昨日に続いてもう一つ"ハンプ越え"ジャケットです。こちらはD-1で同じくハンプ越えルートを飛んでいた専門部隊(企業)"ICWATC"の乗員のジャケットを復刻したカスタムです。D-1は普通は地上の整備士が凍える夜間の機体整備作業に着るジャケットでしたが、一部には飛行機の乗員でも機上で様々な作業に従事するため防寒が必要な乗員にも支給されました。このジャケットは輸送機に乗って、着陸できないような山間部の要所に機上から荷物を落とす"キッカー"と呼ばれた乗員が着ていたものだそうです。
背中にはCBI戦線のカスタムジャケットの一番の特徴である革クラフト製のブラッドチットがついています。フライトジャケットのカスタムを語る上で欠かすことの出来ないのが「ブラッド・チット」の存在ですが、直訳すると「血統書」となる「ブラッド・チット」は当時「レスキュー(救護)パッチ」等と呼ばれており、その名前が示す様に、乗員が墜落した際に英語の通じない現地民に身分を証し、救護を求めることを目的として乗員のジャケットの表や裏面に後付けされていました。その内容は中国語で「戦い援護するために中国へ来たアメリカ人です。私を救護してくれれば政府が報奨を与えます。」と記されていました。
まあ、この辺はCBI戦線について書かれた文献ならば常識的に出てくる事項なので、あまり深入りしませんが、このD-1は普段は地味めなD-1をもうこれでもかあというくらいのフルデコレーション・カスタムしたジャケットで、ブラッドチットは前身頃の裏にもポケット代わりに縫い付けられており、西洋のフライト・ジャケットと東洋の神秘的な世界が融合したこのジャケットは、独特のオリエンタルムードが漂いより魅力的なジャケットとなっています。
そうそう、ラクダのスタンプと5の文字はハンプ越えを飛んだ回数を示しています。
実際には、ちょっとブラッドチットが表についているジャケットを外で着るには勇気がいるのですが、結構見た目よりも軽くて重宝しています。コーティングがハードなので最初は腕が真っ直ぐで曲げてもすぐに元に戻ってしまうほどの形状記憶ジャケットでしたが、ようやく身体に少し馴染んできたというところで中断、その後でしばらく着てないです。いかんですなあ。