蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

種子法  (bon)

2022-06-15 | 日々雑感、散策、旅行

 この法律『主要農産物種子法』は、2017年の第193国会で、半年そこそこの審議
で廃止が決定され、2018年4月から廃止されました。この当時、あまりのスピード
決議で農家など関係従事者の意見が十分に反映されていないのではないか、コメや
大豆、麦の主要作物の優良品種(奨励品種)の安定供給が出来ないのではないか、
多国籍企業に席巻されてしまうのではないか・・など数々の不安や反対意見が出て
いたことが、私の身近な人たちの間でも
問題視されていました。

          (ネット画像より)

 このことに関して、先日の新聞報道『廃止の種子法 条例で継承』(読売新聞6/12、
社会面)に目が留まりました。
『種子法の廃止後、31道県が、同法と同じ趣旨の条例を制定していたことが分かった。
同法廃止の目的は、種子事業への民間参入の促進だったが、種子価格高騰に対する
農家の懸念が条例制定の動きにつながった。』とあります。 つまり、種子法廃止
後も、31の道県で同じ趣旨のこと(種子法の内容)が条例で定められており、12の
府県では、条例はないが、要項・要領で定められているという。 何もないのは、
東京、静岡、奈良、和歌山の4都県だけということなんですね。

         (ネット画像より)

 法律廃止時に懸念されていた、種子を公的に守る政策が放棄されるとの見方から、
①主要農作物の種子の安定生産・安定供給に支障が出るのではないか、②一部企業
による種子開発や品種の独占、③「稲などの種子が多国籍企業に独占される」、④
「多国籍企業に日本の食料を支配されることにつながり、これらの企業の世界食料
支配戦略に加担することになる」、⑤「食料主権が脅かされかねない」、⑥「地域
の種子の品質向上や安定供給のシステムが崩れかねない」、⑦種子の価格上昇や
「公的資金の支えによる品種育成がなくなれば、現在300種ある各地の米のうち消える
ものが出るのでは」などの問題は、現実には生じていなかったのです。(条例など
により支えられていたから)

 種子法の廃止法案は、「既に役割を終えた」「国際競争力を持つために民間との
連携が必要」であり、種子生産に民間企業の参入を促す狙いがあり、農政の大転換
を背景として行われ、当時小泉進次郎農業部会長の農協見直し議論や、TPP、RCEP
などの背景もあり、政府規制緩和の一環として、一つの成果と見做されていたよう
ですが、実態は、そうはなっていなかったということなんですね。

 種子法は、戦後の食糧不足解消を目的に、国の統制下にあったコメ、大豆、麦の
主要農産物の種子を地方自治体の管理下に委ね普及促進を図ることとして、1952年
に制定されたのです。これにより食糧不足は解消され、1971年には生産調整を行う
まで生産量がアップしてしまいますが、このことにより各都道府県は地域独自の質
の高い奨励品種を生み出し、「ササニシキ」や「あきたこまち」などのいわゆるブ
ランド米が誕生したのでした。

           (ネット画像より)

 種子(タネ)について少し、述べてみますと、
『そもそも、農家が自ら生産した作物から種子を採取することはもちろん可能ですが、
この「自家採種」を何代も続けると、品質は少しずつ劣化するのです。良質な種子
を育成するためには、農作物の栽培とは別に、種子のための育成をする必要があり、
膨大な手間と費用が必要で、1つの品種を開発するのに約10年、増殖には約4年かか
るといわれています。(ものによっては、20年もかかるとか・・)

 種子法は、こうした優良な品種を安定的に生産・供給するための法律であり『品
種改良や新たな品種の開発を定めたものではないが、各都道府県では、冷害に強い
品種や、よりよい食味を追求した品種の開発に、公的種子事業の一環として独自に
取り組んできた。』とあるように、この法律が廃止されれば、公的資金の裏付けが
なくなり、種子は高騰する上、企業側の利益追求による品種縮小や遺伝子組み換え
手法でより効率的な栽培種の出現が起こるのですね。

             

 長くなりますが、『種苗法』というのがあります。 1998年に改正された種苗法
は、植物の新たな品種(花や農産物等)の創作をした者は、その新品種を登録する
ことで、植物の新品種を育成する権利(育成者権)を占有することができるという
もので、特許権や実用新案権の仕組みとよく似ています。
 つまり、植物の著作権のようなものですが、植物の新種の開発にはそれ相当の工
夫と長期間を要しているわけですから当然ですね。 イチゴやインゲンなどの品種
が、海外に流出し、販路が妨害されるという事態が起こっているのです。これら新
品種の流出を防いだり、登録品種の利用にあたっては許諾(許諾料を含む)が必要
とする意義は十分に考えられるところです。むしろ、遅きに失した・・感があるく
らいだと思います。

 しかし、この種苗法が2020年に改正されるにあたり、賛否両論の大きな反響があ
りました。この時の改正ポイントは、①農家による登録品種の「自家増殖」に育成
者の許諾が必要になる ②育成者は登録品種を許諾なく輸出できる国や栽培地域を
指定できる であり、特に①の自家増殖時に育成者の許諾が必要という部分で、賛
否が分かれているのです。

         (ネット画像より)

 つまり、農家が、例えばジャガイモやイチゴなどを収穫物を使って「自家増殖」
する場合にも育成者の許諾(つまり使用料を負担する)という部分です。
 1978年には、、自家増殖を認めない植物は、挿し木等により容易に繁殖するキク
等の花卉類やバラ等の鑑賞樹 に限られていたのが、1998年には23種にさらに2020年
にはその対象品種は396種に大幅に増加し、みじかな野菜なども対象となり、農業者
の自家採種の権利は抑制される傾向にあります。

 自家増殖するたびに、許諾(料)の手続きがいること、費用が発生することなど
が反対の主な理由ですが、これは今までの慣例がむしろ放任状態であったとも思え
ますがどうなんでしょう。
 野菜などの種子は、9割が海外産で、ほとんどがF1ですから、毎年タネを買う必
要があり、それに合わせた肥料や農薬など、すでに長い目で見ると問題と思える流
れになっているのですね。

                

 記事の内容の割には、長文となりましたが、種子法、種苗法それぞれが持つ意味は
深く、この問題をもっと広い立場から議論すべきと思いました。

 

 

 

【BS日本・こころの歌】麦の唄 − FORESTA

 

 

 

 


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