中間玲子のブログ

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名前の訳し方:『チョコレート工場の秘密』より

2010-05-19 23:15:30 | トリヴィア
チョコレート工場の秘密』には、
チョコレート工場に招待される5人の子どもが登場します。
登場する子どもの名前はそれぞれ、
 チャーリー・バケツ、
 オーガスタス・ブクブトリー、
 イボダラーケ・ショッパー、
 バイオレット・アゴストロング、
 マイク・テレヴィズキー
です。

本のあとがきに、訳者・柳瀬尚紀さんが、
なぜこのような名前にしたのかについての説明していました。

とても面白かったので、この本にまつわるトリヴィアとして
そのまま紹介しましょう。

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 順に説明します。
 まずこの横文字Charlie Bucket--これをふつうに片仮名にすると、チャーリー・バケット(もしくはバキット)です。しかしこれでは面白くない。いや、面白くないだけでなく、ちゃんと翻訳したことにならないんです。
なぜかといえば、バケットBucketというのは目本では昔からバケツといっている、そうそう、あれです。バケツなんて、苗字にしては変でしょう? ぼくの書斎にはアイルランドのダブリンやニューヨークの電話帳がありますが、それを見てもバケットさん、つまりバケツさんはいない! 今ではインターネットという便利なもので、イギリスのロンドンをはじめ、ほとんどの都市の電話番号も調べられますが、それで検索してもバケツさんはいない! イギリスじゅうの珍名さん奇名さんを調べればいるかもしれないが、まあ、いないと考えていいでしょう。そんな苗字はありっこないという面白さ、それを翻訳すると、チャーリー・バケツ君でなくてはならない。
ちなみに、ダール(原作者)は、作品のモデルを電話帳で探したそうです。バケット、つまりバケツさんがいないのを確かめたにちがいありません。
 次はAugustus Gloop――片仮名にすればオーガスタス・グループです。オーガスタスは、よく見かける立派な名です。名字のグループですが、そのまま片仮名にしても、日本語だと集まり・仲間の意味にしかなりませんね。
これも空想の苗字です。グラップGlopという英語があります。どうにもまずくて食べられない食べ物の意味です。やはり同じ意味で、グープGoopという英語もあります。全身食い意地の坊やに似つかかしい苗字でしょう? なお、グープには間抜け・鈍感の意味もあります。このグラップとグープの二つを合成したのがグループです。つまり、ブクブトリー。
 次のVeruca Salt――片仮名にすればヴェルーカ・ソールトです。そのままでは、ちっとも面白くないですね。実は、Rが一つ多いヴェルーカVerrucaという英語があるのです。疣(いぼ)、胼胝(たこ)の意味です。苗字のソールトは塩ですね。なぜ塩かといえば、このおやじさんはビーナツで成功した。ピーナツに塩をまぜるところが出てきましたね。成金趣味のしょっぱい味がする。かくて、イボダラーケ・ショッパー。
 次の横文字はViolet Beauregarde――片仮名にすればバイオレット・ボウリガード。バイオレットは菫(すみれ)ですから、きれいな名です。実際、このボウリガードBeauregardeには、フランス語ボー・ルガールBeau Regardがちらり見えます。このフランス語の意味は「美しい視線」になりますから、美目(みめ)さんでしょうか。しかし、先ほどお話ししたように、ブラックユーモア、こげ茶色ユーモアですから、さて、ほんとうは……。(中略)
それからアメリカの新聞連載漫画に「ポ(ウ)ゴ(ウ)」というのがあって、それにボウリガードBeauregardという猟犬が出てきます。作者ロアルド・ダールは、ウェールズ生まれのイギリス人ですが、「ニューヨーカー」というアメリカの雑誌から出発した作家です。読者が、特に子供たちが、この猟犬ボウリガードを知っていると思って、それをもじったユーモアかもしれません。
で、ばくの訳ではバイオレット・アゴストロング。
 次はMike Teavee――マイク・ティーヴィー。マイクはよくある名前ですね。苗宇のTeaveeは、もらろんTVです。かくて、マイク・テレヴィズキー。

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これをトリヴィアネタといっては失礼ですね。
なんともマニアックな仕事へのこだわりがすばらしいです
訳者の力によって、訳書であっても、
それぞれの人を象徴する名前を楽しみながら読む事ができるように
作られていたことを知ったのでした。

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