反スパイ法の反対運動が続く中、短期間の審議でオフショア法案が可決された
(3日夜、トビリシのジョージア議会前の抗議デモ)
東欧・カフカス地方の小国ジョージアが金融関係者の注目を集めている。
4月に税率が低いオフショア地域から国内への資産移転に免税措置を講じる法案が可決され、
近く発効する見込みとなったためだ。
同じ旧ソ連圏のロシアなどからのマネー流入が想定され、マネーロンダリング(資金洗浄)の温床になる懸念も指摘されている。
ジョージア議会で19日に最終的な可決プロセスを終えた同法案は、2028年1月1日までに資産をジョージアに移転するすべてのオフショア企業に税制上の優遇措置を与える内容だ。
移転に伴う税金のほか、移転された資産から得られる所得への利益税と個人所得税を免除する。オフショア企業から国内に移った資産に関する固定資産税も30年1月まで免税となる。
通常なら大きな論議を巻き起こすはずだが、4月は現政権が推進する強権的な「反スパイ法案」に世論の関心が集中し、ほとんど与野党の争点にならないまま急ピッチの審議で可決された。
法案が正式に成立、発効すれば、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)の資金流入が加速するのは間違いない。既にジョージアには22年2月のロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアからの人やマネーの流入が急増していた。
就労に絡む滞在の規制が緩いジョージアは、リモートワークで生活するデジタル遊牧民に好まれてきた。最近はロシアマネーの流入による物価高騰で人気は下がったが、新制度が海外で資金運用する個人を引き寄せる可能性がある。
ただ、新制度が長期にわたって安定的に運用されるとの見方は少ない。現政権が導入を急ぐ背景に政治的な意図がちらつくためだ。
現在の与党「ジョージアの夢」を創設した大富豪で、同国の最高実力者と目されるイワニシビリ元首相は、国の国内総生産の2割以上に当たる資産をオフショアなどで持つとされる。
非政府組織(NGO)のトランスペアレンシー・インターナショナル(TP)ジョージアは21年、同氏が20のオフショア企業を所有していると指摘した。
イワニシビリ氏はロシアのプーチン政権との深いつながりが指摘され、近年は政府の強権化を主導してきた。米欧が人権弾圧につながると批判する反スパイ法案を可決すれば同氏は制裁対象になる可能性がある。
野党勢力は同氏が新制度を通じ、制裁を受ける前に自身の富を国内に持ち込もうとしていると批判する。
地元メディアによると野党議員のティナ・ボクチャバ氏は4月18日の議会で、与党は「イワニシビリ氏にマネーのオアシスをつくる法律を可決しようとしている」と批判した。
新制度によってジョージアが「将来的に(西側に)制裁されるだろう」との見通しも示した。
TPジョージアもジョージアが資金洗浄の拠点になりかねないとして、運用にあたっては高い透明性基準を確立する必要があると指摘している。
(トビリシで、田中孝幸)
[日経ヴェリタス2024年5月12日号]
日経記事2024.05.13より引用
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここにもお馬鹿とランプの影響が。