蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

ブラックアウト  (bon)

2018-09-15 | 日々雑感、散策、旅行

       震度7の大地震に見舞われた北海道は、あれから9日が過ぎました。地震で亡くなられた方は勿論、
         遺族の方々の悲しみと、避難を余儀なくされた方々、さらには断水、停電と共に大変ご苦労な目に
         遭われた皆様には改めてお見舞いする次第です。 震源地近くの山肌に無数の土砂崩れの爪痕の映像、
     液状化現象で崩壊した建物には、胸が詰まる思いです。

 

 今回の地震で、北海道全域が停電する「ブラックアウト」に陥りました。 幸い、昨日
(9/14)の政府発表では、なお引き続き節電に努めてほしいとのことですが、これまで
の、電力の「2割節電」なる数値目標は解除されました。
 ホッと一段落というところですが、このブラックアウトについて少し見てみたいと思い
ました。

 

 ブラックアウトには、いろんな意味があるようですが、ここでは、今回(9/6)の北海
道地震によって起こった全道停電(発電・送電・変電・配電の全系崩壊)について、おさ
らいしてみました。 1977年のニューヨーク大停電が有名ですね。

    北海道で起きたブラックアウト
       (ネット画像より)

 停電になると、照明、エアコン、冷蔵庫、テレビなどが使えなくなるほか、パソコン、
スマホなどの情報機器の電源(充電)が出来ないうえ、最近の固定電話も電話機が100vで
動作しているため使えなくなるのです。
 私の親戚が旭川にいますので、何度も電話をかけましたが、電話機の電源が入っていない
ために繋がらなかったです。 集合住宅などでは、水道もとまり、トイレも使えないなど、
殆ど日常生活がお手上げになるのですね。

 

 さて、地震は、午前3時7分に発生しましたから、電力需要は少ない時間帯で、310万kwと
あり、震度7を観測した厚真町にある苫東厚真火力発電所が、このうちの5割以上を賄って
いたのです。
 で、この発電所の発電機3基のうちの2基が地震の影響で停止して、計130万kwがストップ。
残る1基(35万kw)は、稼働していたので、道内の約半数の地域を強制的に停電させ、
あわせて本州からも約60万kwを受け、電力の需給バランスを保ち、ブラックアウトを回避
しましたが、その10数分後に需給のバランスは崩れ、道内の発電所が次々と強制切断に
入り、結果全道停電に至るブラックアウトとなってしまったということだそうです。

          

 電力は、需要と供給(発電量)のバランスが取れている状態で正常に運転されているの
です。水道のように、供給側の圧力で、配水しているのではなく、どちらかといえば、需要
側が吸い上げるような形で配電されていて、需要が急激に増加すると、供給側に大きな負担
がかかり、発電機の回転が重くなり(遅くなり)タービンの羽根が損傷するなどの故障が
起きてしまう。 これを防ぐため、自己防衛的に送電スイッチが強制的に切断される仕組み
になっているのです。
 家庭で、電気器具を一度にたくさんつけると、過電流となり配電盤のブレーカーが遮断
するのに似ていますね。

 

 需要が急に増加すると、発電機に負荷がかかりタービンの回転が遅くなり、電気の周波数
が下がり、タービンの羽根などが破損する可能性があるそうです。なので、これを防ぐため
に、強制的に送電回路を遮断して発電所を護る仕組みになっているのです。

 NHKニュース(記事)では、『 発電所を守るためには周波数を一定に保つことが重要だ。
周波数を一定に保つためには電力の需要と供給を同じ量にすることが欠かせない。周波数は、
東日本では50ヘルツが基準で、トラブルが起きても、48.5ヘルツから50.5ヘルツの間から
外れないよう、電力会社が精密にコントロールしている。
 しかし、電力供給が急激に失われると、周波数が大幅に低下し、送電線でつながっている
ほかの発電所は損傷を防ぐため自動的に停止するシステムになっているのだ。』とあります。


 停電は、地震発生後2日後には、道内のほぼ全域で解消したそうですが、これにより、
コメやとうもろこしなどの農作物や、今年豊漁のサンマなどの魚介類の輸送ができなかった
り、生乳が処分されるなどの被害のほか、多くの病院が一時、外来の受付を中止したり、
透析患者への対応に奔走するなど広い範囲に影響や被害が広がりました。

      

 電力の重要性はいうべくもありませんが、この運営は需給のバランスが保たれていること
がその前提にあり、これを維持するための工夫が取られているのです。
 供給設備(発電量)に余裕を持たせることはまず第一ですが、これには費用も掛かります
から、各発電所間の電力の相互融通によってもバランスを維持するように構成されているの
です。 電力エリア内の各発電所の相互融通は勿論、各エリア間の相互融通は、下図のよう
に行われているのです。

   電力の地域間連携線の現状
   
                           (首相官邸HPより)

 上図で、地域間連携線とは、各電力管内をつなぐ送電線です。この図には、年度が示され
てい
ませんので、数字は現状ではないかもしれません。また、この数値は、相互応援融通
可能量ではなく、一応の目安であるようです。

 

 このような電力の相互融通をみると、北海道は、ある意味孤立状態とも言えるのかもしれ
ないことが判明します。

 すなわち、小沢守氏(関西大学社会安全学部教授、現代ビジネス)によれば、
『 北海道電力は、電力10社の中でも規模がかなり小さく、発電最大出力で見れば781万kWと、
四国電力の578万kWより少し大きく、北陸電力の808万kWより少し小さい。本州・四国・九州
に位置する他の電力会社の管轄区域間は交流線で連携が取られ、特に50Hz領域ではけた外れ
に大きい東京電力、60Hz領域でも中部電力、関西電力の巨大な電力網が整備されており、
一部の発電所が送電を停止しても、容易にブラックアウトにはならない。

 北電と東北電力の間では海底ケーブル「北本連系線」によって電力の融通が可能になって
いる。しかし、今回のようなブラックアウトが起きればいかんともしがたい。長距離の交流
送電はロスが大きいため、北本連系が直流送電で行われていたこと、主として予備電力不足
対応であったことなども指摘できる。つまり北海道の電力供給は、危機事象に対して「事実
上孤立している」と考えてよいだろう。』

 更に北海道電力は、出力が小さい発電所が大部分で、最も新しい苫東厚真の4号機でも
運転開始は2002年と、すでに16年が経過しており、古いものは完成から50年に及ぶものも
あり、30年以上経過したものが大部分であるという。

 経年劣化は免れず、これまで、停止・出力抑制発生件数は2010年で52件、2011年度68件、
2012年度86件、2013年度67件、2014年度85件、2015年度109件、2016年度82件、2017年度
84件と増加傾向にあったそうです。

    

 対策として、『現在建設中の青函トンネルを通る新たな連系線(30万kW)を、交流で少な
くとも100万kW程度の連係ができるようにしたい。そして、これは北電の負担とするより、
むしろ国費を投入すべきである。日本全体の安全性を向上させる重要な施策であると同時に、
現在進められている電力自由化と発送電分離の政策からしても、今後はたとえば北海道の
太陽光や風力による電力を東京で使うことも、また逆の場合もありうる。』

 さらに、自衛手段としても『災害時に避難場所となる学校などに非常用電源設備を備えて
おき、普段から活用しておくことも重要であろう。平常時に、一見すると「無駄ではないか」
とも見えることこそが、実際に災害が発生した時には重要な安全対策となるのだ。』

などの提言がなされていました。


 長くなりましたが、全体の論調の流れの中で、運営コストの安価な“原発”が稼働してい
れば・・のような原発を評価するような響きが感じられましたが、福島で経験しているよう
に、一旦事故に繋がれば、その被害や莫大な費用がいつまでも続くことを考えれば、安易に
原発に頼るなどとの見方は避けたいものです。

 

 

 

 

 


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