米国は中国製EVの流入から国内市場を守ろうとしている
【ワシントン=八十島綾平】
バイデン米政権は電気自動車(EV)などの戦略分野で、中国製品にかける制裁関税を引き上げる方向で近く見直す。
米通商代表部(USTR)が見直し作業を進めていた。米ブルームバーグ通信が報じた。
制裁関税は通常の関税に上乗せしてかけるもので、通商法301条に基づく措置。バイデン米大統領が14日にも公表する方向で調整しているもようだ。
バイデン氏やイエレン財務長官はかねて、中国製のEVや太陽光パネルについて、過剰生産やダンピング(不当廉売)として問題視してきた。
中国からの輸入乗用車に対して米国は、トランプ前政権時代から25%の制裁関税を通常の関税に上乗せしてかけている。バイデン氏は、この制裁関税部分を引き上げる。
中国製EVはインフレ抑制法(IRA)の税優遇措置の対象にもなっておらず、現在は米国内でほとんど流通していないとみられる。追加関税引き上げによる実質的な効果は不明で、11月の大統領選に向けた選挙戦略の色彩も濃い。
野党・共和党の議員からは、今年に入り中国製乗用車に制裁関税も含め125%を課す案や、1台あたり2万ドル(約310万円)の関税を追加でかける案などが出されていた。
与野党が保護主義的な政策を競う展開になっている。
バイデン氏は4月には、中国製の鉄鋼・アルミ製品に対する制裁関税を7.5%から3倍の20%超に引き上げる考えを表明していた。
この制裁関税も通商法301条に基づく措置で、元々はトランプ前政権が導入した後、いったん税率が引き下げられた経緯があった。
バイデン氏は4月の引き上げ表明時に、近く制裁関税全体の見直し案をUSTRが明らかにすると述べていた。
同氏はこのところ、トランプ前政権時代の国内産業育成・保護策について「十分ではなかった」「約束が果たされていない」と繰り返し批判している。