月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『瓜生山歌舞伎・市川亀治郎の挑戦』@京都芸術劇場 春秋座・7/31昼の部(追記あり)

2006-08-06 02:39:18 | 歌舞伎Review
このくそ暑い時期に春秋座のあの階段は昇りたくないわーー(-_-;)……って、元々オットも私も都合が悪くて瓜生山は観れず、国立だけで我慢するつもりでした。が、7/24の休日が職場の都合で7/31に変更になったので、早速ぴあでぽちっと……もちろんオットには秘密です(笑)

ホントは、7/30の公演終了後のポストパフォーマンス・トークを聴きたかったんだけどね。
タナボタ観劇なので贅沢言ってられません
トークについては、rikaさん詳細なレポを書いてくださってます。ありがたいです。
一番のツボは仁左衛門さんの「いや、知らん」(笑)


春秋座は初めて。座席の前にかなり余裕があるのがデカイ私としては嬉しいです。
地下ギャラリーでやっていた、亀治郎さんの写真展を拝見しました。やっぱり女方の拵に目がいっちゃうな~。人形振りの八百屋お七は本当に文楽の人形みたい『児雷也~』の綱手もよかったです。
京都らしく、観客の中には芸妓さんや舞妓さんがちらほらと。
着物を着慣れてる方が多かったですね。土地柄でしょうね。御園座も着物率高いけど、普段着ないひとが(着る機会がないのよ、名古屋じゃ)ここぞとばかりに頑張って着物を着るので、イマイチな感じなのが多くって
終演後、ロビーで段四郎さんと竹三郎さんを見ました。ご贔屓筋の方々と挨拶を交わされていて、とても声なんか掛けられませんでしたよ。


奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)
三段目 袖萩祭文(そではぎさいもん)の場
<主な配役>
桂中納言教氏実は安倍貞任、貞任妻袖萩(二役):市川亀治郎
平仗直方:市川段四郎/直方妻浜夕:坂東竹三郎
外ヶ浜南兵衛実は安倍宗任:中村亀鶴/八幡太郎義家:片岡愛之助

<あらすじとみどころ>(『瓜生山歌舞伎』チラシより)
安部一族の反乱を描いた『奥州安達原』。今回の舞台は全五段のうち、三段目にあたる「袖萩祭文」である。
浪人者と駆け落ち同然で家出、子供まで成したというのに夫は行方知れず、病で盲目となり今は三味線の弾き語りをし物乞いに落ちぶれてしまった袖萩。袖萩の父は皇子を誘拐された責任をとって切腹。皇子を誘拐したのは実は袖萩の夫・源氏に敵対する奥州の豪族安部貞任だったという悪縁。愛を貫いただけなのに…。袖萩の悲しい女の物語。袖萩に救いはあるのだろうか。
袖萩と貞任はひとり二役で演じられることが多く、亀治郎も二役に挑戦する。
歴代の名優が好んで演じたこの芝居の魅力はどこにあるのか。亀治郎がその秘密を解き明かしてくれるにちがいない。


NHK大河ドラマ『炎立つ』が好きで、なかでも愛しの浩市っちゃん(佐藤浩市)の源義家がお気に入りで、それから歴史上の好きな人物に義家が加わりました(なんてミーハー)
その役を、これまた愛しのらぶりんがやるなんていと嬉し
てなわけで『奥州安達原』の歴史的背景&実在の登場人物に関しては情報バッチリなんだけど、演目自体は初見なので『歌舞伎手帖』や過去の感想記事等でちょっと予習。

始まって数分……あれ?袖萩とお君ちゃんは?
義家と宗任と教氏がもう出てきてなんだかんだやってるんですけど………これって三段目だけじゃなくってなんか増えてる?あーでもわかりやすいかのも。
と、早々に愛之助さんも出てきたことだしがっつり観て(笑)そうこうするうちに花道から袖萩とお君ちゃん登場。ここまで15分~20分くらい?

この増えてる部分に関しては、帰宅してrikaさんのトークレポを観たら、亀治郎さんが説明してくれてました。三段目は袖萩の出から始まるけど観客にはわかり辛いので、一幕で物語がわかるように台本12ページにまとめたものを導入部にしたそうです。
そーいうことは早よゆうてくれと思ったけど、筋書きの亀治郎さんの挨拶文にもそれらしいことが書いてあったわ

もちろんメインターゲットは愛之助さん。
でも、役どころが“ゆらぎのない正義”で、動きも少なく常に上段から見据えてる状態が殆どなので、役としての面白みよりビジュアル重視となりました
“動”の貞任・宗任に対しての“静”の義家。
なかなか難しい役だったと思います。
rikaさんが心配されてた例の衣裳は、染五郎さん@義家(正月の歌舞伎座でしたっけ?)の写真で一応知ってたんだけど……まあ、問題ないんではないでしょか?イイ男は何着ても似合うっつーことで(笑)
教氏の正体を見破るとこからは、姿も声もぐっとテンションアップで本領発揮
金の烏帽子、白袴、薄紫に金糸の陣羽織のいくさ支度も凛々しく、最後にお君ちゃんを自分の傍らに寄せる時、伏目がちでお君ちゃんを見るお顔の優しく美々しいことといったらもう あ、宗任解き放ちの「いずくへなりとも勝手にゆけぃ」の前に、ほんの少し見得をきる時の流し目も素敵でした
いつものいいお声も堪能したけど、声に関しては今回は亀鶴さんに軍配。亀鶴さんが元気いっぱいの役なのでしょうがないか。

亀鶴さんは、こういう豪胆で勇壮で、とにかく元気(笑)で前のめりの役(爆)が、ホントによくお似合いです 赤っ面に仁王襷の衣裳もよくお似合い。これ、何かに似てるなあ…………あ!ねぶただ、青森の(失礼)
声がやっぱりいいですねー。しっかりすっきりさっぱりよく通る上に、デカイ大声の台詞って、濁ったり響きすぎたりして聴きづらいことが多いのに、亀鶴さんはそういうことが全然ないの。本人の鍛錬もあるんでしょうが、もともとの声質もいいんでしょうね。

亀治郎さんは本来、袖萩→教氏→貞任のところを入りに教氏が加わって、八面六臂の大活躍。
特に、義家に正体を見破られて、衣裳のぶっかえりから最後の見得までとてもスピーディーでテンポよく目が離せませんでした。
教氏→袖萩への切替(その逆も)ってかなり大変だと思うけど、花道から出てきた袖萩の、娘お君に引かれるその手は既にめしいた弱々しい女のもの。見事です。

袖萩が娘と共に袖萩から教氏への早変わりって、一旦袖萩が引っ込んで、次に手拭いを被って顔を見せずに出てきた時はもう亀治郎さんじゃなかったのねー。
袖萩が外にいるのに、教氏が奥から出てきて「あれっっ?」(笑)「あ、そういえば1回舞台から消えたわ」とこの時点で気づいた私ってば相当とろいぞ
この後、虫の息の袖萩と貞任(もう正体ばれてるので教氏じゃない)が後ろ向きに並んで袖萩の台詞があるんだけど、もちろん貞任の亀治郎さんが袖萩の台詞を言うんですよね。貞任が刀を構えたまま微動だにしないから、ここだけ観たら本当に袖萩(早変わり後は千壽郎さんだったのね)がしゃべっているようです。……これ、反対側から観てみたい(笑)

祭文を唄いながら三味線を弾くところは、ときどきあれ?な音もあった(と思う)けど頑張って弾いていらっしゃったのでは?連弾(とは言わないかもしれないけど)ばかりでなく、竹本の三味線との掛け合いもあって、気合入ってるなーと感心しきり。

早変わりならではなんだろうけど、へぇ~と思ったことがひとつ。
入りの教氏の眉の部分ってシールなんですね(眉というより額全体)
この後、眉を描かない袖萩になるから、教氏の眉が描いてあるのを落として白塗りを直して、って時間がないからでしょうね。
他の演目でもやるのかもしれませんが、まともに見たのはこれが初めてだったのでへぇ~ボタン10くらい押しましたよ

かかさまはこの辺にしてお君ちゃん。
「かかさま、いの~」にはヤラれましたよ。
あと、手拭いで袖萩に雪がかからないようにするとことか、自分の着物を脱いで袖萩に掛けるとことか、戸を叩いた袖萩の手をさするとことかetcetc……。
子役の出番が長くて、おまけに“待ち”があって何かしてまた“待ち”があってという、普通の劇と違う段取りの多さにビックリ。終演後に「子役が巧すぎて面白くない」っていう会話を聞いたけど、これ巧くなかったらヤバイって
お君ちゃんのあれやこれやでは、あちこちからすすり泣きが…
男性の方が結構ぐすぐす。前の席の男性5人全てが、眼鏡(だったのよ)をちょっと上に上げて目頭を押さえてましたよ(ぐすぐすしながらも妙に冷静に観察するわたくし)
最後の方で、貞任の束帯の裾を引っ張ったり踏んだりもよかったです

あとは竹三郎さんにもヤラれました。
竹三郎さんの浜夕の拵には、厳しさや凛とした強さが見えます。
それが返って、直方や袖萩やお君に対する情の深さを引き立ててるように思いました。
素晴らしいです。言うことないです。
言うことないって言うのもおこがましいけど、段四郎さんも同じく。
こういう方々が後ろでがっちり支えてくれるから、若手がのびのびやれるんですよね。


常磐津松廼羽衣(まつのはごろも) 常磐津連中
<主な配役>
天女:市川亀治郎/伯龍:片岡愛之助

<あらすじとみどころ>(『瓜生山歌舞伎』チラシより)
漁夫伯龍に羽衣をかえしてもらおうと必死の天女が優美に舞い踊るという舞踊。伴奏曲の常磐津は三味線の聴き所が多い名曲。亀治郎が春秋座の舞台機構をいかした新演出で春秋座版松廼羽衣を見せる。

【天女】
綺麗な薄いピンク色(本来鴇色なのかもしれないけど、ピンクにしか見えない)に金糸銀糸の浜千鳥模様の着物、帯は黒地に、金・赤・緑の花(?)模様。
途中で白拍子の水干のような、白っぽい絽か紗(?)の上着を羽織って、頭に瓔珞のたくさんついた金色の宝冠が乗ってました。

【伯龍】
水色の肩衣(銀糸が入ってるのか少し光沢あり)、練色地に黄土色×茶色×桔梗色の格子模様の小袖、練色の小袴。髪は町人髷の髷の部分を茶筅に下ろした感じ(?/違ってたら失礼。武家結いの茶筅だったかも。凝視してたのに何故うろ覚え

舞台装置も照明も、衣裳も亀治郎さんも愛之助さんも、とにかくなんもかんもが美しく、最初っから最後まで終始うっとりーーーーー
亀治郎さんの意向もあって、伯龍の踊りは通常の5倍くらいになったそうです(rikaさんのトークレポ参照)
亀治郎さんに大感謝(笑)
こういう踊りだけのものって眠くなることが多いんだけど(汗)今回はもう全然(六月の『君が代松竹梅』も眠くなかったけどさ。好きな人が踊ってれば無問題なのかも)
しょっぱなから、愛之助さんが花道から登場で、涼しい声で(図書之助かい)自己紹介。
ソロパートも思ったより多く、天女との絡みも多く(さすが5倍)亀治郎さんとの息もぴったりで、久々に“踊る”愛之助さんを堪能

松がはけてからの舞台は、綺麗なコバルトブルーの背景にスモークがたかれライティングも歌舞伎っぽくなく、モダンダンスやコンテンポラリーダンスの舞台のようで新鮮でしたね。
羽衣を返してもらって満足げに艶然と微笑んで、宙乗りで天へ帰っていく天女は見応えあり。
いいものを見せていただきました。
しかしながら、ただひとつツッコミ処が……。
宙乗りのワイヤーの取り付けは七三でやらなくてもいいんでは?
下手の少し引っ込んだところでもできそうだったんだけど………まあ、装置上の問題でそうぜざるを得なかったのかもしれませんが


とりあえず追記終了です。
8/5に国立の方も見てるので、後日そちらも記事UPします。
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4 コメント

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わー羨ましいーーーー(笑) (rika)
2006-08-06 09:11:19
水無月さん、こんにちは。



今度はこちらが「わー羨ましいーーーー」です。瓜生山に国立まで行かれるなんて~~。

私、瓜生山の「奥州安達原」の感想は書いたのですが、「松廼羽衣」の方は花道に愛之助さんが出てきた時点で、

「きれ~~~や~~。」とポ~~~としてしまい、他のことあんまり覚えてないんですよ~(笑)。

こちらでお衣装のことやらいろいろ詳しく教えてもらえて感謝です。ひとつだけ書かないのは気持ち悪いのでがんばって「松廼羽衣」も書かないと・・・・。



それと、水無月さんご迷惑でなかったら1度メールを送らせていただいてもよろしいでしょうか??折り入ってご相談が・・・・(ウソです・・・・笑)。
返信する
rikaさんへ (水無月)
2006-08-06 22:18:15
コメントどうもです!



rikaさんの「奥州安達原」の記事UPは知ってたんですけど、自分の記事UPしたら拝見させていただきますね。ひとが書いた感想記事を読んじゃうと、「私が書かなくてもいいか」なんておもっちゃうので(笑)



>「きれ~~~や~~。」

いやもうほんまに

記事頑張って書いてね(笑)



>折り入ってご相談が・・・・(ウソです・・・・笑)。

メールはもうなんぼでもどうぞ

相談て何かしら……あ、「ウソです」って書いてあるー(笑) 
返信する
はじめまして風知草のとみといいます。 (とみ)
2006-08-24 23:42:04
>水無月さま

はじめまして,風知草のとみといいます。

上方で雑食系の観劇ブログを細々とやっています。立ち回りさきですれ違っておりますが,一度ゆっくりお邪魔させて頂きたいと思っておりました。

昨日よりテンプレを金魚に変えましたので,金魚つながりでリンクさせていただけたらうれしいです。

観劇記は感謝と愛とエスプリを込めて簡潔を心懸けています。よろしくお願い致します。
返信する
とみさんへ (水無月)
2006-08-26 17:51:51
いらっしゃいませ

コメント&TBありがとうございます!



立ち回り先でお見かけしているので、名前は存じ上げていますよ~。

私はもともと歌舞伎やその他の舞台は観てたんですが、ブログを始めたきっかけは山本耕史なので、そちらがメインになっています。

最近はかなり雑食系記事になってきましたが……。



>感謝と愛とエスプリを込めて簡潔を心懸けて

これ素敵ですね。

“簡潔”に纏めたいとは思っていますが、ついつい書きすぎてしまいますね



私の場合、雑食というよりただのミーハーに近いんでお恥ずかしい限りなんですが、今後ともご贔屓の程よろしくお願い致します。
返信する

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