

今回は暑い中にまた暑っ苦しいほどの粘っこいブルーズを一発。ということで、おそらく私が知る限りでは日本におけるアコースティックギターで奏でるブルーズでは最初の本格的な歌い手だと思う、シバ(三橋誠、現在は三橋乙揶)の最初のアルバム「青い空の日」です。これはアナログも持っていますが、今回は1995年のCD再発のやつです。
シバはもともとは漫画家永島慎二氏に師事した漫画家で、歌よりも絵の才能のほうが先に頭角を現してきたのですが、もともとクラシックギターが好きで小さい頃からギターに触れていたそうで、その才能が開花したのが、京都でかの高田渡氏と出会い、吉祥寺に流れてきて自分でギターを弾いて唄うことに刺激を覚えてからで、吉祥寺のフォークシンガー達で結成した"武蔵野タンポポ団"で中核メンバーとして活躍した頃から、日本では最初の本格的なブルーズを唄えるシンガーとして知られるようになりました。
シバは、ブルーズでも所謂ミシシッピ・デルタ系の非常に泥臭いカントリーブルーズとかフォークブルーズのレコードを聞き込んで、ブラインド・レモン・ジェファーソンとかビッグ・ビル・ブルーンジーとかサンハウスとかのギターの奏法を、そのテイストまで含めて完全にマスターし、アコギター一本で弾く強烈なジャックナイフのようなブルーズのフレーズに日本語の鋭い歌詞を乗せるという当時として非常に珍しいスタイルのシンガーで、彼が先駆者ならば、その後に続いた"憂歌団"なんかがこうしたスタイルを日本に定着させたと言えるでしょう。
彼の声はまだ独特のブルーズに相応しいしゃがれ声で、このレコードを製作した若い時から、現在においてもその声質が変わらないのは驚きです。最近は、高田渡氏のカバー集「シバ、高田渡を唄う、毎晩夜通し起きていて」とか最新のライブアルバム「LIVE 新宿発・謎の電車」をリリースして、ますますその日本語ブルーズに磨きをかけた素晴らしい作品を送り出しています。
この「青い空の日」はジャケットを見てもらえると詳しい人は一発でわかると思いますが、ここでもよく紹介しているアメリカの良心と言われるフォークソングとかブルーズ、カントリーの名盤を世に送り出している"フォークウェイズ"のレコードジャケットのスタイルをそのまま真似ています。当時はコレは非常にコアなファンの間では話題になりました。
最後の一曲「私の青空」の素晴らしいギターとカズー(ジャグバンドがよく使っていた楽器)の掛け合いは非常に耳に残ります。
日本のフォークの中では非常に異端に属するアルバムですが、永遠に残る名盤だと思います。
青い空の日 シバ
Originally Released in 1972 as URC Record URG-4011.
Reissued for CD in 1995 TOSHIBA EMI LIMITED as TOCT-8959.