うまさいと

お馬さんは好きですか?

米三冠は厳しいのか?

2006-05-31 01:40:49 | 競馬
何だかじわじわと変な盛り上がりを見せていることがありますね。

シーキングザベスト、レコード勝ちで巻き返し 土曜回顧 テレビ愛知オープン・立夏Sなど(でありんぐ・はぁと)@あかちゃんぷさん
に端を発し
アメリカ三冠レースに関する、若干の考察(血統の森+はてな)@momdoさん
がちょいと疑問を投げ掛け
アメリカ三冠に関して(REVERY_L_ELEKTRA: AnotherSide)@Marlさん
が詳しいデータと共に解説され
米三冠路線は厳しい?(appletree's notes)@appletreeさん
が「あくまで偏見」とかおっしゃりつつも綺麗にまとめた感のある何だか面白い流れになっています。

えー、いまさらなんですがmomdoさんのところに登場する「チャット仲間」ってのは私のことだと思います、はい。で、私は「三冠路線が厳しいというよりもむしろ種付料の問題でしょ」と言った張本人なのです。変な問題提起してすみません。じゃ、いくぞー。ここからは私も「偏見」で書きますのでおかしいと思った方は何か書いて下さいませ。間違っているところも多々あると思いますので・・・。アメリカの生産者の立場なんて想像でしかわかんないし。ちなみに私は繁殖面に重点を置いた考え方だということを先に言っておきます。

プリークネスS戦線06-その1 色々な記事をご紹介(あさ◎コラム)@1972さん
のコラムで紹介されている記事によりますと

スペクタキュラービッドは走るたびに保険料が上がり、4歳時には100万ドルの保険料がかかったそうです。つまり、走ることには何の経済的なメリットはない状態になってしまったのですが、それでも、オーナーのMeyerhoff氏はBidの走る姿を見るために現役を続行させたそうです。

BarbaroのオーナーであるJackson夫妻のもう一頭のダービー出走馬であるShowing Upを管理しているTagg師(Funny Cideの調教師でもある)は、「最近リスクを取るには馬の価値が上がりすぎてしまった。もしBarbaroが3冠馬になれば、その価値は55億円を超えるだろう」と語ります。

仮に、20億円の馬がいるとして、その保険料は安く見積もっても4.5%で、9000万円。これに加えて、騎手と調教師への支払いが6000万円、さらに輸送費が1000万円。4歳で仮に3億円稼ぎ出したとしても、馬主の手元には半分以下しかのこりません。そして、実際に3億稼ぐ保証はどこにもない。その一方で、今すぐ種牡馬入りし、80~100頭の牝馬に500万円から1000万円の種付け料で種付けを行なえば、1年に4~10億円の金額が確実に入ってくる。

つまり、馬主は確実に入ってくる4~10億円と、入ってくる保証のない2億円を比べることを余儀なくされます。かつては、種付け料が安かった上に種付け頭数も多くても40頭前後だったので、トップホースでも古馬として走らせることが可能だったわけです。

要するにこの上の話にエッセンスが集約されていると考えるのです。私はチャットの中で

「日本の競馬は『旦那さんの趣味』、アメリカの競馬は『エンターテイメント性のあるビジネス』、欧州(英・愛・仏辺り)の競馬は『伝統に裏打ちされたビジネス』」だと思うという趣旨の発言をしたのですが、日本と比較すると他の二地域では「合理性の追求」という意味で先を行っている印象を受けます。要は「種牡馬としての価値を落とさないためなら早期引退も止むを得ない(というかむしろ積極的に早期引退する)」という姿勢がはっきりと出ていると言えます。日本よりも「マネーゲーム」という印象を強く受けるのです。

アメリカの競馬はダートが中心であるため、芝中心のレース体系を汲む地域よりも平均的に少し距離が短い、つまり大目標とする距離が10f(2000mちょい)前後ということもありますが、お馬さんを売る生産者の立場ではむしろ「必要経費をどれだけ早くペイできるか」というのがネックになっているのではないかと考えています。「古馬の9~10f路線で大活躍」が目標ではなく、まずは2歳の早い時期にサッサと勝ち上がって重賞路線なりに顔を出すことが目標になってくると思います。Kentucky Derbyまでは10f戦が行われないという暗黙の了解の下では、2歳戦では6f~8f辺りに集中しますし、年を跨いでも夏近くまでは9fを走れれば充分ということになります。三冠路線に向かわないお馬さんにとっては短距離路線もありますし。むしろ一部の大規模な生産牧場以外は三冠路線は重要なものではないとも考えられます。私の感じる限りでは「夢よりもビジネス」であろうと見受けられます。従って「早熟性とスピード」というのが生産面において求められる最も重要な要因であり、種牡馬にもそういったものが求められていると考えます。

最近のアメリカにおいてその年を代表するような活躍を見せたお馬さんは大半が$100,000前後での種牡馬入りが約束されていると感じられます。勿論これは血統やその他の種牡馬など様々な要因が複雑に絡み合ってくることは確実ですが、大体$100,000が基準になっていると考えます。中にはGhostzapperのように初年度から$200,000なんてのもいますが、これは高いベイヤー指数を連発していたからこその芸当であって、普通とは言えません。

さて、個々の三冠路線のお馬さんの話に移る前にまずは表を出します。

YearKentucky DerbyPreakness S.Belmont S.
1999Charismatic
$35,000(3年目)
Charismatic
$35,000(3年目)
Lemon Drop Kid
$50,000
2000Fusaichi Pegasus$150,000Red Bullet
$30,000
Commendable
$10,000(2年目)
2001Monarchos
$25,000
Point Given
$125,000
Point Given
$125,000
2002War Emblem
¥8,000,000
War Emblem
¥8,000,000
Sarava
$5,000
2003Funny Cideセン馬Funny Cideセン馬Empire Maker$100,000
2004Smarty Jones$100,000Smarty Jones$100,000Birdstone$10,000
2005Giacomo(現役)Afleet Alex$40,000Afleet Alex$40,000


「早熟性とスピード」を感じさせるような三冠路線の2レース以上で素晴らしい競馬を見せたお馬さんというのは印象面でも大きいものがあるでしょう。Belmont S.で12馬身以上の差をつけ圧勝したBig Red TrainことPoint Given、国民的な人気を誇った(と思う)Smarty Jonesのover $100,000はわかりますし、血統的に申し分の無いFusaichi Pegasus, 同じくEmpire Makerが同じくover $100,000というのも納得のいくところです。

それとは逆に12fのBelmont S.だけを勝ったお馬さんの種付料がそこまで高くならない(Empire Makerは他も色々勝っているので除外)のも何となく頷けるというものです。その点、Birdstoneなどは2歳時にChampagne S.を、Belmont S.後にはTravers S.を勝っているにも関わらずこの種付料というのはいささか意外ですが、同期にSmarty Jonesがいたことがそもそも不運の始まりだったということでしょうか。SaravaがBelmont S.後に8戦負け続けて引退したこと、Commendableが同じく4戦負け続けたことによる種付料の低さというのも「12fでの勝利のイメージが尾を引いたために現役を続けざるを得なかった」とも言えるかもしれません(←少し拡大解釈気味ではあるけれど)。日本におけるライスシャワーと言うとわかりやすいでしょうか。この理由付けは少し無理があるとしても、特にSaravaの場合は「引退時期を逃したための種付料の低下」はに関しては言えると思います。勿論SaravaのBelmont S.がロングショットだったために、引退できなかったというのもあるかとは思います。これはMonarchosの場合も言えるかもしれません。MonarchosのDerby時はタイムは優秀でしたが、空前のハイペースによるものとされフロック気味に扱われた気もしますし、あくまで現役を続ける必要もあったかもしれないのですが、引退時期を延ばしてしまったことによる種付料の低下は納得のいくところだと思います。

また、この「引退時期を逃す→負け続け→種付料低下」というのは逆に考えると「その後が不確定であればあるほど」高額な種付料が期待できるという考えに通ずるものがあります。近年のアメリカで言うところのVindicationであり、日本におけるアグネスタキオンのシンジケートが莫大な金額になったようなものです。「どれだけ素晴らしい潜在能力を持つと周囲に感じさせるか」と「どれだけ戦績に傷を付けずに引退させるか」が種牡馬としての価値に大きく影響するということでしょう。

上の引用文の「現役を続ける上でのメリットとデメリット」を考えると「怪我をしたら早期引退」という流れは当然になってしまうと考えます。私の意見としては「三冠が厳しいことよりも、その後に現役を続けるメリットが少ない」から、三冠で大活躍すれば「アガリ=引退」になるということです。その際に「もうちょっと走らせようよ」という意見に対して「軽い怪我」はいわば「引退の都合の良い理由」なのだと思います。ビジネスだけで考えると$100,000の種付料がとれるならその時点で引退すればいいわけですしね。ちょっと寂しくもありますが。まとまってないなぁ・・・。

そうえいば私がmomdoさんとのチャットで保険料の話を持ち出さなかったのは、英国などでの障害馬に対する保険は知っていたのですが、平地のお馬さんに対する保険の存在をきちんと把握していなかったということが理由なのですが、そのお陰で結論が長引いてしまった感があるようで。しかし、他の方々の興味深いご意見を聞けたというのは非常に良かったと思います。では。

世界レコードの裏側。

2006-05-25 22:19:19 | 競馬
[はじめに]

まず前提としまして、このエントリはフサイチネットでの企画に一枚噛んだことで中の方からの貴重なタレコミを得ることができたものでありますが、当時は忙しかったこともあり結局アップしないままにお蔵入りになっていたものを焼き直したものです。「海外競馬をあまり知らない、今のところ海外競馬に興味が無いという方のためにもなるべくわかりやすく書く」という趣旨(というのは私の中でだけらしく、実際はちっともそんな趣旨になってはいない模様です)なので、多少読みにくかったり説明がくどかったりする部分もありますが、じっくりと読んでいただければ幸いです。

先日セレクトセールの上場馬が発表され、同時に国内のセリが活気を帯びているような気がしたので、あえてこのタイミングで書いてみようと思った次第です。私はセリ事情には全く疎いのですが、ここを見る方の中には大変詳しい方もたくさんいらっしゃるでしょうし、貴重なご意見をいただけたらと考えております。

[US$16,000,000ホース誕生]

Highest-Price Ever Helps Fasig-Tipton Set Juvenile Sale Records(bloodhorse)

3月に行われたFasig-Tipton Florida Select Sale(アメリカの中でもかなり大きなセリの一つ)におきまして、世界レコードとなるUS$16,000,000でForestry×Magical Masquerade(Unbridled)が競り落とされました。一発目の調教時計で1fを9.8秒という破格の時計で走り注目されてはいましたが、まさかここまで・・・と思った方は多いと考えます。Forestryは父がStorm Cat、半妹にJuvenile Fillies(USA-G1 D8.5f)を勝ったCash Runがおり、自身はKing's Bishop S.(USA-G1 D7f:キングズビショップS)の勝ち馬です。母の半姉に米重賞2勝のMagicalmysterycatがおり、その兄弟には日本で走ったツムジカゼ、レキシントンガール、エイシンコンラッドなどがいます。この価格は、調教時計と祖母である米重賞4勝のNannerlに起因していると考えるしかないでしょうか。落札したのはDemi O'Byrne氏で、彼はCoolmoreの代理人です。競った相手のJohn Ferguson氏はというとこちらはドバイのMohammed殿下なので、悔しい思いをしたことでしょう。

余談ですが、Coolmore(Sadler's Wells, Giant's Causeway, Fusaichi Pegasusなどの種牡馬を所有)と現在かなり険悪になっているMohammed殿下率いるGodolphinですが、昨年のKeeneland September Yearling Saleでは歴代4位となるUS$9,700,000でStorm Cat×Tranquility Lake(Rahy)を競り落としています。今回紹介したのはYearingもしくはJuvinile(1, 2歳)のセリですが、国際的なセールにおいて値段が高騰する場合、そこには必ずCoolmore陣営の代理人であるDemi O'Byrne氏とGodolphin陣営の代理人であるJohn Ferguson氏の姿があるといっても過言ではありません。これは現在の険悪な仲(L Dettori騎手がCoolmore関連のお馬さんには乗らない、Mohammed殿下がCoolmoreの種牡馬の仔を買わなくなった、などなど)によるところも大きいと言えます。

日本ならば関口氏も値段高騰の原因の一人と言えるでしょうが、競馬がお仕事ではないわけで、全ての大きなセリにいるわけではありません。従って差し詰め第二勢力といったところでしょうが、一発の破壊力はどの陣営にも負けないという特徴があります。加えてアメリカのセールにおいては「ピンフッカー」の存在を無視することは絶対にできませんが、ここでは控えておきます。一言で言うと「安く買って高く売る転売屋」といった存在です。

[過去の高額取引馬について]

さて、本題に戻ります。過去の1,2歳のセリで買われたお馬さんの上位を抜き出してみましょう。

年度後のお名前(多分)父×母セリの名前価格
2006The Green MonkeyForestry×Magical MasqueradeFasig-Tipton$16,000,000
1985Seattle DancerNijinsky II ×My CharmerKee. July$13,100,000
1983Snaafi DancerNorthern Dancer×My BupersKee. July$10,200,000
2005After MarketStorm Cat×Tranquility LakeKee. Sept.$9,700,000
1984Imperial FalconNorthern Dancer×BalladeKee. July$8,250,000
2004Mr. SekiguchiStorm Cat×Welcome SurpriseKee. Sept.$8,000,000
1984JareerNorthern Dancer×Fabuleux JaneKee. July$7,100,000
1985Laa EtaabNijinsky II ×Crimson SaintKee. July$7,000,000
2000Tasmanian TigerStorm Cat×Hum AlongKee. Sept.$6,800,000
1984AmjaadSeattle Slew×DesireeKee. July$6,500,000
2001Van NistelrooyStorm Cat×HaloryKee. Sept.$6,400,000
2005ObjectivityStorm Cat×Secret StatusKee. Sept.$6,300,000


2位はかの大種牡馬Northern Dancerの余勢の種付け料が公示価格でUS$1,000,000をつけていた頃、その仔で最後の英国三冠馬であるNijinskyの産駒である後のSeatlle Dancer(シアトルダンサー)が85年にUS$13,100,000という超破格値で取引されました。日本に種牡馬として導入されたので、お馴染みのお馬さんではないでしょうか。半兄に米国三冠馬Seattle Slew、2000 Guineas S.(GB-G1 T8f:英2000ギニー)勝ち馬のLomondを持つ超のつく良血馬でした。高額馬だとはいえ、勿論外れを引くこともままありますが、高値になった背景には「兄弟にG1馬」とか「母親がG1馬」とか「なるほどな」と思わせるだけの理由があるのも確かです。

[浮かんでくる疑念]

しかし、ここで少しだけ疑問が湧いてきます。

今回のThe Green Monkey(US$16,000,000ホースの名前はバルバドスにあるSandy Lane Hotelのゴルフ場からとられた)に関して、上では「この価格は、調教時計と祖母である米重賞4勝のNannerlに起因していると考えるしかないでしょうか」と含みを持たせたのは、敢えて言うほど素晴らしい血統というわけでもありませんし、調教時計も1F10秒を切るお馬さんというのは少ないながらも以前にもいたと思います。

[血統について]

まず、競りにおいては多くの場合「血統が値段を決める」ということが言えますし、アメリカは日本よりも生産の段階においてもその傾向がかなり強く「A級の種牡馬にはA級の繁殖牝馬を、B級にはB級の、そしてC級にはC級を」といった考えが浸透していると考えられます。かのサンデーサイレンスは米国における89年の年度代表馬でありますが、愛国心が強いお国柄であるアメリカの生産者からどうしてそんな年度代表馬クラスのお馬さんを輸入することができたのかという疑問を例にとって考えたいと思います。

サンデーサイレンスは父親はHaloであり、一般的にもさほど悪くはないと思われます。母親であるWishing WellはGamely H.(USA-G2 T9f)の勝ち馬ではありますが、それを「ポッと出」だと考えて除くと何代遡っても活躍馬が出てこないことから、牝系に関して言えばB~C級の評価と言わざるを得ないかと思われます。一方、サンデーサイレンスのライバルであったEasy Goerは、父が三冠でAffirmedと死闘を繰り広げたAlyder、母がG1を2勝したRelaxingで、祖母のMarking TimeもAcorn S.を勝つなどニューヨーク牝馬三冠で活躍したお馬さんです。ついでに言うとEasy Goerの全姉も半妹もG1馬という極めつけの良血馬でした。米国ジョッキークラブの会長であったOgden Phipps氏(G1レース名にもなった位の人物)が生産者兼馬主であり、C McGaughey師に手掛けられたという点なども非の打ち所がありません。例えばこの二頭が同時期に引退するとなると、ただでさえ「良い繁殖牝馬への種付け機会」が減ります。米国競馬ファンに絶大な人気を誇ったEasy Goerと比べられると、年度代表馬に輝きながらも「敵役」としての役割がサンデーサイレンスにはまとわりついてしまっていました。ちょうどハイセイコーに対するタケホープのような感じでしょうか。うまくいってB級、下手すればC級の扱いをうけるような、サンデーサイレンスの血統面の貧弱さは、Easy Goerと比較した場合により顕著になり、米国生産者の食指が積極的にサンデーサイレンスに動こうはずがありません。シンジケートも満杯にならずに、吉田善哉氏の手腕により日本導入に至ったことは頷けるところではないでしょうか。これを日本に置き換えてみると、ちょうど現在の日本における非サンデーサイレンス系の種牡馬がそういった状況に置かれるでしょうから、海外からのバイヤーというのは非サンデーサイレンスを狙うのがいいのかもしれない、と考えればわかりやすいでしょう。スペシャルウィークは買えないでしょうが、セイウンスカイなら買えるかもしれないと思うのは当たり前ではないでしょうか(実際は買えないだろうけど)。

アメリカは非常に競馬場自体も多いことから、重賞など一つもない競馬場はざらにあります。そして日本には現在まだありませんが(道営が試みたことがあったっけ)、Claming Raceというものが非常に充実しており、米国のレースの大部分はこの「売却するためのレース(色々な格があり、条件も違い、売却しないことも多い)」により、ある面では非常に効率的に運営されています(うまくいってないこともいっぱいあるけど)。つまりC級種牡馬×C級繁殖牝馬の産駒もいわゆる受け皿があると言えます。日本と比較しても「安いお馬さんは安く」逆に「高いお馬さんは幾らでも高く」ということが実際に起こり得る下地が整っているとは言えます。しかし、日本よりもきちんとした目(相馬眼ではなく、セリの値段などに対しての見極め)を持っている人が多いでしょうし、マーケットが強いか弱いかという差はある程度あるかもしれませんが、セリなどの取引が盛んな米国ではどういった値段帯においてもそれなりに「適正価格」というのがしっかりしていると思います。とすると余計にこの価格は納得がいきません(納得していないのは私だけだったらどうしよう)。

「血統が値段を決める」と書きましたが、今回のThe Green Monkeyの血統を見てもA級×A級だとはお世辞にも言えないと考えられます。Forestryの産駒にはCarter H.(USA-G1 D7f)勝ちのForest Dangerや、セリの後にUAE Derby(UAE-G2 D1800m:UAEダービー)を圧勝したDiscreet Catがおり、勢いはあったもののまさかNorthern Dancer級の種牡馬だとは考えにくく、この値段ではいかにも「先物買いに勝負を賭けた」という印象を受けます。結局私が言いたいのは「冷静に考えれば値段に釣り合わない過剰な投資にしか見えない」ということです。もしくは「他の理由でこの値段になったか」ですが・・・。

[US$16,000,000ホース誕生のカラクリ]

さて、この疑念を払拭できるようなタレコミをいただいた時の書き込みを振り返ってみたいと思います。

事務員A (2006/03/02 2:20 AM)
(↑フサイチネットの中の人)

素晴らしい知識、分析、文章力。「世界の合田」さんもうかうかしてられませんね。

16ミリオンのニュースは、アメリカの軍団スタッフからも届いております。今回の落札には信じられないオチがあったとのこと…

「なんと、16ミリオン!!!!!
#153フォレストリーの牡馬、母父はアンブライドルド。
1本目の追いきりで9.4秒(ここは9.8秒の間違い)をマークし、一気に注目され、馬自体もまとまったいい馬です。
もちろん、クールモアとファーガソン(モハメド殿下)の一騎打ち。
結局クールモアが落としましたが、おちがあります。
クールモアはすでに下で5Mで同馬を購入していました。昨年のキーンランドの復讐(クールモア種牡馬産駒のボイコット)も兼ね、ファーガソンが競ってきたらどんどん競り上げる戦法で、ファーガソンが降りていなければ差額はクールモアとコンサイナーで分配となったわけです。
会長が参入していなくて本当に良かったです。」

投稿でもピンフッカー(コンサイナー)の存在を指摘されてますが、これだから海外のセリは怖いです。
しかし「カモられるかも」と分かっていても果敢に行っちゃう我らが“ミスセキ”は最強かもしれませんね(笑)。
また興味深いお話、よろしくです。


この情報が本当かどうかというのは皆さんそれぞれの判断にお任せするところではありますが、ひとまずこれがガセネタではないという方向で考えてみようと思います。あと、この方は誰でも必要以上にほめるみたいです。私ごときが世界の合田に適うわけがない。さて、情報を加味した場合に考えられるシナリオとしては・・・

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上場前にCoolmore側が先にUS$5,000,000で手を付けていて、その上でセリに臨む

・Coolmore(Demi O'Byrne氏)が競り落とした場合
→先にUS$5,000,000を払っているので、後はボーナス程度の「演出料」を払う?

・Godolphinが(John Ferguson氏)競り落とした場合
→売却価格からUS$5,000,000を引いたものをピンフッカー側とCoolmore側が折半する

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といったところでしょうか。情報が正確ならば、八割がたは推測が合っているということになると思います。

前者であればCoolmoreはUS$5,000,000であのお馬さんを手に入れられるわけですし「Godolphinを競り負かした」ということで相手の面子を潰せるわけでしょう。後者であればお馬さんは手に入らないものの、余剰額が手元に残りますし、元々US$5,000,000以上の価値は無いと踏んでいたのでしょう。つまり「Coolmore側はやる気さえあればいつまででも競り上げ続けられた」ということの様です。これではオイルマネーが背後にあるMohammed殿下もどうしようもないなぁという結論になるでしょう。 これってまずいんじゃないの?って思うわけですが、こういうのって大人の世界だから普通にあるのでしょう。私が最近好んで読むDick Francis著の競馬推理シリーズの中の「Knock Down-転倒-」の中にもこういった裏での取引(この場合は代理人と生産者側との取引が書かれていましたが)というのが如実に書かれています。作家とはいえ、もともとは単なる一障害騎手(凄い名手だけど)がここまであからさまに書けるということは、こういった「裏取引」というのはどこの世界でも広く浸透していると考えることができるわけです。こういった取引については「汚いなぁ」と思うよりはむしろ「CoolmoreとGodolphinの確執の深さ」をの一端を垣間見た気がします。

[最後に]

さて、最初に書きましたが上場馬が発表されたセレクトセールが夏に行われますね。昨年でしたか、白井師がセレクトセールを無視したことを覚えていらっしゃるでしょうか。私は詳しいことはわかりませんが、その時のボイコットの理由が「正当なセリではない」といった趣旨の発言だったかと思います。大きなセリの裏側にはやはりそういった「一般人には見えない部分」があるかもしれませんし、そこでどういった取引がなされているかは想像の域を出ません。公明正大な、というとばかばかしく聞こえるかもしれませんが、我々にもわかりやすいセリであって欲しいなと切に願う次第です。でないと、将来お金を持った人が馬主になりにくいのではないかと。色々知っていらっしゃる方は、コメントを残していただけるとありがたいです。

ということで、最後はどうでもいいような結論になってしまいましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。

三冠の果てに何を見るのか。

2006-05-21 18:40:49 | 競馬
Barbaro sustains 'significant injury' as Bernardini wins Preakness(Thoroughbred Times)
「Barbaroは右後脚の球節の骨折(right hind ankle)で深刻な状態が続いています。獣医のL Bramlage氏によると『彼の生命をも脅かす深刻な怪我であり、少なくとも二箇所を骨折している。彼の競走馬生命は絶たれたと言っていいでしょう。この状況においては、我々は彼を種牡馬として救うことを試みています』」

Barbaro transported to Pennsylvania hospital; surgery scheduled for Sunday(Thoroughbred Times)
「BarbaroはPennsylvania hospitalに運ばれて、手術は日曜日の午後に行われるとPimlicoの広報が発表した。M Matz師の開業獣医であるD Dreyfuss氏によると『救急車に乗った時は落ち着かされて(鎮静剤を打った?)おり、非ステロイド系抗炎症薬を与えました。レントゲン写真を撮り、バンデージをし、抗生物質の静脈内投与を行いました。似たような症状の馬達が生き抜いていますが、Barbaroの場合は危険な状態(critical condition)であり、おそらく二度とレースに出ることはできないでしょう』」

皆さんもご承知の通り、米三冠路線の第二弾Preakness S.(USA-G1 D9.5f:プリークネスS)は平穏な結果にはなりませんでした。一番人気のBarbaroがスタート前にゲートから飛び出し、それはすぐに止められたのですが、ホームストレッチで故障発症、競走中止となりました。脚の骨折はかなり深刻なもののようですが、日本時間で今日の夜辺りに『種牡馬』としての再起を目指した手術が行われることになっています。Belmont S.(USA-G1 D12f)の後に種牡馬としての今後が決まる予定だった(記事が見つからん)はずでしたが、こうなってしまっては、後のことは考えられないでしょう。

「Darley Stableの米三冠レース初制覇」といってもまずわからない今年のPreakness S.。今後は「Barbaroが故障したあのレース」ということになるんだろうか。状況としては、Bernardiniはさながらオフサイドトラップのよう。スペル間違いが馬名になったということ(海外競馬ニュース(主に北米)さんの記事を参照)を聞いた時には思わずダイユウサクとかSquirtle Squirt、古くはスウヰイスー(合ってた?)なんかを思い出したのですが、そしてBrother DerekはSix Perfectionsを連想していただくとわかり易いか。こういうレースをきっちりモノにするA.P. Indyには何だかなぁと思わされるものの、そこが種付料US$300,000の底力ということか。

Deep Impactへの反応。

2006-05-05 03:07:37 | 競馬
GWも半ばを過ぎ、やりたかったことをぽつぽつをやり出そうかと思っています。さてさて、先日の天皇賞を快勝したディープインパクトさんなのですが、海の向こうでも結構話題になっているようです。過去の記事になっていますが、下のURLはRacingpost紙のコラムニスト(?記者?)のNick Godfrey氏が書いたディープインパクトの記事です。英語がわかる方はそのまま読んだ方がいいです。正直、今回のはニュアンスで訳してる気がするので正確性は無いです。

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Deep Impact warms up in style for Europe visit(Racingpost)

日本のスーパースターDeep Impactは(10戦して9勝目となる天皇賞・春での爆発的なレコード更新の勝利になった)日曜日のパフォーマンスの後も引き続き今シーズンの欧州遠征を予定している。Sunday Silenceの息子つながりということで言えば、過去にただ一頭だけ彼に土をつけたHeart's Cryと対戦する可能性のあるKing George、もしくは凱旋門賞の二レースが今年の欧州遠征の対象レースとして候補に挙がっている。彼は9万人もの大観衆の前で京都の名誉ある2マイルのレースを、Lincoln(リンカーン)をはじめとする日本のトップクラスの古馬陣が苦しむのを尻目に三馬身半差で「散歩」して4つ目のG1を勝利した。Deep Impactの叩き出した3.14.4はレースレコード(と同時に世界レコードですが)を丸々1秒も更新するもので、ラスト600mは「信じ難い」33.5を計時した。JRAによると、現在はDeep Impactの関係者は欧州遠征を決定した模様であり、昨年の輝かしい三冠勝利による評価に加えて日曜日の勝利により、最大限の敬意を持って扱われるはずである。常に圧倒的な一番人気で送り出され、Deep Impactは今回1.1倍で出走し、他馬をオモチャ扱いにした。

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というような内容でして、この後にもディープインパクト「恒例の」出遅れや道中での位置取りなど、レースの詳細を色々と書いていますがここでは割愛します。また、最後のパラグラフに有馬記念や今回の天皇賞において、1~3着までが全てサンデーサイレンス産駒だよ、というようなことも書き添えてある辺りが憎いですね。

さて、ディープインパクトが今年のRoyal Ascot MeetingでのPrince of Wales's S.(GB-G1 T10f)に登録したということは周知の事実なのですが、某TMのお話だと登録に留める模様です。しかし、あちらさんは意外とまだ希望を捨てていないようでして、その辺りは私の口から説明するよりもAscotの広報のえらいさんであるNick Smith氏のコメントを基にした記事を見てみましょう。

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Ascot set to host international stars(Racingpost)

Ascotの広報担当であるNick Smith氏はDeep Impactが国際的なRaiding PartyであるRoyal Ascot Meetingに来ることを期待している。日本のスーパースターであるDeep Impactは6月のRoyal Ascot Meetingの目玉となるPrince of Wales's S.と、その一ヵ月半後のKing Georgeに登録されている。Deep ImpactやSilent Witnessと共に手に余る実力を具えた香港(1頭)や豪州(3頭)からのスプリンターがChoisirの再現を狙っている。「我々が海外のスターを呼び込むことは本当に重要です。しかし、我々が既に持っているものを弱体化させないようにすることも重視しています。我々はDeep ImpactやSilent Witnessなど質の高い国際的なお馬さんを呼び込むことに挑戦し続けています。我々は気を配っているけれども、これらのお馬さん達はKing Georgeのようなレースに出るために海を渡って来ている時、ベストの状態にいなければならず、そこがまた難しいところなんです。我々はDeep Impactが来ることに望みを抱いています。AscotにはHeart's Cryや素晴らしい豪州のスプリンターも来ることになっています。余りにも「heavy pitch」になると、そこに行くことに対して逆効果になる可能性があり、絶えず種を蒔かねばならない。しかし、Ascotに来る全ての人がこの大舞台のレースに勝つことができると言うでしょう。もし、お馬さんが成功を収めた時には、繁殖馬としての価値はうなぎのぼりになるでしょう。」

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とまぁ、かなり曖昧な表現になったことは勘弁して下さい。こちらも(私にとって)意味不明なセンテンスが多かったので、英語を読むとよくわかるかと思います。この文章には広報担当者からのお世辞についても相当含まれているとは思いますが、Royal Ascot Meetingにおける3年前のChoisirの活躍は非常にセンセーショナルなものでしたし、その結果彼がUS$16,300,000という莫大な額でトレードされたことも「繁殖馬としての価値を高める」という意味では大きなことだったかと思います。逆に、2年前のRoyal Ascot Meetingには体調を崩して出られなかったExceed and ExcelはJuly C.(GB-G1 T6f)も大敗して遠征は失敗に終わりましたし、昨年のFastnet Rockも体調を崩して英国での出走すら適いませんでした。しかし、昨年のマイルから中距離戦線を荒らし回ったStarcraftやElvstroemのことは記憶に新しいと思いますし、二頭ともそのパフォーマンスによって北半球における繁殖馬としての価値をかなり高めたであろうということは想像に難くないはずです。今年はTakeover Targetが虎視眈々と狙っていますな。豪州で活躍したお馬さんのモデルケースがあるだけに、遠征に抵抗感が無いんでしょう。Nick Smith氏が言うような「繁殖馬としての価値が上昇」といっても、実際のところを見てみますと、Exceed and ExcelはMohammed殿下にAUS$22,000,000でトレードされた後の遠征でしたし、Fastnet Rockはオーナーが実質Coolmoreですし、StarcraftはLuca Cumani師が欲しがって実現した欧州移籍という面があり、純粋に「豪州人の手による遠征」で評価を高めたのはChoisirとElvstroemくらいのものでしょうけども。「北半球へのシャトル種牡馬という餌」で豪州からの遠征馬を釣り上げること(繁殖の価値云々は豪州勢に向けたメッセージなんでしょうけど)は容易ではあるのでしょうが、シャトルとしてのメリットが無い(同じ北半球だし)日本からというのはまだまだ壁がありそうな気がします。

さてさて、Japanese SuperstarであるディープインパクトのRoyal Ascot Meetingへの遠征が実現するのかどうか、ちょっと注目といったところでしょうか。個人的にはPrince of Wales's S.がど真ん中だと思っているので実現して欲しかったりはするのですが。