【Fuku】
去年あたりからですが、"大人のロック"というフレーズを全面に押し出したオジサンが喜ぶような音楽雑誌が結構目立つようになりました。中身を見てみるとマア大体似たようなもんで、ビートルズ(1966年以降)、レッド・ツェッペリン、クリーム、サンタナ、ちょっと新しくてエアロスミス、キッス、チープトリックという感じの当時の若者達が熱狂した懐かしいロックミュージシャンの当時と今を語るみたいな内容が殆どで、結構知ってることばかりであまり見るべきところがありません。そもそも"大人のロック"てカテゴライズしてるけど、取り上げているのは当時の若者達のロックであって、当時の大人には見向きもされなかった音楽ですから、このネーミングはちょっと違うのでは、と思ってしまいます。"大人が懐かしむ当時の若者達のロック"というのが正しいネーミングじゃないかなあ。
ただ、やはり大人が好むというか大人に受け入れられるロックというのが存在することも事実であり、そういったミュージシャンばかりにスポットをあてた雑誌であればまさに大人のロックなんですがね。売れないだろうけど。
さしずめ、この人なんかはアメリカでは長く大人の鑑賞に堪えうるロックシンガーでありソングライターじゃないかなあ、と思う"John Hiatt(ジョン・ハイアット)"の代表作、1987年リリースの「Bring the Family」を持ってきました。
John Hiattは1952年のアメリカインディアナ州生まれで、1974年デビューですから、もう30年以上のキャリアを誇るベテランです。でも日本ではあまり知名度が無くて、何度か来日もしてるけど、一部の熱狂的ファンのみの間で話題になっただけであまり脚光が当たらないのですが、アメリカでは所謂玄人受けというかプロの間では非常に評価が高く、"ミュージシャンズ・ミュージシャン"として高く評価されている人です。
この彼にとっての8枚目のアルバムでは、なんといってもその参加メンバーがスゴイのでまずは話題になったのですが、ギターにライ・クーダー、ドラムにジム・ケルトナー、ベースはニック・ロウという恐るべきサポート陣、しかも、わずか4日間のレコーディングという殆どが一発録りという緊張感ある演奏、百戦錬磨のベテラン揃いならでは非常に高いクオリティを聴かせてくれます。この4人は、このアルバムの後3年後に"Little Village"というスーパーバンドを組んで、アルバムを一枚だけリリースしてファンを驚かせましたが、このJohnのアルバムがその伏線にあることは言うまでもありません。
まさにアーシーな大人のロック。彼はは名曲をコンスタントに作り続けている人ですが、このアルバムは本当に粒ぞろいのいい曲満載。特にトラック4「Lipstick Sunset」のライ・クーダーの美しいスライド・ギターに泣かされます。
また、、ミュージシャンの間での評価の高さを証明するかのように、このアルバムのトラック1はグレッグ・オールマン、トラック3はボニー・レイット、トラック5はジュエルのカヴァー・ヴァージョンもあり、このアルバムがJohnの代表作であると共に、アメリカではプロの間でも高い評価を受けていることがよく判ります。
日本でももっと売れてもイイのではと思うのですが、やはりこういう大人のロックの王道を往く人ってのは、あまりポピュラーになり過ぎないほうが我々にとってはイイのではって思います。
アルバムジャケットもイイですねえ。
Bring the Family John Hiatt 1987/5/29
A&M Records CD 5158