理科系人間のマクロビオティックメモ

マクロビオティック・健康に関する考察と情報をつれづれなるままに。

海外の身土不二(3) 主食

2005-04-27 | グローバルマクロビ
マクロビでは主食として、前回書いたような全粒穀物を全体の半分以上摂るように指導していますが、欧米人の普段の生活(非マクロビ)での主食というのは何なんでしょうか。

欧米の知り合いに私が"I'm a rice addict.(私は米中毒だ)"と言うと結構ウケがよく、それを思い出して自分のハンドルネームをrice-addictとつけたぐらいなのですが、ドイツ人の友人は「ドイツで君の米に相当するのは、強いていえばジャガイモだ」と言っていました。ただし日本人の米のような、どんなおかずとも一緒に食べる「ごはん」的地位をジャガイモが築いているわけではなく、どちらかというと肉(ソーセージなど)のつけあわせという感じがします。マクロビ的にいっても、暖かくないドイツで陰性なジャガイモをよく食べるというのは肉とのバランスをとるためなのかもしれません。

アメリカの友人はジョークで「マクドナルドのハンバーガーが主食だ」と言っていました。アメリカの場合は国としての歴史が浅いので、ネイティブアメリカンの人たちを除いては民族としての食生活が確立していない印象があります。

他にもパンやシリアル、はては肉など、欧米人の主食かなと思えるものはいろいろあるのですが、どうやら下の参考ページにもある通り、日本人のイメージする主食に相当するものは欧米にはないと考えるのが妥当なようです。「ごはん」的地位を確立している食品はないのです。

そう考えると、前回書いた穀物リストのように、主食となりうる穀物がたくさん並ぶのもわかるような気がします。日本人なら玄米を常用して時々パンや麺類を食べればすむ話ですが、欧米ではリストの穀物の中からいろいろ組合わせて食べればよいということなのでしょう。そうしながら意識して穀物中心の食生活にしていくということで。

穀物リストについては、alproさんから「結構普通に毎日変化をつけて食べられるものが多い」というコメントをいただきました。そうやって変化をつけながら穀物を摂るのが欧米でのマクロビ実践の1つのやり方なのかもしれません。

[参考ページ]
世界の国々の主食はどんなものですか? (総合食料局)

海外の身土不二(2) 全粒穀物

2005-04-26 | グローバルマクロビ
欧米でマクロビオティックを指導する際にどういう食べ物が勧められているのかを知るため、Kushi InstituteのWebサイトにある以下の資料を読んでみました。

Macrobiotic Dietary Recommendations (Macrobiotic Dietのページ)
[PDFファイルなので、読むにはAcrobat Reader(無料)が必要]

同名の小冊子から作られたファイルです。ここでいうDietとかDietaryというのは日本語の「ダイエット」とは違い、日常の食事のことを指します。

日本で読まれているマクロビ解説本同様、陰陽(yin and yang)の話や、「宇宙の秩序 7つの原則」「12定理」などの解説(日本語での解説は久司ヘルスメニューのページにあり)のあと、具体的にどういうものを食べるとよいかが書いてあります。

まず主食。食べる全体量の半分以上を全粒(未精製)の穀物にせよと言っています。

・常用するもの
短粒玄米, 中粒玄米, キビ/アワ/ヒエ, 大麦, 丸麦, 蕎麦, トウモロコシ, ライ麦, 小麦, オート麦

・時々摂るもの
玄米もち, 長粒玄米, 麺類(全粒小麦, うどん, そば, そうめん, キノア, 米, スペルト小麦), 全粒小麦またはライ麦のパン(非イースト), 砕いた小麦, ブルガー(小麦の外皮を取り除いた粒を蒸し、砕いて乾燥したもの), クスクス, つぶしたオート麦, ひき割トウモロコシ, コーンミール, ポレンタ(トウモロコシの粉), アマランサス, キノア, ライ麦フレーク, スペルト小麦

無理やり日本語に訳して並べてみたのでわかりにくいかもしれませんが、これだけのものが挙げられています。全て全粒で摂ります。ちなみに短粒(玄)米というのは日本の米のような粒の短いもの、長粒米はタイ米など長い粒のもの。その中間の中粒米はカリフォルニアなどで作られています。玄米のうち長粒だけが「時々」の方に入れられているのは、暑い地域でとれる米なので暑くない欧米で食べるのには向かないということなんでしょうか。

いずれにせよ、「常用するもの」だけでも結構な種類の穀物がありますから、別に玄米でなくてもいいということなんでしょうね。これらの中から毎日しっかり穀物を食べろということになります。

また、「粉食品よりも穀物の粒を調理したものの方が栄養としてより完全なので望ましい」とありました。実際、パンや麺類、くだいた穀物は「時々」の方に入れられています。栄養としてどう違うのかよくわからないのですが、マクロビでは粉ものは概して陰性であり、穀物を炊いたものはより中庸に近い(あるいはやや陽性)ため好まれるということだと思います。

さて、主食だけでこれだけのことを指示されているわけですが、これらを守るとすると欧米人の食生活にどういう影響があるのでしょうか。

海外の身土不二(1) 玄米と味噌汁?

2005-04-20 | グローバルマクロビ
マクロビオティックは日本人(桜沢如一氏)が始めたものですが、最初は主に海外で普及していきました。現在でも久司道夫氏をはじめ、海外で普及・指導をされている人は大勢おられます。

マクロビ本などでそういう活動について書かれているものを読むと、欧米の人たちが玄米や味噌汁、ひじきなんかを食べながらマクロビを学んだり病気を治したりする様子が伝えられています。海の向こうでも日本食は人々の健康に役立っているんですね。

あれ? ちょっとおかしくないですか? 「身土不二」(人間の体と環境とは切り離せない → その土地でとれる旬のものを食べる)はどこへいったんでしょう。

例えば、「身土不二」と「一物全体(精製していないものを丸ごと食べる)」「穀物を食の中心にすえる」という原則を合わせると、日本では玄米を主食にするのがよいということになります。他のアジア諸国の多くでも同じことが言えるでしょう。それに対し、欧米では米(コメ)は概してメジャーな作物でない(と思うのですが)ので、主食にするのは変な気がします。精製していない小麦粉(全粒粉)を使ったパン(もちろん砂糖・牛乳・卵は使わない)を食べるとかではダメなんでしょうか。そういうパンを食べたことがありますが、固いけどうまく味つけすれば十分いけると思いました。

それに、我々日本人は子供のころからごはんや味噌汁に慣れ親しんでいる(玄米に抵抗のある人はいるにしても)からいいですが、欧米の人に慣れない日本食を食べさせるというのは普及の妨げになるような気がします。それぞれの国の料理でマクロビオティックを実践することはできないのでしょうか。

というわけで、マクロビオティックを指導する際に欧米では具体的にどういう食べ物が勧められているのか、インターネットで調べてみました。

「デブの帝国」

2005-04-17 | 本の感想
・デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか (グレッグ・クライツァー) バジリコ

ふざけたような邦題と表紙ですが、中身はまじめです。

アメリカへ行って、そこでかいま見ることのできる彼らの食生活に驚かされた経験のある人は少なくないと思います。レストランで出てくる料理の量、脂っこさ、砂糖・バター・ハチミツなどの使い方。それにコーラのような甘いものばかり飲んでるし。友人に聞いた話では、全摂取カロリーのうちアメリカ人全体の平均で7%、子供ではなんと10%~20%をソフトドリンクから摂取しているそうです。お茶を飲めばいいのにと思ってしまうのですが。

近年アメリカでは肥満が激増しています。この本では、その原因となった事柄を政治・教育・食品産業を中心につづっています。高果糖コーンシロップ(HFCS: 日本人が発明)・パーム油などの安価な甘味料・油の開発と政府の推進、ジュースやファーストフードの自動販売機・屋台の学校周辺への設置、外食産業のスーパーサイズ戦略などなど。日本も同じような方向に進んでいることは間違いないわけで、他山の石としなければなりません。

ちょっと驚いたのは、アメリカでは「子供の食事は制限せずにどんどん食べさせるべき」という考え方が流行していたということ。背景や詳しい内容はわかりませんが、それはまずいんじゃないでしょうか。

この本、出来事の細かい内容ばかりがどんどん続くのでかなり読みにくく、最後の方は流し読みになってしまいました。もう少し考察を加えてくれるとよかったのですが。例えばこういう事態を引き起こしたアメリカ人の文化的バックボーンについてもっと書いてほしかった。

最近知ったのですが、スーパーの加工食品の原材料名表示でよく見かける「ぶどう糖果糖液糖」「果糖ぶどう糖液糖」「高果糖液糖」というのはいずれもコーンシロップのこと(果糖の含有率により名前が異なる)なんですね。砂糖よりはましなのかなと思っていたのですが、この本によるとインシュリンの分泌を阻害して糖尿病の原因となる可能性があるとのことなので、注意が必要です。

アメリカ人の食生活といえば、最近スーパーサイズ・ミーというドキュメンタリー(?)映画がありました。監督自身が1ヶ月間ファーストフードだけを食べるというもの。3日も経たないうちに吐き気を催しそうですが... こわいもの見たさでDVDでも借りてみようかと思っています。

食べる割合(2) 歯の数

2005-04-11 | マクロビを学ぶ
マクロビオティック関係の本を読んでいると、食べる量の比率について以下のような記述がよく出てきます。

人間の歯は臼歯(奥歯のような歯: 穀物をすりつぶす)20本、門歯(前歯のような歯: 野菜を切る)8本、犬歯(とがった歯: 肉や魚を食いちぎる)4本の計32本。食べる量もこの比率に従って穀物・野菜・肉魚類をおよそ5 : 2 : 1の割合とするべきである

この話、どうも納得がいきません。

草食動物は臼歯が、肉食動物は犬歯が発達しているというのは事実なので、臼歯が発達しているほど草食に近いということは言えますし、人間は穀物を中心に食べるべきだというのはいいのですが、だからといって歯の数と食べるべき量が比例するというのは飛躍していると思います。

今のような料理法のなかった原始人のことを想定しても、肉を食べる時には臼歯も門歯も使っていたでしょう。また犬歯というのは肉を食べる時というよりも獲物をつかまえる時に使うもので、実際ライオンは食べる段になるとほとんど肉を噛まないそうです。このように、同じものを食べるにも異なった種類の歯を組み合わせて使い、かつ歯の種類によって用途(食べる、つかまえる)が違うのに単純に「歯の数の比 = 食べる量の比」としてしまうのは無理があると思うのです。

とはいえ、推奨されるべき食物摂取比率がたまたま歯の数の比率に近いので、歯の数を使って食べる量を説明するのがなんとなくわかりやすく便利であり、したがってそういう説明をよく見かけるというのが実際のところではないでしょうか。だから追及するのはヤボな話なのですが。

ついでに、人間と同じ雑食動物である犬と猫の歯の数を調べてみました。

・犬: 門歯12, 犬歯4, 臼歯26(前臼歯16, 後臼歯10), 計42
・猫: 門歯12, 犬歯4, 臼歯14(前臼歯10, 後臼歯4), 計30
・人間: 門歯8, 犬歯4, 臼歯16(前臼歯8, 後臼歯8), 親知らず4, 計32

犬は歯が多いんですね。門歯と犬歯の数は犬猫で同じですが、臼歯の数が大きく違います。また、よく書かれる「人間の臼歯は20本」というのは親知らずを含めての本数です。

[参考ページ]
動物の歯と食べ物の関係 (東山動物園)

おいしい玄米とは?

2005-04-10 | 食材・料理
なかなか氏から質問をもらいました。

■ 質問
rice-addictさんの「おいしいご飯(玄米)の基準」は何でしょうか?
以前の記事に「ねばりがあっておいしい」という記述がありましたが、おいしさのポイントはねばりでしょうか?
といいますのは今、三種類の玄米を食べ比べています。どれも厳選された高次元の戦いなので、どれがどうおいしいか? と言われてもわからなくなってきました。

■ 答
難しい質問です。食べ物のおいしさというのはしょせん主観的なもので、明らかにまずいものというのはあっても、おいしい方はある程度以上のレベルになると音楽のように人によって好みが異なるものですよね。というわけであくまで主観的な話になりますが。

玄米のおいしさは白米のそれとは違ってきます。要素に分けると以下のような感じでしょうか。

・味
文章で書くのは難しいのですが、白米の部分(胚乳)のでんぷんの味やほのかな甘さとまわりのぬか・胚芽の味がうまく調和していること。玄米の場合、なぜか妙に粉っぽい味になってしまうことがあります。それと、口に入れた時だけでなくよく噛んだ後に出てくる甘みも重要です。これが深みのある甘さになっているとgoodです。

・香り
玄米には独特の香りがあります。ぬかくさくなってしまうとダメですが、ほどよい香ばしさが出ているのがいいですね。

・粘り
質問にも出てきましたが、これは適度に。好みが分かれそうです。私は比較的粘りのある方が好きですが、自然食レストランなどで出てくる玄米は粘りのありすぎるものが多いと思うのは私だけでしょうか。主に炊き方によるものだと思います。

・固さ
玄米は白米より固いものですが、その中でも固めが好きな人とやわらかめが好きな人がいます。私はどちらかというとぬか・胚芽が白米部分と一体化した感じのやわらかめが好きですが、固い玄米の弾力性も捨て難い。

以上のような観点とは別に、玄米の場合は「もみがらがきちんと除かれていること」というのもあります。もみがらが入っているとその分まずくなりますが、これまで食べた銘柄の中にはかなりたくさん入っているものもありました。洗う時に1つ1つ取り除くのにも限度があります。

総合して考えると、玄米は芯の白米の部分(胚乳)とまわりのぬか・胚芽がうまく調和しているときに特においしく感じるような気がします。玄米食を始めるまでずっと白米を食べていたせいかもしれません。

「三種類の玄米を食べ比べているが、どれがどうおいしいかと言われてもわからない」とのことですが、判定する方法が1つあります。それぞれの玄米を食べた時の「うまい!」という自分の気持ちをよく覚えておき、その強さを比較するのです。「メタ自分による快感測定法」とでもいいましょうか。

そういう意味では、おいしさの基準は「幸福感」です。結局、食べた時に「うまい!」という幸福感をより強く感じられる米がおいしいということだと思います。

食べる割合(1) ごはんとおかず

2005-04-02 | マクロビを学ぶ
ブログ「マクロビという考え方」の「玄米の摂取量」を読んで思い出しました。マクロビでは

(1) 副食(おかず)は主食(ごはん)より多くならないように
(2) 腹八分目に

と言っています。この(1)は一般現代人の常識とは異なるマクロビの主張の1つだと思います。人にこの話をする時にサラッと「副食は主食より多く摂ってはいけないらしいですよ」と言うと、一瞬逆の意味にとられて「そうですよね、おかずをしっかり食べないとね」「いやいや逆です」「へ?」となることがあります。

これはおかずで栄養をたくさん摂らないといけないという意識があるからで、私も子供のころ、食欲がない時などは「ごはんは残してもいいからおかずをちゃんと食べなさい」と言われたものです。ただしこの時のごはんは白米でした。(1)はあくまでごはんが玄米であることが前提です。白米だと栄養が足りなくなってしまいます。いずれにせよ、栄養はまずできるだけ穀物の形で摂るのが望ましいというのが(1)の主張でしょう。

(2)の腹八分目というのはもちろん実際に満腹の8割ということではなくて比喩的な数字ですが、(1)(2)を守ると感覚的にはおかずは腹四分目(?)までということになります。これは結構少ない。玄米が栄養豊富だといってもそれだけでは不足する栄養素もあり、それを補いながらさらに食事を楽しくするには、結構おかずを選ばないといけないですね。そのために陰陽とか栄養学の助けを借りるということになるのではないかと思っています。