhanとの駆け引きということになるので、正直間にいるA Fabre師はどう考えているのか知りたかったりします。半ば譲った感のあるGrand Prix de Saint-Cloud(FR-G1 T2400m)を考えると、Shirocco側にトライアル選択の優先権が与えられそうな気はします。秋の始動はPrix Foy(FR-G2 T2400m)かGrosser Preis von Baden(GER-G1 T2400m)かと言われていますが、私は後者ではないかと考えています。おそらく前者はHurricane Runに譲ることになるでしょう。


今後の見どころ
1. 秋初戦はどこになるのか?
2. 結局Hurricane Runとどっちが強いの?


全体的な印象としては「Godolphinの不調」が目立ったなというところか。Electrocutionistもそれなりに頑張ってはいるのだけれど。こんなことを書いていたらLibrettistがPrix Jacques le Maroisを勝っちゃうわCherry MixがRheinland-Pokal(GER-G1 T2400m)で復活しちゃうわとやりたい放題なので後半戦の巻き返しを楽しみにしましょうか。また、3歳勢が不振と言われてはいますが、その辺りの判断は据え置きということで。

戦績で判断すれば間違いなくHurricane Runが一番なのでしょうが、Prideに負けたということでより一層12f路線が面白くなったのもまた確か。同時にその負けた一戦が余分であり「Shiroccoの方が・・・」と思われる要因ともなっています。Hurricane Runが秋までぶっこ抜いちゃうのか、それを止めるお馬さんがどこから出てくるのか、興味は尽きない限りです。


これじゃあんまりなので、これからの見所を幾つか。International S.(GB-G1 T10f88y)が昨年よりももっと低調な面子になることが確定的であり、Hurricane Run, Electrocutionist, David Junior, VisindarもIrish Champion S.を回避することが決定しました。逆にChampion S.(GB-G1 T10f)はElectrocutionist, Sir Percy辺りが出走する気配です。
例年だと
Irish Champion > International = Champion
なのですが、今年に限っては
Champion > Irish Champion > International
となりそうな予感。日本のお馬さんが大好きな人向けに書くと「要するに中距離で空き巣をするなら今年しかない」。今年のIrish Champion S.は例年よりかなりレベルが低いと言われそうです。この辺りでマイル路線から生きのいい3歳馬が攻めてこないですかね。Sussex S.(GB-G1 T8f)でコケちゃったAraafaが来ないかな、というのが面白いかなと。