【Fuku】
ちょっと旅に出てました。まあ仕事絡みですから純粋な「旅」ではないんですが、それでもなにか非日常を体感することは気分的にもリフレッシュできますね、私の場合。
もうとっくに取り上げたと思ったら、まだでした、の20世紀が生んだアメリカ最大の旅人ことWoody Guthrie。アメリカという広大な国をステージに人生そのものを「旅」した20世紀が生んだ最大の旅人の業績の一端を今回はご紹介。
ウディ・ガスリー(本名ウッドロウ・ウィルソン・ガスリー)は、1912年オクラホマ州の田舎町オキーマに生まれた純粋なる"オーキー"で、彼の育った小さな町は、何度となく砂嵐や竜巻に襲われ、彼の家も竜巻によって飛ばされたことがありました。近隣の人々は皆、苦しい生活と気候に耐え切れず、家を捨て、ゴールドラッシュを夢見て西海岸をめざしてあての無い旅に出て行き、ウディの実家も1930年代に入り大不況の影響で家を失い、家族は離散してしまい、ウディは一人親戚のいる西海岸を目指して、一人カリフォルニアへの旅に出ます。そして、この時から彼のホーボー(Hobo)生活が始まります。
ホーボーとは、働きながら汽車を使って(無賃の場合もあり)移動していく労働者を言うのですが、街から街へと移り住んでいく「旅」が人生そのものとなってしまった人々のストレートな感情や不当に受けた差別や偏見にザクッと切り込むウディの歌は、このホーボーとしての生活が基盤となっていることは言うまでもありません。
ウディはもともとはカントリーソングの歌い手としてデビューし、当時の地域のラジオ放送では結構人気を博して、その噂を聞きつけた大手のラジオ局のオーディションを受けて、メジャーデビューできるところまで行った位だったのですが、生来の反骨精神からか、自らそのチャンスを捨ててしまいます。彼は、何物にも束縛されることなく自由に歌うことを選択します。厳しい労働環境と低い賃金に苦しむ人々のために抗議の歌「プロテスト・ソング」を歌い、病に倒れるまでその強固な姿勢を貫き通しました。
40年代中期にはニューヨークで同じ志を持つピート・シーガーや黒人ブルースシンガーのレッドベリー、シスコ・ヒューストンやサニー・テリーらと知り合い"オールマナクシンガーズ"と呼ばれるフォークソングのコミュニティを作って、自分達の主義主張を歌にのせて庶民に浸透させていくという活動を実践したのですが、その頃から既に彼は病魔に犯され始めて、旅に出ることも出来なくなり、ついには若くして永遠の旅に旅立ってしまいました。
ウディがベッドで闘病生活をおくっている時に病院を訪れたボブ・ディランをはじめとして、数多くの"ガスリーズ・チルドレン"と呼ばれるウディの信奉者や彼の意思を継ぐ次代の若者達にそのソウル(魂)を残していったことは、そんな若者たちの動きに象徴されるフォーク・ソングへの関心が、60年代初めのフォーク・リヴァイバルムーヴメントを盛り上げたことからも、いかにウディの業績がアメリカという国に与えた影響が大きかったということの証であると思います。
今回の2枚はウディが残した40年代のパフォーマンスの中でも純粋なるフォークソングを数多く取り上げた「Sings Folksong」シリーズの2枚で、彼のオリジナルだけでなく、彼が好んで取り上げていた30年代40年代の庶民が歌っていた、あるいは流行っていた歌を取り上げています。
私はこのレコードを高校1年生の時にお茶の水の"ハーモニー"という輸入盤専門のレコード屋で買いました。店のご主人に、「コレいいよ。」と一言ポツリと言われたことをいまだによく覚えています。
偉大なるアメリカの偉大なる「旅人」、今の時代だからこそ忘れてはいけない"巨人"であると思います。
Woody Guthrie Sings Folk Songs
Woody Guthrie
sideA
Hard Traveling
What Did the Deep Sea Say?
The House of the Rising Sun
900 Miles (Instrumental)
John Henry
Oregon Trail
We Shall Be Free
sideB
Dirty Overalls (My Dirty Overhauls)
Jackhammer John
Springfield Mountain
Brown Eyes
Boll Weevil Blues (Boll Weevil)
Guitar Blues (Instrumental)
Will You Miss Me?
Folkways Records - FW2483 1964
Woody Guthrie Sings Folk Songs, Vol. 2
Woody Guthrie
side A
Keep My Skillet Good and Greasy
Talking Hard Work
Whoopee Ti-Yi-Yo, Get Along Little Dogies
A Picture from Life's Other Side
Hen Cackle
Danville Girl
Put My Little Shoes Away
sideB
Sally Goodin'
Hard, Ain't It Hard
Poor Boy (Coon Can Game)
The Wreck of the Old 97
Take a Whiff on Me
Bed on the Floor
Buffalo Gals
Going Down the Road Feeling Bad
Folkways Records - FW2484 1964