理科系人間のマクロビオティックメモ

マクロビオティック・健康に関する考察と情報をつれづれなるままに。

胃痛とつきあう(10) X線検査と胃カメラ 追記

2005-09-27 | 一病息災
前回の記事で胃のX線検査(いわゆるバリウム検査)と内視鏡検査(胃カメラ)について書いたところ、関連する内容を同じ日のNHK「ためしてガッテン」でやっていたという情報をいただきました。書いたその日にテレビで放映されていたとは... 幸い再放送がありましたので、しっかり見ました。minminさんありがとうございました。

テーマは「最新がん徹底予防術! 胃がん大研究」。検診・予防・治療の3つの観点から胃ガン研究の最新状況を伝えるというものです。大変勉強になりました。このうち検診についてはX線検査と内視鏡検査の比較が中心でした。

・X線検査は胃の形状と陰影だけで判断するので、胃壁に生じている小さな異常まではわからない → 早期ガンの発見が苦手
・内視鏡検査だと胃内部の状態を直接見ることができるが、胃壁表面に出ていない(胃壁の中にできている)ガンを発見できないことがある → スキルス胃ガンの発見が苦手

とのことです。前回、「X線検査でないとわからないこともあるのではないかと思っていた」ということを書きましたが、あながち素人考えでもなかったようです。それと内視鏡検査の場合、カメラを上から入れる関係で胃の入口付近の検査が不十分になりがちだとか。言いにくくても事前に医師に「入口や上の方も見てください」と頼んだ方がいいかもしれません。

どちらにも長所・短所があるわけですが、毎年両方受けるのはちょっとやりすぎなので、私はやはり内視鏡検査だけを受けるようにしようと思います。番組でも「毎年1回どちらかを受け、異常を感じたらすぐに両方受ける」のを勧めていました。

ところで、番組中の内視鏡検査の紹介では、国立がんセンターのセンター長の先生が自ら検査を受けて胃の中を映していました。この先生、番組撮影のためにわざわざ絶食して胃カメラを飲んだんですよね。仕事とはいえ御苦労さまです。

胃ガンの予防や治療の話も興味深いものでした。治療に関しては最近の抗ガン剤治療の進歩を強調していましたが、自然治癒力を阻害するものであることは事実でしょう。いざガンになったときに摘出手術+抗ガン剤という治療を選ぶのか、これらを使わずに他の方法(食事療法+手当て法など)で治療するのがいいのかは難しい問題です。今のところ私にはどちらに対しても確固たる信念を持って支持することはできません。

胃痛とつきあう(9) X線検査と胃カメラ

2005-09-21 | 一病息災
マクロビという考え方」の「バリウムと個人情報保護法」で、会社の健康診断の胃部X線検査(バリウムを飲むやつ)を辞退する話がありました。今年から個人情報保護法の関係で辞退しやすくなったとのこと。

これを受けて、ブログ「himazu memo」の「バリウムを飲んでの胃のX線検査をするか否か」で、胃部X線検査の有効性について考察されています。それによると、一応の有効性はある(検査した方が長生きできる可能性が一応高い)と思われるものの、ガンの見落としの確率も高く(10~40%)、内視鏡(胃カメラ)検査に移行すべきであるという見方が強いようです。

私も胃部X線検査を受けたことがありますが、あまり気持ちのよいものではありません。「マクロビという考え方」で書かれているような腸内環境のダメージがあるのかどうかまではわかりませんが、X線の被爆は心配です。

Webで調べてみると、よくある胸部X線検査と比較した胃部X線検査の被爆量は「10数倍」と書いてあるものから「150~300倍にも達する」とあるものまでいろいろ。いずれにしても相当強い放射線を浴びることは間違いありません。少なくとも普通に生活していて1年間に浴びる放射線(大地や宇宙線などから)よりかなり多い量です。それでも検査で病気が発見されるメリットの方が大きいということにはなっているわけですが。

私は、「ひょっとして、胃カメラで中から見るだけではわからないがX線で外から胃の形を見るとわかることもあるのではないか」と思っていたのですが、これは多分素人考えで、実質的には胃カメラで検査していればX線検査の必要はないようです。また胃カメラ検査での穿孔発生(穴が空いてしまう)や感染の危険性は十分小さいと思われます。

これらのことから、できるだけX線検査はやめて胃カメラの方で検査してもらうようにしようと思います。幸か不幸か、私は十二指腸潰瘍をやってから胃カメラは10回ほど飲んでいて慣れたものですので、今年から会社の健康診断の前に胃カメラ検査を受けておいてX線検査は断るつもりです。私のところでも個人情報保護法がらみで断りやすくなっていることを期待。胃カメラは通常の健康診断コースからはずれるので費用の問題は発生しますが。

健康診断については、以下のような最近の記事もあります。

労働安全衛生法,老人保健法,健康保険法などの健康診断は有効でない項目が多い / 厚生労働省研究班まとめ

胃部X線については触れられていませんが、健康診断の有効性について疑問が投げかけられています。特にデメリット(感染の危険性・被爆など)のある検査については、本当に受診すべきかどうかよく考えてみた方がいいかもしれません。

「胃腸は語る」

2005-09-12 | 本の感想
・胃腸は語る―胃相 腸相からみた健康・長寿法 (新谷弘実) 弘文堂

先日講演会レポートを書いた新谷先生の本です。大腸内視鏡(コロノスコープ)による検査・治療の第一人者として、胃や腸の様子「胃相・腸相」と病気(特に生活習慣病)との関係、胃相・腸相をよくする(→健康を保つ)食生活、健康のために摂るべき食品・栄養素の詳細などについて書かれています。

胃相・腸相の話では、食生活がよくないと胃や腸の状態が悪くなること、それが病気を招くことが解説されているわけですが、「胃相・腸相」を掲げているからには、よい胃相・腸相、悪い胃相・腸相がどんな状態なのかをビジュアルでもう少し詳しく書いてあった方がよかったと思います。講演会の時のようにビデオで見せることは無理としても。

あとの章はわかりやすい内容でした。食べ物だけでなく、水の飲み方についてもある程度詳しく書かれているのは勉強になります。さらに、ガンを中心とする主な病気と食生活について。個人的には「胃のピロリ菌(胃・十二指腸潰瘍の原因とされる)を安易に薬で除菌するのは危険」というのが耳の痛い話でした。何年か前に薬で除菌しましたので。

各食品や栄養素の話はかなり詳しくなっています。「今の食生活では早死にする」を読んだ時にも感じたことですが、ビタミンやミネラルの摂取不足には特に気をつけなければならないと思いました。

先日の講演で詳しく説明のあった酵素については、研究が進んだのが4、5年前からだそうで、この本はその前に書かれているからか、ほとんど記述がありません。

食生活の指針だけでなく、病気別・栄養素別に少し細かい話を読みたい人にはおすすめの本です。全体的な考え方をサッと知りたいとか酵素(エンザイム)に関することを読みたい場合は、先生の「病気にならない生き方」(私はまだパラパラと見ただけですが)の方がいいかもしれません。

下戸の系譜(2) 判定パッチ

2005-09-07 | マクロビを学ぶ
私の妻は独身時代、「結婚したら夫婦で晩酌をする」のを楽しみにしていたらしく、私が飲めないと知ってがっかりしたそうで、未だに文句を言われます。飲めたとしても、夫婦でゆっくり晩酌をする暇なんてそうそうないと思いますが。

こうなったら子供に期待するしかないというわけで、2人の娘が酒を飲める年齢になるまで待つことにしたようですが、長女でもまだ小学4年生。そして私の子ですからやはり飲めないかもしれません。飲めるかどうかは彼女らが大人になってからのお楽しみと言ってたんですが、子供のうちから判定する方法があるということに最近気づきました。前回書いたアルコール→アセトアルデヒド→酢酸・水という分解を行う能力を調べればいいんですから、必ずしも酒を飲ませる必要はないのです。

というわけで、アルコール体質判定パッチというのを買ってみました。アルコールの含まれたシールを腕に貼り、しばらくして皮膚がどれくらい赤くなるかで分解能力を判定するというもの。前回書いた■■(飲めない)、■□(少し飲める)、□□(飲める)のどれであるかを知ることができます。さっそく家族で検査し合いました。

判定結果は、私だけが■□で妻と2人の娘は□□。私は遺伝子としては「少し飲める」タイプで、その■遺伝子は娘たちには受け継がれていなかったようです。妻が喜んだのは言うまでもありません。娘たちと杯を傾ける日を楽しみに待っています。まだ10年ぐらいはかかりますが。

こうなったら私の■遺伝子の源を調べたくなります。私の父は筋金入りの下戸で、奈良漬を食べても顔が赤くなるタイプ。母はいつも「お父さんが飲まないから私も飲まないけど、ほんとは飲める」と言っています。この2人を判定パッチで検査してみると、父は■■で母は□□でした。予想通り、■遺伝子は父からもらったものでした。結局飲めないのは男2人。

私は「少し飲める」タイプという結果でしたが、多分分解能力はかなり低いのだと思います。鍛えれば若干は飲めるようになるのかもしれませんが、今までかなりしんどい思いをしたので、もうとても鍛える気になれません。これからも飲みに行ったらウーロン茶を飲んで過ごすことになりそうです。

下戸の系譜(1) アセトアルデヒド分解酵素

2005-09-04 | マクロビを学ぶ
酵素に関係のある話をもう1つ。

酒は陰性、ほどほどならよいとされ、マクロビオティックを実践している人の中でもある程度(たくさん?)飲むという人は少なくないと思いますが、私は酒が飲めません。若いうちは飲み会に行くとビールをコップに2杯ぐらいは飲んでいましたが、最近はそれでも気分が悪くなるので最初からウーロン茶です。

「酒が飲めない体質の人は東洋人にしかいない」という話をよく聞きます。確かに今まで知り合った欧米人の中には、健康上・宗教上の理由で飲まないという人はいても私のように体質としてアルコールを受けつけないという人はいませんでした。

なぜ東洋人にしかいないのか、飲める人と飲めない人は何が違うのかについて、わかりやすくまとめられているページを最近見つけました。

現代日本人のルーツ & 酒に強い人弱い人 (未来航路)

要約すると、まず酒に弱い人のメカニズムは以下の通りです。

・酒に含まれるエチルアルコール(C2H5OH)はまずアルコール分解酵素の助けでアセトアルデヒド(CH3CHO)に分解され、これがさらにアセトアルデヒド分解酵素の助けで酢酸(CH3COOH)や水(H2O)になる
・ところが、アセトアルデヒド分解酵素のうち低濃度で機能するALDH2という酵素が働かない「ALDH2不活性型」の人がいて、こういう人はアセトアルデヒドが長く血液中に居座り、顔面紅潮・吐き気・頭痛などを催す
(よく「アルコール分解酵素がないから弱い」という言い方をしますが間違いで、不活性なのはアセトアルデヒド分解酵素です)
・ALDH2不活性型の(酒が飲めない)遺伝子を■、ALDH2活性型の(酒が飲める)遺伝子を□で表すと(正式な記号ではありません)、父・母からそれぞれどちらを受け継いだかにより■■(飲めない: 10%)、■□(少し飲める: 40%)、□□(飲める: 50%)のタイプの人がいる(%の数字は日本人の中の割合)

そしてなぜこういう違いができたかというと、現在の有力な説は、

・もともと日本には東南アジアから渡来した古モンゴロイドが住んでおり、彼らの中には□□(飲める)の人しかいなかった
・後に北部シベリアから主に朝鮮半島を経由して渡来してきた新モンゴロイドには、寒冷地に適応するための進化の過程でALDH2不活性型の遺伝子■が存在していた
・現在の日本人にはこれらの遺伝子が混在しており、酒に強い・弱いの差異を作り出している

とのことです。私は新モンゴロイドが持ってきた■の遺伝子を持っていると推測することができます。ちなみに、新モンゴロイドと交流のなかった欧米やアフリカの人種には、■の遺伝子を持っている人は1人も見つかっていないそうです。どうりで酒に弱い人がいないわけです。

おもしろいのは、新モンゴロイドが現在の近畿地方から広がっていったため、酒に弱い人も近畿地方近辺に多く、北海道や九州・沖縄には少ないということ(「酒に強い人弱い人の全国分布」参照)。私の先祖は父方・母方ともに兵庫県の真ん中あたりで代々百姓をしていたらしいので、酒に弱い人の多い地方の出身だということはできます。

それと、新モンゴロイドが寒冷地に適応する過程で酒に弱い人(遺伝子)が出現したのはなぜか、どういう点で寒冷地に適していたのかという疑問が出てくるのですが、「特に大きなメリットもデメリットもなかったからたまたま広まった」ということではないでしょうか。酒に弱いのが寒冷地に適しているという理由が思いつきません。

酵素の生成・消費

2005-09-01 | マクロビを学ぶ
新谷先生講演会の記事に関連して、minminさんから質問をいただきました。

■ 質問
酵素を摂るには生で、という見解は他の方も謳っておりますが、いつも疑問に思うのです。
確かに生だと酵素丸ごと摂れるイメージですが、実際には酵素も消化分解されてアミノ酸になり、あらためて体内で作られる酵素の材料になると思うのですが、どうでしょう。
それなら煮炊きして体内に入れるのとあまり違わないのでは・・・
もちろん加熱して失われる成分は不足するでしょうが・・・

■ 答
勉強を兼ねて調べてみましたので、ちょっと長くなりますが私の理解を書きます。

酵素は免疫・消化・排毒などの体内の作業を(自分では変化せずに)助けるもので、それなしでは我々は生きられない、とても大切なものです。酵素は以下のように分類されるようです。

(1) 潜在酵素(体内酵素)
  食物から体内で生成される酵素。ただし生まれた時から体内に存在するものもあると言われている
  潜在酵素を働きで分類すると、以下の2つがある
  - 消化酵素: 食物の消化を助ける
  - 代謝酵素: 栄養物を細胞に届ける、排毒、修復、免疫など
(2) 食物酵素(食品酵素)
  食物に含まれ、その食物が消化・吸収される時に直接利用される酵素

食物酵素は生きている食品全てに含まれ、肉にも魚にも野菜にも米にもあります。48℃以上に熱すると多くの食物酵素が分解されて働きがなくなると言われていますが、味噌や醤油の中の酵素はその限りではないという報告もあるそうです。

さて、上記分類によると、食べ物から酵素を利用するには

(a) 食べ物に含まれる食物酵素(2)を直接利用する
(b) 食べ物を消化した上でそこから潜在酵素(1)を生成して利用する

の2ルートがあることになります。そこで御質問に戻ると、「食物酵素が熱で分解されて(a)の利用ができなくても(b)で利用できるのではないか」ということですよね。それはそうなのですが、野菜には野菜を消化する食物酵素、魚には魚を消化する食物酵素が入っており、それをそのまま(a)のルートで使うのが最も効率的なのです。(b)で使うと消化・吸収して酵素を生成する負担がかかる上に、そのものズバリを消化する酵素ができるとは限らないので効率が悪いのではないでしょうか。

このことから、熱で分解されていない食物酵素を摂るために生野菜や果物を食べましょうと言われるわけですが、酵素の働きとは別の話として、生野菜や果物(強い陰性)を食べると内臓が冷えたり代謝が落ちたりして体に不調をきたすことがあります。そこでマクロビオティックでは、生野菜や果物よりも体を冷やさずに酵素を摂ることのできる発酵食品(味噌、醤油、漬物、納豆など)を勧めているわけです。食品を選ぶ際はそのあたりにも注意する必要があります。