ホントは昼の部も観たかったんですよ。『夜叉ヶ池』は春猿さん主役だし、『海神別荘』は天野さん美術だし……。
歌舞伎は必ずオット同伴という条件があるものの(と言いつつ1回お忍びで観てるけどね
他のお忍び観劇は数知れず![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
)オットは、玉三郎さんや海老蔵さんにはさほど興味が無いので今回はパス。
それでも歌舞伎を観れないのが悔しいのか、
「昼か夜どっちか1つにしといてや」
えーーーーーーーー![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_z.gif)
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チケは切符引取機で当日発券ならバレないから、内緒で観てやろうと思ったら、
「新幹線の早得切符俺が買うてきたるわ。安うあげとかんとな。何時に着きたいんや」
えーーーーーーーー![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_z.gif)
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あんまり早いと「なんでそんな早う行かなあかんのや」って言われるだろうし、新幹線のチケを自分で買うって言い張ってもバレバレだろうし、たとえ自分で買っても「切符見せてくれ」って言うだろうし(電車オタなので)早得だと早い便に振り替えできないし………ちくしょぉーーーーーー。
てなわけで、夜の部のみの観劇となりました(『天守物語』は外せない!)
昼間は2つ前の記事に書いたように、観たかった若冲を堪能。
でも考えたら、朝から美術館巡りをしたいからって言って早く来て、昼の部観ちゃうこともできたのよねー
8/5にオットと国立劇場へ来るから、若冲はその時でもよかったんだし(土曜日だから博物館激込みか
)……全ては後の祭り![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/namida.gif)
って、前置き長すぎ。
山吹(やまぶき)一幕 泉鏡花 作(大正12年)
<主な配役>
辺栗藤次:中村歌六/島津正:市川段治郎/縫子:市川笑三郎
<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
修善寺温泉の裏路。子爵夫人の縫子は、同じ宿に滞在中の洋画家島津正を呼び止めます。自分は訳あって追われる身。死ぬ覚悟を決める短い間だけ、人目をしのぶため島津夫人と偽って同行させてもらえないか…。縫子の願いを戯れと思った島津は、きっぱり断り去って行きます。実は島津は、縫子が結婚前に密かに恋い焦がれていた相手でした。絶望した縫子は、そこに居たみすぼらしい人形遣いの老人辺栗藤次に声を掛け、自分の望みは叶わなかったから、お前の望みを叶えてやろうと持ちかけます。すると老人は縫子を山吹の花の咲く山中へ連れて行き、わが身を打ち据えてほしいと、縫子に頼みます。老人は、若き日に自分のせいでひとりの美しい女性を死なせた経験があり、その罪滅ぼしのために、美女に折檻されたいというのです…。
過去の恋に賭けようとして果たせなかった女性が、一転、煤けた老人に全人生を託す決意をするという、エキセントリックな魅力に包まれた作品。かつて玉三郎が縫子を演じたことがありますが、歌舞伎としては今回が初めての上演となります。
笑三郎さんが堂々の主役です![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
現代の和装と変わらない衣裳に束髪で大正浪漫の雰囲気バリバリ。島津の洋装はシャーロック・ホームズみたいだし………ここ、ホンマに歌舞伎座か?(笑)
笑三郎さん演じる縫子は此岸(しがん/現実世界)と彼岸との狭間を彷徨う危うさがよく出ていて、笑三郎さんの美しさがその危うさを一層引き立てていたように思います。
縫子が“狭間”なら、島津は“此岸”、藤次は“彼岸”。
他の作品と違って、『山吹』は妖怪変化・異形の者が出てこないんだけど、肉体はこの世にあってもこころは“彼岸”にある藤次がそれにあたるんでしょうね。
作品の特殊性からか、30年程前に2回しか上演されていなくて、2回とも藤次役が故・天本英世さんって、妙に納得![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
物語全体は、ひとりしっかと“此岸”に立つ島津が見ている束の間の夢か幻を私たちが見ているような雰囲気でしたね(もちろん島津にとっては夢まぼろしではないんだけど)
最後は縫子と藤次が連れ立って“彼岸”へと旅立っていくわけだけど(死ぬってことじゃないですよ)島津はどーすんのと思ってたら(原作読んでません
)自分が“此岸”にいることを確かめるかのように、実に現実的な台詞を呟いて幕。
えっ、そんなんでいいの???ってな感じで、一気に現実へ引き戻されましたよ。
実も蓋もありゃしないったら![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase1.gif)
原作も同じ台詞なんでしょうか。
まあ冷静に考えると、縫子は嫁ぎ先でのごたごたで(これ超現実的だわ)かなり精神的に病んでいて、そのためにいい目を見たのは願いが叶った藤次で、2人のとばっちりを受けたのが島津なわけで、あんな台詞を吐きたくなるのもわかる気がするんだけど![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
「この世の名残に」と、両手で島津の手を取って自分の頬につくかつかないかの処で、その手を愛おしむ縫子の表情がとても綺麗でした。
天守物語(てんしゅものがたり)一幕 泉鏡花 作(大正6年)
<主な配役>
天守夫人富姫:坂東玉三郎/姫川図書之助:市川海老蔵/近江之丞桃六:市川猿弥
奥女中薄:上村吉弥/小田原修理:坂東薪車/亀姫:市川春猿
十文字ヶ原朱の盤坊:市川右近/茅野ヶ原舌長姥:市川門之助
<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
武田播磨守五十万石の居城、白鷺城。その天守閣に住まう妖怪たちの長である天守夫人富姫のもとに、仲のよい妹分の亀姫が舌長姥や朱の盤坊を率いて訪れます。富姫は、播磨守が鷹狩りに用いた秘蔵の白鷹を奪い亀姫へ土産に与えますが、しばらくしてその鷹の探索の命を受けた播磨守の家臣・姫川図書之助が天守に登ってきます。そのすずやかな言動に感心した富姫は、図書之助を帰しはしたものの、心奪われます。そんな富姫の願いを叶えるかのように、播磨守の不興を買った図書之助が、小田原修理ら家臣に攻め込まれながら戻って来ます。富姫は大事な青面の獅子頭の母衣に彼を匿いますが…。
多くの鏡花作品にみられる、汚れた俗物ばかりの人間界と、高潔で清々しい魔物たちの世界の対比構造。その中でも白眉とされる本作は、玉三郎にとっても生涯の当たり役です。定評ある海老蔵の図書之助に加え、最後に登場する重厚な名工の桃六に猿弥が抜擢されるなど、新たな息吹を感じさせる配役にも注目が集まります。
ただただただただ、玉さまにウットリ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_heart.gif)
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この世のものではない“姫路の天守に住まう妖しの者・富姫”って、玉三郎さんにピッタリ、ていうか玉三郎さんにしかできません。
彼の非現実的なまでの美しさがあってこその『天守物語』なのだと思います。
美しい言葉の遣り取りや、次々と変わる富姫の綺麗で豪奢で実にセンスのいい衣裳。
舞台は富姫のいる天守閣のみで(ほんの少しだけ下層階になるけど)中央に獅子頭が据えてあるだけの板の間。その素っ気なさが、明るい時は富姫・亀姫の存在を際立たせ、夜の闇には清浄感さえ感じます。
簡素な舞台装置だと、その空間をどう埋めるかってそこにいる役者の力量がモノをいうんでしょうけど、玉三郎さんはお見事![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
夜の天守で、獅子頭の前にひとり佇む玉三郎さんの後姿は彼ではなく、“富姫”以外の何者でもありませんでした。
玉さまばっかりですいません。
もちろん春猿さんもよかったですよー。
高雅で清冽でしっとりとした富姫の美しさとは対照的に、真っ赤な打ち掛けの亀姫は、華やか艶やかながらも可憐で、とにかくカワイイったら![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_en.gif)
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美々しい2人が、実の姉妹の如く仲睦まじく寄り添ったり、とろとろと妖しいお喋りを繰り広げるのを眺めているのは、贅沢眼福癒しのひととき。
亀姫 おあねえさまは、私がお可愛うございましょう。
富姫 いいえぇ、お憎らしい。
亀姫 ま、御勝手。
富姫 やっぱり、お可愛いらしい。
なんて遣り取りが全然不自然じゃありません。
それに、2人揃って見せた後姿の立ち姿のこの上ない美しさったらもう![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kirakira.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kirakira.gif)
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ずっとオペラグラスが手放せませんでした![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
海老蔵さんもいつもの如く、顔良し声良し姿良しで言うことないです。
彼の図書之助はもちろん初めてなんだけど、涼やかな好青年がハマってました。
富姫に「帰したくない」と言わしめるだけの、佇まいがあったように思います。
異世界の者・妖しの者と人間との恋って悲恋で成就しないというのが定石なんだけど、これは意外にもハッピーエンドなんですね。
でも、この後のことを考えると下界の人間たちにとってはハッピーじゃないのか(笑)
★余話1
今回、ツケなし、大向こうなし、定式幕なし。マジで歌舞伎座か?って感じでした![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
★余話2
幕の内弁当状態だった(失礼)『六月大歌舞伎』とはうって変わって、大正時代の戯曲のみの『七月大歌舞伎』………ってもう歌舞伎じゃないですね![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
ただ、この4つの戯曲をあえて“歌舞伎座”でやることに意味があるんだろうけど。
★余話3
玉三郎さんの衣装は当たり役とか思い入れのある役のときは自前(!)だそうですが、今回の富姫の打ち掛けもそうだということをご贔屓ブログさんの記事で知りました。
その打ち掛けを作られた呉服屋さんのHPに、製作顛末記があったので興味のある方はどぞ。
銀座きものギャラリー泰三 坂東玉三郎さんの歌舞伎衣裳製作顛末記
“御簾に薬玉”はゴージャスでした。今回、観に行ったのが千穐楽間際なので筋書に舞台写真があって、もちろんこの“御簾に薬玉”も写ってます。
地は紫かなあ。照明の加減では黒っぽくも見えるんだけど。御簾の横縞として金?が入ってるからよくわかりません
とにかく綺麗です。高そうです(笑)
この打ち掛けは玉さまには実に映えるんだけど、春猿さんにはまだちょっと荷が重そう。
いつか春猿さんもこれを着て、富姫となる日が来るんでしょうか
歌舞伎は必ずオット同伴という条件があるものの(と言いつつ1回お忍びで観てるけどね
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
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それでも歌舞伎を観れないのが悔しいのか、
「昼か夜どっちか1つにしといてや」
えーーーーーーーー
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チケは切符引取機で当日発券ならバレないから、内緒で観てやろうと思ったら、
「新幹線の早得切符俺が買うてきたるわ。安うあげとかんとな。何時に着きたいんや」
えーーーーーーーー
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_z.gif)
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あんまり早いと「なんでそんな早う行かなあかんのや」って言われるだろうし、新幹線のチケを自分で買うって言い張ってもバレバレだろうし、たとえ自分で買っても「切符見せてくれ」って言うだろうし(電車オタなので)早得だと早い便に振り替えできないし………ちくしょぉーーーーーー。
てなわけで、夜の部のみの観劇となりました(『天守物語』は外せない!)
昼間は2つ前の記事に書いたように、観たかった若冲を堪能。
でも考えたら、朝から美術館巡りをしたいからって言って早く来て、昼の部観ちゃうこともできたのよねー
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_gaan.gif)
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って、前置き長すぎ。
山吹(やまぶき)一幕 泉鏡花 作(大正12年)
<主な配役>
辺栗藤次:中村歌六/島津正:市川段治郎/縫子:市川笑三郎
<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
修善寺温泉の裏路。子爵夫人の縫子は、同じ宿に滞在中の洋画家島津正を呼び止めます。自分は訳あって追われる身。死ぬ覚悟を決める短い間だけ、人目をしのぶため島津夫人と偽って同行させてもらえないか…。縫子の願いを戯れと思った島津は、きっぱり断り去って行きます。実は島津は、縫子が結婚前に密かに恋い焦がれていた相手でした。絶望した縫子は、そこに居たみすぼらしい人形遣いの老人辺栗藤次に声を掛け、自分の望みは叶わなかったから、お前の望みを叶えてやろうと持ちかけます。すると老人は縫子を山吹の花の咲く山中へ連れて行き、わが身を打ち据えてほしいと、縫子に頼みます。老人は、若き日に自分のせいでひとりの美しい女性を死なせた経験があり、その罪滅ぼしのために、美女に折檻されたいというのです…。
過去の恋に賭けようとして果たせなかった女性が、一転、煤けた老人に全人生を託す決意をするという、エキセントリックな魅力に包まれた作品。かつて玉三郎が縫子を演じたことがありますが、歌舞伎としては今回が初めての上演となります。
笑三郎さんが堂々の主役です
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
現代の和装と変わらない衣裳に束髪で大正浪漫の雰囲気バリバリ。島津の洋装はシャーロック・ホームズみたいだし………ここ、ホンマに歌舞伎座か?(笑)
笑三郎さん演じる縫子は此岸(しがん/現実世界)と彼岸との狭間を彷徨う危うさがよく出ていて、笑三郎さんの美しさがその危うさを一層引き立てていたように思います。
縫子が“狭間”なら、島津は“此岸”、藤次は“彼岸”。
他の作品と違って、『山吹』は妖怪変化・異形の者が出てこないんだけど、肉体はこの世にあってもこころは“彼岸”にある藤次がそれにあたるんでしょうね。
作品の特殊性からか、30年程前に2回しか上演されていなくて、2回とも藤次役が故・天本英世さんって、妙に納得
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
物語全体は、ひとりしっかと“此岸”に立つ島津が見ている束の間の夢か幻を私たちが見ているような雰囲気でしたね(もちろん島津にとっては夢まぼろしではないんだけど)
最後は縫子と藤次が連れ立って“彼岸”へと旅立っていくわけだけど(死ぬってことじゃないですよ)島津はどーすんのと思ってたら(原作読んでません
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_gaan.gif)
えっ、そんなんでいいの???ってな感じで、一気に現実へ引き戻されましたよ。
実も蓋もありゃしないったら
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase1.gif)
原作も同じ台詞なんでしょうか。
まあ冷静に考えると、縫子は嫁ぎ先でのごたごたで(これ超現実的だわ)かなり精神的に病んでいて、そのためにいい目を見たのは願いが叶った藤次で、2人のとばっちりを受けたのが島津なわけで、あんな台詞を吐きたくなるのもわかる気がするんだけど
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
「この世の名残に」と、両手で島津の手を取って自分の頬につくかつかないかの処で、その手を愛おしむ縫子の表情がとても綺麗でした。
天守物語(てんしゅものがたり)一幕 泉鏡花 作(大正6年)
<主な配役>
天守夫人富姫:坂東玉三郎/姫川図書之助:市川海老蔵/近江之丞桃六:市川猿弥
奥女中薄:上村吉弥/小田原修理:坂東薪車/亀姫:市川春猿
十文字ヶ原朱の盤坊:市川右近/茅野ヶ原舌長姥:市川門之助
<あらすじとみどころ>(歌舞伎座HPより)
武田播磨守五十万石の居城、白鷺城。その天守閣に住まう妖怪たちの長である天守夫人富姫のもとに、仲のよい妹分の亀姫が舌長姥や朱の盤坊を率いて訪れます。富姫は、播磨守が鷹狩りに用いた秘蔵の白鷹を奪い亀姫へ土産に与えますが、しばらくしてその鷹の探索の命を受けた播磨守の家臣・姫川図書之助が天守に登ってきます。そのすずやかな言動に感心した富姫は、図書之助を帰しはしたものの、心奪われます。そんな富姫の願いを叶えるかのように、播磨守の不興を買った図書之助が、小田原修理ら家臣に攻め込まれながら戻って来ます。富姫は大事な青面の獅子頭の母衣に彼を匿いますが…。
多くの鏡花作品にみられる、汚れた俗物ばかりの人間界と、高潔で清々しい魔物たちの世界の対比構造。その中でも白眉とされる本作は、玉三郎にとっても生涯の当たり役です。定評ある海老蔵の図書之助に加え、最後に登場する重厚な名工の桃六に猿弥が抜擢されるなど、新たな息吹を感じさせる配役にも注目が集まります。
ただただただただ、玉さまにウットリ
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この世のものではない“姫路の天守に住まう妖しの者・富姫”って、玉三郎さんにピッタリ、ていうか玉三郎さんにしかできません。
彼の非現実的なまでの美しさがあってこその『天守物語』なのだと思います。
美しい言葉の遣り取りや、次々と変わる富姫の綺麗で豪奢で実にセンスのいい衣裳。
舞台は富姫のいる天守閣のみで(ほんの少しだけ下層階になるけど)中央に獅子頭が据えてあるだけの板の間。その素っ気なさが、明るい時は富姫・亀姫の存在を際立たせ、夜の闇には清浄感さえ感じます。
簡素な舞台装置だと、その空間をどう埋めるかってそこにいる役者の力量がモノをいうんでしょうけど、玉三郎さんはお見事
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hakushu.gif)
夜の天守で、獅子頭の前にひとり佇む玉三郎さんの後姿は彼ではなく、“富姫”以外の何者でもありませんでした。
玉さまばっかりですいません。
もちろん春猿さんもよかったですよー。
高雅で清冽でしっとりとした富姫の美しさとは対照的に、真っ赤な打ち掛けの亀姫は、華やか艶やかながらも可憐で、とにかくカワイイったら
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_en.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_en.gif)
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美々しい2人が、実の姉妹の如く仲睦まじく寄り添ったり、とろとろと妖しいお喋りを繰り広げるのを眺めているのは、贅沢眼福癒しのひととき。
亀姫 おあねえさまは、私がお可愛うございましょう。
富姫 いいえぇ、お憎らしい。
亀姫 ま、御勝手。
富姫 やっぱり、お可愛いらしい。
なんて遣り取りが全然不自然じゃありません。
それに、2人揃って見せた後姿の立ち姿のこの上ない美しさったらもう
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kirakira.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kirakira.gif)
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ずっとオペラグラスが手放せませんでした
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海老蔵さんもいつもの如く、顔良し声良し姿良しで言うことないです。
彼の図書之助はもちろん初めてなんだけど、涼やかな好青年がハマってました。
富姫に「帰したくない」と言わしめるだけの、佇まいがあったように思います。
異世界の者・妖しの者と人間との恋って悲恋で成就しないというのが定石なんだけど、これは意外にもハッピーエンドなんですね。
でも、この後のことを考えると下界の人間たちにとってはハッピーじゃないのか(笑)
★余話1
今回、ツケなし、大向こうなし、定式幕なし。マジで歌舞伎座か?って感じでした
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
★余話2
幕の内弁当状態だった(失礼)『六月大歌舞伎』とはうって変わって、大正時代の戯曲のみの『七月大歌舞伎』………ってもう歌舞伎じゃないですね
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
ただ、この4つの戯曲をあえて“歌舞伎座”でやることに意味があるんだろうけど。
★余話3
玉三郎さんの衣装は当たり役とか思い入れのある役のときは自前(!)だそうですが、今回の富姫の打ち掛けもそうだということをご贔屓ブログさんの記事で知りました。
その打ち掛けを作られた呉服屋さんのHPに、製作顛末記があったので興味のある方はどぞ。
銀座きものギャラリー泰三 坂東玉三郎さんの歌舞伎衣裳製作顛末記
“御簾に薬玉”はゴージャスでした。今回、観に行ったのが千穐楽間際なので筋書に舞台写真があって、もちろんこの“御簾に薬玉”も写ってます。
地は紫かなあ。照明の加減では黒っぽくも見えるんだけど。御簾の横縞として金?が入ってるからよくわかりません
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ase.gif)
この打ち掛けは玉さまには実に映えるんだけど、春猿さんにはまだちょっと荷が重そう。
いつか春猿さんもこれを着て、富姫となる日が来るんでしょうか
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_yoka.gif)
相変わらず旦那さんステキ!←どういう意味でやねん!(笑)
夏の上野には近寄れない(ただ暑くて外出を渋っているだけ)若冲はパスだ…。なんで秋にやらんのだ!
>島津の洋装はシャーロック・ホームズ
しかも事件解決できそうにない感じ…。ワトソン君がいないからか。
>故・天本英世さんって、妙に納得
その配役で観たかったです!
富姫の打ちかけ新調情報を去年キャッチした時から、もうそろそろか…とドキドキしてたのです。
昼の部は、私の拙いレポでよかったら読んでやって下さい。
コメント&TBありがとうございます!
今回オットにはやられましたよ(笑)
段治郎さんは背が高くスタイルがいいので洋装もバッチリなんですけど、確かに事件解決できなさそう
>打ちかけ新調情報を去年キャッチ
うっ
去年は耕史君のおかげで歌舞伎がかなり蔑ろでした
>私の拙いレポ
何を言わはるやら(笑)
いつも楽しませていただいてます。
こちらこそまともな感想になってなくって申し訳ないです
お初で失礼ながら、水無月さんもかなりの”美”を語る方とお見受けしました。
>いつか春猿さんもこれを着て、富姫となる日が来る>んでしょうか
もしかしたら・・・そのお姿を見るためだけに「ただ長生きがしたい」なんて。
そういえば天本さんって、亡くなられたんですよね、ずいぶん前に。
いつかNHKハイビジョンででもやってくれないかなあ(涙)。
劇画の池上遼一が「天守物語」をマンガ化したのを読んだことがありますが、富姫と図書之助の話だけに絞ってあったばかりか、最後は2人が心中して終わり。しかも討手が天守にたどり着いてみると、そこには図書之助の死骸があるばかりであったという、待たんかこら!と言いたくなる脚色でした(汗)。
お名前はかしまし娘さん宅で拝見して存じ上げております。
>かなりの”美”を語る方とお見受けしました。
いやいやとんでもないです
美しいものは大好きですけど、その美しさを表現する言葉にいつも四苦八苦してますよ。
春猿さんの富姫はいつか実現すると思ってるので、長生きしないと
天本さんが亡くなられたのは3年程前でしょうか。
“おじいちゃん”な印象しかないんですが、若い頃の写真を拝見するとかなりのイイ男です
若い頃だと“藤次”はちょっと想像できませんね。
おそらくスカパーの歌舞伎専門ch。
スカパー未契約なので、私もNHKでの放送を希望します(笑)
これは何度でも観たいですね
>最後は2人が心中して終わり
おいおい
せっかくのハッピーエンドがどーしてそうなる
でもねー悲恋で終わるセオリーの方がウケるのは否めないわけで……(溜息)
>“御簾に薬玉”はゴージャス.....こういう色使いたまらなく好きなんです。そこでこのお姿の舞台写真、ちゃんと買ってしまいました。大奮発して一等席で観たために双眼鏡を出しておかなかったのが失敗。背中の刺繍をもっとアップで見たかった。いつもの3階席の方が双眼鏡でしっかりチェックできただろうになあと慣れない席で見るとこういう不便も感じたのでありました。でも肉眼だけで歌舞伎座の舞台を観るというたまの贅沢だったのだからいいことにしました。白に龍を手描きされた方の打ち掛けはあまり写真として見栄えがしないです。舞台ではいいんですけどね。
『海神別荘』の天野さんのデザインすごかったです。私なかなかこういうのないからってこれで玉三郎・海老蔵・笑三郎の写真を3枚買ってしまったほどです。こちらは海老蔵が異界の者で主役、玉三郎が人間で相手役と『天守物語』の反対の設定でした。海老蔵くんも澤潟屋の若手同様鍛える対象ということですね。海老蔵は今まで観た中で今月が一番よかったです(私の記事の中の誉め方がちょっと変かしら?)。
『天守物語』だけもっと豪華キャストにして新生歌舞伎座の杮落とし公演に上演したらというすごいキャンペーンしております(笑)
カキコは、お久し振りです。
(^^;
夜の部しか観れなくて、やっと「山吹」の感想をアップしたので
トラバさせていただきます。
最後のオチがアレで良かったのか?!ということもあるのですが。
自分の感想を上げて、ヨソ様を色々拝見してると、思うことも、
色々出てきますね。
一度、文章でキチンと噛み締めなくちゃなぁと考えたり…。
でも、笑三郎さんには期待しています。
(*^^*)
コメント&TBありがとうございます!
私も一等席で観たかったんですが、オットのお達しで二等席
17列目の中央寄りだったので、舞台全体が見渡せて“観劇”にはとてもいい位置だけど、“美しい海老玉を鑑賞”するにはちょっと遠かった
あの打ち掛けはホントに素敵ですね。
舞台写真は買わなかったんですが(買い出すときりがなくて
天野さんは20年程前にある小説のイラストで知ってからのファンなので『海神別荘』は是非観たかったです。
>『天守物語』だけもっと豪華キャストにして新生歌舞伎座の杮落とし
これいいですね~~~
実現したら絶対一等席で観たいです!(チケ大争奪戦必至ですね)
コメント&TBありがとうございます!
『山吹』の世界は、他の3作品に比べると一筋縄ではいかない内容ですね。
あのラストの受け止め方も、観る側の姿勢がすごく問われる気がします。
はっきり言って難しい~~~~
笑三郎さんは、今後の成長が楽しみな役者さんですよね