サイボーグといえば、私などは、すぐに映画、シュワちゃんのターミネーターをはじめ
数々のSF映画を思い浮かべます。 映画の他、小説、漫画、テレビドラマ、アニメなど
かなりたくさん出回っています。その昔の「仮面ライダー」などはその走りだったのかも
しれません。
しかし、ここでは、映画やドラマの話をするのではなく、サイボーグ技術というのは、
そもそもは、医療分野などで開発され、今日、多くの実績を上げ、さらに進化し続けて
いるお話を、一部ですが取り上げてみました。
サイボーグ(cyborg)とは、ウイキペディアによれば、『サイバネティック・オーガ
ニズム(Cybernetic Organism)の略(造語)で、生命体(organ)と自動制御系の技術
(cybernetic)を融合させたものを指す。 具体例として、人工臓器などの人工物を
身体に埋め込むなど、身体の機能を電子機器をはじめとした人工物に代替させたものが
ある』
つまり、人体と機械を電気電子技術を用いて結合し、一体として機能する有機体である
といえるのです。 電子技術は、情報技術、コンピュータ技術と融合し、IoTやAI等の
発展と共にますます進展していますから、サイボーグ技術は、人体機能を捕捉、補助する
ばかりでなく、機能的に拡大、拡張できる技術でもあるのですね。
現在、サイボーグ技術と呼ぶことができて、実用化に達しているものには、ペースメー
カーや人工心臓、筋電義手、人工内耳、人口眼(眼球・網膜・視神経などの代替)などが
挙げられるのだそうです。
(ネット画像より)
サイボーグなる概念は、1960年にアメリカの医学者が提唱した概念で、当初は人類の
宇宙進出と結び付けて考案されたものだったそうです。しかし、SF小説などでは、この
ようなアイデアはあったとのことですから、空想的にはやはり相当進んでいたのかもしれ
ません。
ちょっと横道にそれますが、似た言葉に「アンドロイド」がありますが、これは、いわ
ゆる「ヒト型ロボット」で、人間の姿に似せたロボットでありサイボーグではないのだ
そうです。 映画「ロボコップ」は、人間をベースに改造しているので、サイボーグです
が、「ターミネータ」は、人間としての主体を持つ存在ではないから、厳密に言えばサイ
ボーグではなくアンドロイドなんだそうです。 ま、どうでも良いですが・・。
ついでに、サイバネティクス( cybernetics)は、人工頭脳学ともよばれ、通信工学と
制御工学を融合し、生理学、機械工学、システム工学を統一的に扱うことを意図して作ら
れた学問で、戦後提唱されて来たそうです。 日本では、ロゲルギストの集まりがこれに
刺激を受けて来たとあります。
前置き的な話が長くなりましたが、サイボーグ技術について手元の会報に、横井浩史氏
(電気通信大学院情報理工学研究科教授)の記事に、人と機械の相互通信を実現する技術
について、主として運動機能補助と代替技術について述べられていますので、その一例を
参考にご紹介します。
例えば電動義手については、1960年代から急速に発達しており、先端的な情報処理の
研究成果では、『前腕筋群を対象とした筋電図解析により、手首のみならず五本指を制御
できる』とあり、多自由度ロボットハンドの開発を進め、周囲の環境ノイズや汗などの
影響を考慮した実用的なロボットハンドが開発されているという。
筋電義手は、ハンド、アーム、コントローラ、筋電センサ、電源システム、断端部ソ
ケット、装飾用手袋より構成され、日常生活の物体操作ができるのです。
(ネット画像より)
手指機能は、十六動作に整理され、握力把持、精密把持、側方把持の動作によって、
日常生活動作の85%を賄うことが出来るそうです。 運動意図を反映した生体信号の計測
及び識別は、コントローラにより実現され、周波数解析された筋電図に対して学習機能を
備えた個性適応制御法によって ハンドを制御するとあり、この他、皮膚と接触する電極
には、導電性シリコーンが使用され、装飾用手袋は、超弾性素材を用いるなど、物体に
対する密着性向上や義手骨格保護など数々の工夫が凝らされているのですね。
先日の「チコちゃんに叱られる」(NHK番組)で、ボタンを見ると押したくなる、や
掴もうとする対象に合わせた握力(力加減)で握ったりする人の特性があり、これを『ア
フォーダンス理論』と呼ぶと解説されていましたが、確かに、紙のコップを掴む時と、
グラスを持つときとではその握力は自動的に違っていますよね。 このように視覚と連動
した動作も、サイボーグ技術に取り入れられているのでしょうね。
専門的な技術はかなり深いところにあると思いましたし、これからの技術進歩と、人々
の飽くなき欲求から、サイボーグ技術はますます高度化、広範囲化すると予想されます。
横井氏の結びの部分にも、『一方で、強力なサイボーグ技術は、テレビの向こうで起
こっている時は娯楽だが、もしも現実の世界で他者が所有すると、それは自身にとって
大きな脅威となり、大きな恐怖心となる。』と。 そのように考えると、この分野も恐ろ
しい種になる可能性が十分にあるということなんですね。