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好事家の世迷言。(初代)

※はてなブログ『好事家の世迷言。(続)』へ移転計画中。

調べたがり屋の生存報告です。

障害者の矜持。

2021-09-28 | 物語全般
映画『座頭市』(勝新太郎版)を劇場へ見に行く。

恥ずかしながら未見である。
盲目の剣士が主人公の時代劇、という情報しか知らずに突撃した。
こういった旧作上映でもなければ一生見なかったかもしれない。

差し当たっての感想は。
市さん格好よかった確かに。

目が見えない事から受け続ける差別に立ち向かって一人生きるために
居合いを極限まで鍛え上げた強さと、けれど本当は戦いを嫌う優しさと、
機転をきかせる聡明さと。

私の印象に残ってるのは序盤の丁半賭博。
周りに故意に侮らせてからの掌返しの逆転は痛快の一言。
「サイコロ落としてるぞ」と最初から市を気づかってたら話も違ってたのにね。

ただ、話の本筋は総じて悲劇。
用心棒同士、一人の人同士として仲良くなっても、敵味方の陣営に分かれている以上、
殺し合いは避けられず、市は戦いの空しさを噛みしめる。

最後に、今も私に刺さってる台詞(大意)を残しておく。
「めくらといわれることは構わない。事実だからな。
だが、たかがめくらのくせに、と侮られるのは我慢ならねぇんだよ」

それでは。また次回。

私たちの世界もループしてる、かもしれない。

2021-09-14 | 物語全般
『パラドックス・メン』(byチャールズ・L・ ハーネス)、読了。

初出は1953年だが、邦訳は2019年。
約50年あいている。
例によって、時間移動ものの傑作という評判から、図書館で借りた。
ずっと予約で順番待ちのため、知ってから実際に読むまで時間がかかった。

作中の時代は2177年。
科学が進みすぎたため、結果的に懐古趣味な文化になっているという、『虎よ!虎よ!』辺りでも見た世界観。
そして、アメリカが世界の西半分を支配し、何と帝政を掲げている。
なお、当然というべきか、最終戦争直前の緊張状態でもある。

主人公はそんな世界に抗うレジスタンスに所属する、記憶喪失の青年・アラール。
最初は話にあまり入り込めなかったが、読み始めてから1/4くらいで、アラールが特殊能力に目覚めた辺りから、右肩上がりに盛り上がってきた。
5年前にアラールが発見された謎の宇宙船と、研究中の最新宇宙船との関係が明かされた時、序盤に仕込まれていた伏線を知って胸が踊った。
私たちが今いるこの世界も、アラール達が俯瞰しているかもしれない……と感慨深くなった。

ただ、複雑な数式が出てくるところは理解しきれてなくて申し訳ない気持ちにもなったり。
この辺を完全に分かった上で読んだら、また違う感想が浮かぶのかもしれない。

それでは。また次回。

映画館は楽しい。

2021-09-13 | 物語全般
映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のDVDを見る。

例によって前の緊急事態宣言で見そびれていた作品の一つ。

そもそもコレがイタリア映画だという事さえ初めて知った。

パッケージに書かれていた上映時間の長さ(3時間弱)に正直おののいたが、心配は無用だった。

冒頭、誰かが死んだと連絡が来たのに関心を持たない男性に、「コイツ何?」と疑問をおぼえた時、既に作品に入り込んでいた。

時はさかのぼり、、第二次世界大戦直後へ。
トトという映画好きの少年の人生が丹念に描かれる。
そのトトが年を取る描写が上手いこと!
ごく自然に場面を切り替え、別の役者へバトンを渡していく。
やがて映画マニアのトトも思春期を迎え、人並みに恋に落ちるわけだが、それが叶うか否かは、ここでは伏せておく。

私にとって、この映画は、映画そのものの歴史を学ぶ機会にもなった。
昔のフィルムが可燃性という事も知らなかった。
個人的に楽しかったのは、時代が異なっても、一刻も早く最新作を見たがる人々の様子。
当時は今のように娯楽があふれてるわけじゃないから尚更熱狂するだろう。
あんな風に、映画館でイベント盛り上がれる時代が、また早く来ますように!

それでは。また次回。

駒は神に戦いを挑んだ。

2021-09-06 | 物語全般
映画『フリー・ガイ』を劇場へ見に行く。

図書館と映画館は私の避難所です。

当初の予定からずっと延期され続けていたのが、いざ公開されたら、なかなか行く時間を取れなくて。
出来るだけ混まない日取りを狙って突撃して──久しぶりに、自分としては大当たり。
予想以上、期待以上の内容だった。

犯罪テーマの殺伐としたネトゲのNPCが、とあるきっかけで自我に目覚め、プレイヤーと同等のスキルを得て、不殺のヒーローを目指して駆け上がり、最終的に世界を救う。
もう、このメタまみれの世界観設定だけで、私のテンション上がる。
『レゴ ムービー』の時も感じたけれど、世界にあふれてる「一般人」たちをフィーチャリングした光景って本当に好きだ。

総じてハートフルでプラトニックでハッピーエンドの上、笑えるネタもしっかり入ってる。
中でも、“敵”の攻撃を受ける時にあの「盾」が出た瞬間、私は悶絶した。
「僕の盾?」って、ご当人が言った時にトドメ刺された。
もし一昨年までの私だったら間違いなく声出して笑いまくったと思う。
きっとあのネトゲ、Marvelコラボイベントもめっちゃ有ったんだろうね。何となく。

ネトゲ世界は最終的に、プレイヤーとNPCとが自由に交流する穏やかな場になり、制作者たち上位世界も平和に続く。
あんな感じのネトゲって……私が今やってるポケ森もある種そうかも。
これからもお世話になります、なんて。

それでは。また次回。

バッド・コミュニケーションの極致。

2021-09-05 | 物語全般
『地球はプレイン・ヨーグルト』(by梶尾真治)、読了。

全7話の短編集。1979初版。

『美亜へ贈る真珠』以来の梶尾作品。
(『美亜~』も収録されてた)

本命は表題の『地球は~』だった。
コミュニケーションをテーマにしたSFの傑作、というレビュー記事で興味を持った。
レビューには筒井康隆氏の『関節話法』(間接ではないので注意)と並べて紹介されていたが、確かに優劣つけがたい。

異星人とのファーストコンタクト。
その疎通手段が、五感の内の「味覚」という、とんでもない設定が最後、何ともエログロにしてナンセンスな顛末へ堕ちる。
図書館でなかなか借りられず、ネタバレを知ってから読んだ事が悔やまれる。

結果的に、他の未読短編が大きな収穫になった。
『フランケンシュタインの方程式』は、いわゆる「冷たい方程式」のバリエーション。
おかげで『解けない方程式』や『破砕の限界』も読みたくなった。

個人的に印象深いのは『詩帆が去る夏』。
前回は軽く読み流した記憶だが、再読したら、父娘でありながら恋愛めいた歪な関係から、苦くも爽やかな終局に至るのが感慨深い。
そういや『黄泉がえり』も未読だなぁ……。いつ読もう。

それでは。また次回。

たった一人の決闘劇。

2021-09-03 | 物語全般
『荒野の用心棒』の時と同様、タイトルだけは昔から知っていた。
むしろ「真昼の決闘」という言葉だけなら幼い時から聞いていたかもしれない。
そんな知識量だから、『真昼の決闘』の題が意訳と知ってだけで驚いた。
『High Noon』……直訳の「正午」で、はじめて意味が出てくる。

結婚、引退しようとする保安官の元に、かつて逮捕したならず者が釈放されて戻ってくる。
汽車で到着するのが、まさに正午。
それまで残された約90分間、作中時間と上映時間が完全にリンクしているのが、
当時としては斬新だったそうで。
今となっては、他作品でもしばしば見かけるサスペンス演出の、言わば元祖だと知った。
確かに、刻々と時刻の迫る時計や、他のならず者3人が暇を持て余す様が何度も挿入されている。

ただ、自分には、それ以上の感慨は無かった。
もともと西部劇が肌に合わないのもそうだが、肝心の主人公に感情移入出来なくて。
住民たちは、自分たちに構わず町を去ってくれと懇願してるのに。
保安官は個人的な意地にこだわってるようにしか私には見えなくて。
でも一人で戦えるわけじゃ当然ないから住民を頼るが皆に避けられる。
もしかしてコレ、主人公負けて終わるんじゃ?と不安にさせられて……結局フツーに勝って。
そう、フツーに。
今まで見てきた西部劇たちのような、ハッとさせられる機転とか無くて。
そして己のわだかまりを解消した主人公は、けれど住民に感謝もされずに町を去る。

見終えた後、何とも重苦しい気持ちに襲われた。
「現実ってこんなもんよね」って言いたくなる寂しさに満たされた。
たくさん見れば、こういう感想になる作品もあるという事で。

それでは。また次回。

不良少年×時間移動。

2021-08-31 | 物語全般
書きそびれていた話。

映画『東京リベンジャーズ』を劇場へ見に行く。

緊急事態宣言直前に滑り込んだ。
今最も流行ってる絶大な人気漫画の実写映画!という旨の触れ込みにほだされて。
時間移動を扱っている作品と知って、最後に背中を押された。
因みに原作未読。
(映画鑑賞後に序盤だけ読んで調べた。後述)

タイトルに「リベンジ」とある通り、『リプレイ』(byグリムウッド)と似たパターン。
主人公は、自分の想い人が死んでしまう未来を変えるために、10年前の同日へ時間移動を繰り返して、歴史を改変していく。
日頃、時間移動ものに触れてない層には、王道ながら新鮮なテーマに映り、それが作品ヒットにつながったのではと思われる。

ただ、SFに慣れてない人に分かりやすくという目的は分かるが、私のようなひねくれ者には、時間移動のルールがあいまいなのが最後まで気になった。
想い人の弟くんの手を握ると時空を超えるというが、なら最初、電車に轢かれそうになったのは何で?ただの例外?考えちゃダメ?

あと一つ、私には全体的にあまり合わない作風だったのも残念な点。
いわゆる「ヤンキーもの」は、嫌いというわけでもないが好きでもなくて。
漫画を少しだけ読んでみて、中学生の大勢が反社会的行動に走ってる世界に、私は打ちのめされて怖くなってダメでしたごめんなさい。
映画は高校生だからまだ耐えられたんだがなぁ……。

それでは。また次回。

ナナシが町を救った西部劇。

2021-08-23 | 物語全般
『荒野の用心棒』のDVDを見る。

見た動機は不純である。
世のレビューサイトにも、私と同じ目的で見てる人が多くて驚いた。
皆して、或る作品の元ネタとして調べてる。
タイトルは敢えて書かん。
……ホント完全に一致だったよ、うん。

ただ、そんな恥ずかしい事情を語る以外、感想が浮かばない自分。
前にも書いたが、そもそも私、西部劇の魅力が今も分からない。
登場人物の区別からして、どうにも出来ない。
多分、全員似たような服と帽子なのが大問題だと思う。

それに、細かく語れるほどのストーリーも無いというか。
下手に話せば、それこそネタバレになる。
拷問されても秘密守ってたおじいさんは格好良かったけれど、可哀想だったな。

それにしても。
まさか主人公に個人名がないという点には仰天した。
「名無し」が、訪れた町の勢力を皆殺しにして平和をもたらした、って事だ。
これじゃ誰かさんも「クリント・イーストウッド」って、そのまま名乗るしかないわな。

後に調べたら、黒澤作品の『用心棒』こそ必見なんですね。
いずれ見ねば、と覚書。

それでは。また次回。

スパイが実家に帰った話。

2021-08-14 | 物語全般
書きそびれていた話。

映画『ブラックウィドウ』を劇場へ見に行った。

公開直後に字幕版で見てから、友人と一緒に吹替版を見ようとした矢先に、緊急事態宣言が吹き荒れて。
更にその後、上映回数そのものも激減し、そして消えた。
もし早めに字幕版を見てなかったら……と背筋が冷えた。

感想は。
本編前の総集編(「映画復活」の動画)が一番興奮した、というのが本音。

というのは、まさか、『シビルウォー』や『エンドゲーム』のネタバレ前提だとは思わなかったから。
登場するのはナターシャの“家族”であり、アベンジャーズのキャラは誰も出ない。寂しい。

今までのMCU映画で、単独キャラが主役になる話は、そのキャラが確立された起源(オリジン)を紹介する内容だったから、てっきりナターシャがアベンジャーズに入る前の、ホークアイと一緒にブダペストで戦ったエピソードでも見られると期待していたんだが。
ポスターにもそんなような文言があったし。

タスクマスターの設定がMarvelのそれと大幅に違ってしまっていたのも残念な点。
デップーと気の合う、人間のプロ戦闘員である「彼」が、今後登場するのを祈る。

ただ、それ以前の大問題として。
今作が、映画館で見られる最後のMarvel作品になるのかもしれないと言う不安がある。
今回も大きな劇場では上映されなかったそうだし。
どうか今後も、せめて我が地元では上映されますように。

それでは。また次回。

時間旅行者の行き着く果ては……。

2021-08-11 | 物語全般
『タイム・シップ』(byスティーヴン・バクスター)、読了。

「時間移動もの」を語るなら、読んでおかねばという義務感から手に入れた。

『タイムマシン』(by H.G.ウェルズ)の“正式な”続編である。
何たって、ウェルズ氏の遺族から許可もらって書かれてる作品なのだから。生半可なレベルのわけない。

『タイムマシン』の単純なストーリーに、ガチガチ本気の時間論が上乗せ。
「私」こと時間旅行者と、未来人(と呼ぶべきか)ネボジプフェルとが、無数に増える時間線を行き来する。
彼らは、何度も改変された歴史を超え、未来の果てから、全ての時間線を内包した過去へ辿り着く。

ところでこの作品のタイムマシンは時間移動中、外界の様子が超高速で戻ったり進んだりするのをリアルタイムで見られる仕様。
動画ならさぞかし見映えがいいだろう。
映画版もいずれ見てみたいかもと覚書。
見たい作品が本当に増えてくなあ。

それでは。また次回。