Tさんの葬儀は異例だった。
喪主であるご主人が挨拶で医者を非難したのだった。
最期の尊厳のため、Tさんは抗がん剤、制癌剤のたぐいは打たないでくれと頼んだにも拘らず、
医者はそれを無視したというのだ。異例の喪主挨拶であった。
世の中、『だます人とだまされる人の2種類である。』
医者も『金儲け主体の医者と患者を助ける事を本分とする医者の2種類である。』
喪主挨拶を聞いてそう思った事だった。
Tさんの葬儀の時、死ははるか遠くで他人事のように思えたものだったが、
今死は私の周辺に漂っている気がする。
死ねばどうなるのか?3大難問の一つだそうだ。
村上春樹の1Q84から
『思い出せる人生の最初の情景は何歳の頃のものですかと』
私は日本語の深遠さと無限の表現に感動したものだった。
フォトは新日本風土記より『月の夜』