

【Fuku】
毎年ですが、春の訪れを感じると聴きたいというか行きたいライヴがあります。以前にも72年のやつを紹介しましたが、70年代の日本語のロック・フォークの確立においては重要な役割を果たしたコンサート「春一番」、関西のイベンターの草分けともいうべき福岡風太氏が手がけた、数多くのアーティストが一同に会する謂"対バン"型コンサートでは一番成功した(興行的にというわけではないですが)と言われる伝統のコンサート。最初が71年でしたが、79年までは大阪天王寺の野外音楽堂で開かれ、その後16年間の沈黙の後に1995年に大復活、昨年の2006まで復活版11回を含めて20回の開催を数える、その筋の方々にとっては春には切っても切り離せないイベントとして定着しています。
今回は、その代表作とも言える74年のライヴを収録したオリジナル盤をもってきました。74年5月4,5日、入場料は前売りで800円、当日1000円で、朝から夜まで延々自分達のペースで楽しめるコンサート、今はこういったイベントを開催することは
殆ど無理でしょうね。場所も貸してくれないし。
私は、この時はまだ春一番は見たことがなくて、伝説とも言うべき72年、それに続き数々の遺恨を残した73年の素晴らしいステージの模様を当時の雑誌や実際に参加した人から見聞きして、絶対に参加したいなあ、と思っていたのですが、やはり諸事情により断念、とあれば絶対にライヴ盤だけは手に入れようと、せっせと貯金して買ったのがこのオリジナル盤、なんと当時としては採算というかビジネス的な考えは全く度返しの2枚組、お値段も確か3600円ぐらいでかなり高かったのですが、なんとか手に入れた時はうれしかったなあ。
その後、再編集盤やCD化された再編集盤も何度か出ていて、大体は買い揃えてますが、ジャケットはこのオリジナル盤のが一番気に入っていて、まさに今となっては家宝ともいうべき超貴重盤となりました。
この74年のステージで最大の聞きモノは、なんといっても今年還暦を迎えてもますます現役の最古のロッカー"遠藤賢司というかエンケン"のギター一本かき鳴らしての名曲「踊ろよベイビー」に尽きます。このステージの前日に若気の至りで大立ち回りを演じて、足を骨折、顔は包帯だらけで登場し、唄えないのかと思ったら、突如始まったパワー全開の大パフォーマンス、ギター一本が生み出すモノ凄いグルーヴ、これぞロックンロール、まさにエンケンの真骨頂を示す伝説のライブと言われています。
今も現役で怪しいパワー全開の"中山ラビ女史"のグルーヴたっぷりの「夢のドライヴ」、この2曲は一昨年にリイシューされた再編集盤には入っていないだけに貴重な音源です。日本最古の本格派シカゴブルーズヴォーカリスト"布谷文夫大先生"の超貴重なライブ音源「夏バテ」の超シャウト、あとは、以前にも紹介した日本が誇る本当の歌姫(ディーヴァ)"吉田美奈子女史"の初々しいデビューステージとも言える名演「週末」、そしてすでに当時でも御大の貫禄たっぷりの"高田渡"氏の余裕たっぷりの「生活の柄」、最後を飾る関西では当時絶大なる人気を誇っていた"ザ・ディランII"の「男らしいってわかるかい」(Bob Dylanの"I Shall be Released"のカヴァー)の大合唱で大団円を迎える最高の選曲。
このアルバムは2枚組なので見開きのジャケットなんですが、中ページにはこの2日間の出演者をはじめ、会場に集った若者達の様子を撮影したモノクロの瑞々しい画像が一杯に溢れていて、当時の若者達の格好良さ(そんなに格好イイ人はいないんだけど)、を表現しています。今見ると、懐かしさだけでなく、当時のアグレッシブな若者達を羨ましくも思います。
「春一番ライブ'74」
1枚目
side A
1. わたしの自転車 / Jam
2. 淋しい気持で / なぎらけんいち
3. 夢のドライブ / 中山ラビ
4. 夏バテ / 布谷文夫
5. 週末 / 吉田美奈子
side B
1. 神田橋 / 林亭+林宏
2. ものもらい / 高田渡
3. 蛙の歌 / 高田渡
4. 生活の柄 / 高田渡
5. 踊ろよベイビー / 遠藤賢司
2枚目
side A
1. 中耳炎 / 中塚正人
2. 夕暮れ時に / 朝野由彦
3. 水を一杯 / いとうたかお
4. 悲しみの季節 / 金森幸介
5. Come To My Bedside / 中川五郎
side B
1. 悲しみのセールスマン / ザ・ディランII
2. 俺達に明日はない / ザ・ディランII
3. 女王様の恋 / ザ・ディランII
4. 男らしいってわかるかい / ザ・ディランII
春一番ライブ'74 ,OFW17~18, KING Bellwood Records, 1974