蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

宇宙の謎 解明に挑む  (bon)

2014-01-07 | 科学・生物

     (ちょっと長めで、申し訳けありません。

 宇宙には、我々の住むこの地球と同じような星“第2の地球”は存在するか? 
宇宙で出来た最初の星(一番星)を見ることはできるか? 
宇宙の暗黒時代が終わり“宇宙の夜明け”を迎える様子を直接見ることができるか?

 このようなワクワクする発見を目指して、世界中の天文学界で挑戦が続けられています。 これは他でもなく、
望遠鏡開発の歴史でもあるのです。
 

 お正月号として届いた会報に、14ページにわたる講演記録が掲載されていて、大変興味深い記事でしたので、
大胆に端折りながらここにアップさせていただきました。

 講演は、“次世代超大型望遠鏡TMTで見る宇宙” と題して、国立天文台教授・TMT推進室長 家正則氏が
昨年7月に行われたものです。(氏は、H23年秋に紫綬褒章受章、昨年度日本学士院賞に輝く。) 
 以下には、この講演記事の順を変えて、抜粋しながら私見も入れて記述させていただきました。

 

 TMTとは何か? Thirty Meter Telescope の略。 なんだ、そうか!

で、これまでで最大の、直径30mの超大型望遠鏡を開発するというのです。 日本、アメリカ、カナダ、インド、中国の
参加で今年(2014年)着工、2021年完成予定の国際プロジェクトです。 建設場所は、ハワイ島マウナケア山頂。
この山には既に “すばる望遠鏡” はじめ “ケック望遠鏡”、“ジェミニ望遠鏡” などが立ち並んでいるところです。

 直径30mの望遠鏡というのはどれくらい大変なものなのか? 
今から15年前に試運転を開始した当時世界最大の日本の “すばる望遠鏡” の直径は8.2mでした。
 この開発は、夜間の冷気等で反射鏡のガラスが縮んで変形しないよう、膨張率ゼロの特殊ガラス製でなければならず、
当時そのようなメーカーは世界に2社しかない。 その1社で製造可能なゼロ膨張ガラスは、直径2mなので、
これを44枚張り合わせるという作業で作り上げたという。

 しかし、これら44枚のガラス1枚1枚に若干個性があって、変形を最小にする組み合わせは、
すべての組み合わせが10の62乗通りもあり 不可能なので、その内の10万通りを選んで計算により
もっとも歪が少なくなるように並べて、さらにこれを研磨する方法がとられた。
研磨は、鏡が単純な球面ではなく、“回転双曲面” という非球面で、わずかな凸凹を測り、凸の部分を少しずつ
磨いて行く方法をとるが、万一凹の部分を磨いて深くしてしまうと、その分だけ全面を磨きなおさねばならなくなるので、
細心の注意を要し、かつ忍耐強く研磨を続けるという作業です。 また、研磨の際に、生活振動や風や日照などで
揺れたりすることの無いよう、地下37mのところに専用の設備を用意したそうです。 
で、研磨作業は4年も続いたとか。
これをハワイ島マウナケア山頂まで運搬するのも大変だったと・・。

 

 望遠鏡がシャープな画質で観測できる、すなわち “視力を上げる” ために、3つの工夫が施されている。 
その一つは、観測中の鏡の歪を除去する工夫です。 重さ23t の鏡を261本のコンピュータ制御の支柱で、
常に歪の無い形状を保持できるようにされている。 各支柱には平均90kgの重さがかかる計算となるが、
この時わずか1gの変化も見逃さない精度を保つのです。 
仮にこれを体重計とすれば、飴玉1個をなめても発見されるという精度だそうです。

その二つは、温度変化への対策です。  ガラスは気温より遅れて冷えてくるので、夜間、外気が下がり
鏡の方が温かくなると “陽炎” が立ち、測定データの精度が落ちてしまう。従って鏡の冷却を実施されている。 
三つ目は、大気の揺らぎで乱れる天体からの光を補正するハイテク技術です。 新開発の “補償光学装置” により、
波面センサーで光の揺らぎを測定し、瞬時にこの光の揺らぎを打ち消す方式です。 
これにより、すばる望遠鏡の視力は10倍改善されたそうです。

 (20年ほど前、若くして急死された後輩の天文学者、磯部三さんを三鷹の天文台に尋ねた折、そこの天体望遠鏡を見学している時、“観測中は人の出入りは禁止なんです”といっていたことを思い出しました。途中で人が観測室に入ってくると風や温度の微妙な変化が観測を妨げるというのです。)

 

 この、すばる望遠鏡と1990年に稼働した “ハッブル宇宙望遠鏡” の性能を比較してみると、
ハッブルの主鏡は 直径2.4mで、すばるに比べて小型です。 しかし、ハッブルは宇宙に浮かんで観測するので、
大気や天候の影響を受けないのでその分有利といえます。 で、約40億光年の彼方にある銀河団をハッブルが
70分間、すばるが60分間露出して得た画像には、どちらも28等星まで捉えていて、その能力はほぼ等しい
ことが分かりました。 
しかし、鏡の直径が大きいすばるはそれだけ集光能力が勝っているため、より多くの期待が持てるのです。

 このように、天文学の興味は、さらに遠い銀河の発見、観測に向けられています。 
遠くにある銀河からの光が地球に届くまでに、空間が揺らぎ、光の波長も長くなる性質があるため、
本来の光は紫外線なのに地球に届く頃には赤外線の波長に変化してしまうのだそうです。
この現象を “赤方偏移” といい、赤方偏移の値が大きいほどその銀河は遠方にあるということになります。
そして、これを実現して行くのは、望遠鏡の主鏡の直径を大きくすることと、種々の補正装置の開発なのですね。

 

 すばる望遠鏡の観測チームは、赤方偏移4.8(124.1億光年)や、5.7(126.5億光年)、6.6(128.2億光年)と、
どんどん遠くの銀河まで発見して行くのです。 
2004年には、15時間撮影した41,533個の銀河の中で、ただ1つ目的の銀河、赤方偏移7.0を発見した・・とあります。 
当時、人類が見つけた最遠銀河なのだそうです。

 その後、次々とギネス記録を塗り替えて、2010年には赤方偏移7.215(129.1光年)の再遠方銀河の
世界記録保持者となったのです。

 ここで、興味深い図を転写させていただきました。

 (会報から転写しました。) 

 137億年前、宇宙は高温・高密度の火の玉状態 “ビッグバン” により始まり、その後、急激な膨張により、
図に示すように38万年後には約3000度にまで冷え、以降9億年頃まで中性水素原子と暗黒物質が主成分である
冷たい宇宙の時代 “暗黒時代” が長く続くこととなるのです。
その後、約3億年(赤方偏移14)~9.5億年(赤方偏移6)の間に宇宙再電離現象が起こり、これを
宇宙の夜明け” ともよばれる現象へと移って行く・・。

 2021年完成予定の “TMT望遠鏡” は、“すばる望遠鏡” に比べて、集光力13倍、解像力3.6倍、
効率感度180倍になるので、32等星、赤方偏移17 まで観測可能と想定されています。
 これにより、近い将来地球と同じように、暑すぎず寒すぎず、水が存在し、生命の居住が可能な“第2の地球”を
発見できるかもしれない。  また、TMTでは、赤方偏移17(134.4億年前)の宇宙まで観測可能と想定されていて、
“宇宙の夜明け” を迎える様子をより詳しく直接見ることが出来るかもしれない。 さらに、宇宙の構成要素の
70%弱を占めるという “暗黒エネルギー” の性質の解明に迫ることができるかもしれないという。

そんな壮大なことを目指して・・研究が進められているのですね。

            お疲れさまでした。

 

 

 

 

 

 


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