Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2020年6月号 石鹸製造計画

2020年10月02日 | 教育
【写真】混合物のペーハーを下げるために水酸化ナトリウムを加えているレベッカさん。撮影:KANERE

バルウ・ウォル・マクアク:KANEREスタッフライター 2020年5月

カクマ難民中学校の生徒たちが、コミュニティに販売するための液体石鹸を製造し、新型コロナウィルスによるパンデミックへの対策にしている。

カクマ1に住む南スーダン出身の難民、レベッカ・ウィリアム・デングさんによると、新型コロナウィルスが脅威になる前から、学校の実験で石鹸を作っていたという。「ふだんは、販売するために石鹸を作っていたわけではありませんが、新型コロナウィルスの流行を機に、コミュニティを助けようと販売を始めました。最初は学校で使うためだけに石鹸を作っていたんです。でも学校が閉鎖になってからは、衛生を促す目的でもう一歩先に進むことにしました」

科学科の主任、バッチ・オソレ先生の指導を受け、生徒たちは製品を作り、購入しやすい価格で難民に売ることができる。

「オソレ先生は私たちの指導してくださる製造部長です。ドンボロ・モニクールと私は、現在、時間の許す限り石鹸の製造をしています。他の人たちは、新型コロナウィルスのせいで、ホンコンマーケットやカクマ4、カクマ3などの自分の家に帰ってしまい、学校には来ていません」とレベッカさんは言う。

レベッカさんとドンボロさんの先生は、ふたりの前途は明るいと言う。「レベッカやドンボロには大きな可能性があります。彼女たちは覚えが早いので、石鹸製造の腕前はきっと彼女たちの秘密兵器になるでしょう」

新型コロナウィルスのために学校が閉鎖された後も、オソレ先生は学校で石鹸の製造実験を続けていた。夜、熱心なレベッカさんといっしょに帰宅するときに、レベッカさんから、コミュニティを手助けするために石鹸の製造をまた始めようと提案されたのだという。「このアイデアを思い付いたのはレベッカなんですよ」とオソレ先生が話してくれた。

レベッカさんは法律家になることを夢見て育った意欲的な女性だ。法律を勉強するというレベッカさんの夢は変わらないが、自分を試すために、理科クラブに加わっている。理科クラブに加わって夢が変わったのかどうか尋ねると、「理科を学んでいるのは楽しいからです。趣味みたいなものです」という答えが返ってきた。

生徒たちは驚くほど安い値段で製品を販売している。1リットルの液体石鹸がたったの100シリングだ。「私たちが売っている石鹸はとても安いんです。お客さんにとってはとてもお買い得です」現在、彼らが主なターゲットとしている顧客は、キャンプで生活している難民だ。ドンボロというニックネームで通っているマジュール・モ二クール・アロックさんはカクマ1の住民で、理科クラブで活発に活動している二人のうちの一人だ。「私たちは低価格で石鹸を売っています。難民たちの生活水準がわかっていますから」カクマの難民が生活していくための主な資源は、キャンプで配布される救援物資の食糧と、バンバチャクラプログラムを通して提供される制限つきの送金だ。カクマでは、多くの難民が1日3ドル以下で生活している。「私たちは、このパンデミックの時代に難民のコミュニティを助けたいんです」とドンボロさんは説明する。


【写真】カクマ難民マーケットで製品を販売しているレベッカさんとドンボロさん。撮影:KANERE

新型コロナウィルスのせいで、石鹸の製造をするのは、たった二人の生徒とその先生だけになった。理科クラブは、カクマキャンプのあちこちから集まってくる生徒で構成されているが、新型コロナウィルスで学校が閉鎖され、石鹸製造のグループに加わりたいのに自宅に留まらざるを得ない生徒もいるのだ。

高い需要に応え、生徒たちは生産速度を上げた。「今回のことは、すべての人にとって試練の時です。私たちは小さなことしかできませんが、多くの難民に届けることができるように石鹸の生産を強化しています」とドンボロさんは言う。

オソレ先生は、人々の需要に応えるために1日の生産量を3倍にすることで生産を強化してきた。「以前は20リットルの石鹸を作っていて、それで1か月間は何とかなっていましたが、今ではもっと生産しています。最近は80リットル作って、2日以内に売り切れる状態です」オソレ先生によると、すでに取り寄せ注文が合計120リットルあるそうだ。

製品はとても手ごろな価格である一方で、レベッカさんとドンボロさんはいくつかの課題に直面している。例えば、製品を入れるボトルを見つけることや、固定の販売場所を設置することだ。現在、液体石鹸はバケツの中に保管されており、販売のためにボトルに注ぐ準備はできている。パッケージとしては水用のボトルで十分だろう。「市場に需要があるのはご覧の通りですが、カクマ2、3、4に届けるための仕組みがありません。私たちには現在、輸送手段がありませんが、もしそれが手に入れば、それらの地域に届けることもできるようになるでしょう」とオソレ先生は付け加えた。

当初、クラブには石鹸の製造を請け負う資金が不足していた。しかしオソレ先生が自己資金を提供し、製造を続けられるようにした。「私たちに資金が与えられるわけではないので、私が教師の給料であるポケットマネーを出しました。これはお金の問題ではありません。私たちの健康のためのものです」とオソレ先生は言う。「もし協力者を得ることができたら、状況はより良いものになるでしょう。協力してくださる寄付者や団体のような。今ところは、私たちの学校からの援助を得ているだけです」

オソレ先生の説明によると、KRSS理科クラブは10人の生徒で始まった。「私たちは世界難民の日に招待されていたので、プレゼンテーションをしたいと思っていました。それで、準備に3日間を費やし、最終的に製品を作り上げました。私たちは真剣な生徒達を対象にしています。ふざける人のためのクラブではないのです。アイデアを思いつくことができる生徒に来てもらいたいです」

2019年6月、カクマで開かれた世界難民の日の式典の間、生徒たちは製品を発表することによって自分たちの学校を代表するという栄誉を得た。ドンボロさんは、そのビッグイベントのことを嬉しそうに思い出す。「皆が私の発表を聞いてくれて、私は発表に集中していました。その日は私たちにとってカクマ難民キャンプで、そして世界で知られることになった記念すべき日でした」レベッカさんは都合がつかずその年は参加できなかったが、今年の世界難民の日に学校を代表することを心待ちにしている。「新型コロナウィルスによるパンデミックが早く終わってほしいと思っています。私にとってまたとない機会が奪われてしまうのではないかと心配しています」

すでに他の生徒達もKRSSに関心を持っている。オソレ先生によると「学ぶ情熱をもった生徒がさらに10人増えた」そうだ。


【写真】石鹸製造所でチームが写真撮影のポーズをとっている。左からドンボロさん、アブラハムさん、レベッカさん。右端がオソレ先生。撮影:KANERE

カクマは厳しい環境かもしれないが、日々の生活のための奮闘が、障害を取り除く術を住民に教えてくれる。KRSSで石鹸を作ろうと技術的な知識を使っていることは、理科教育のもつ実用的な恩恵を思い出させてくれる。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿