庄司利音の本棚

庄司利音の作品集
Shoji Rion 詩と物語とイラストと、そして朗読

詩 「 脱出ロケットに乗り遅れたから 」

2016-02-21 14:22:22 | 
   詩 「脱出ロケットに乗り遅れたから・・・」





脱出ロケットに乗り遅れたから
わたし、ひとり、置いてきぼり

お父さんも お母さんも
バイバイって 行っちゃった

死にかけの魚の目玉のなかで
小さくなった二人が手を振ってたわ

あれは、誰?
ほんとは誰だったの?

気が付いたら、お父さんだったし
気が付いたら、お母さんだった
そのはずだったけど・・・

脱出ロケットに乗り遅れたから
わたし、ひとり、置いてきぼり

言葉なんて、なんにも意味が無くなったわ
嘘をついても、
だあれも傷つかないし、悲しまない
誰もどこにもいないから

言葉なんて、なんにも意味が無かったわ
わたしの気持ちは
誰にも届かないし、刺さらない
誰もどこにもいないから


そうね、いいわ!
わたしだけに降る雨!
わたしだけに吹く風よ!

わたしのために
わたしがいるの!

宣言!
わたしはこの星を爆破します!
時限爆弾は今から3分後

よたよたと飛ぶ羽虫だわ
あれを見失った直後みたい・・・

バチンと潰せるはずだったのに
こんなはずじゃなかったって
わたし
バグッと胸が止まったわ

これって、こういう結末なの?
これってこういう結末なんだわ・・・

舐めてた飴が、ずるんと喉に落ちちゃった


すっぽ抜けたスニーカーが飛んでって
ほら、放物線のその先に
置いてきぼりにされた私が落ちてるわ
わたし、バイバイッて 手を振るわよ!
バイバイって、ほら
力いっぱい、手を振るわ!

ほら、
こっち、
見てよ!

わたし、ひとり、置いてきぼり
わたし、ひとり、置いてきぼり

真っ白だわ
ギラギラの太陽に向かって目を閉じたときみたい・・・