2019年のブログです
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十川幸司さんの『フロイディアン・ステップ-分析家の誕生』(2019・みすず書房)を読みました。
十川さんは精神分析を個人開業されているかたで、いわばフロイトさんと同じ立場で精神分析を実践されているかた。
日本では、藤山直樹さんや松木邦裕さんが同じ立場ですが、臨床のかたわら、フロイトさんの理論を深く理解していくという点でもお二人と共通しています。
じーじは十川さんの『思考のフロンティア・精神分析』(2003・岩波書店)や『来るべき精神分析のプログラム』(2008・講談社)を読んで、十川さんのフアンになりました。
その地に足がついた文章といいますか、借り物でない、自分の文章を書いていらっしゃるというところに魅力を感じます。
十川さんの、臨床と思索の中で練りに練られた独自の文章の力には本当に圧倒されますし、それは心地よい驚きでもあります。
前に一度、精神分析学会で十川さんと藤山さんがお話をしている分科会に参加をしましたが、お二人の創造的な会話の中に浸れて幸せだったことを思い出します。
さて、本書、その戸川さんが渾身の力で、フロイトさんを読解し直した力作、なかなか難解で、じーじのような初学者には2割も理解できたかどうか。
もっともっと、臨床経験を積み、読み込んでいかなければ理解できないレベルの本のようです。
有名なドーラさんの症例や狼男さん、シュレーバーさんの症例などをはじめとして、フロイトさんの症例と理論を十川さんは丁寧に読み込みます。
フロイトさん自身が症例を理解する中で自らの理論を更新していった、と十川さんは述べますが、おそらく読者も同じことをしていくことが大切だとおしゃっていらっしゃるように感じます。
そういう意味では、臨床の中でしか理論は深まらないのだろうと思いますし、その良きお手本を十川さんが示してくださっているように思います。
じーじもさらに経験と勉強を重ねていこうと思いました。 (2019. 10 記)