どんまい

いろいろあるけれど、それでいい。

河童のかわぐちくん(4)

2011年02月25日 | rakuunanzyuku
川の底が目で確認できた時点で、
俺は河童の肩から飛び降りて、
「グンバズラアアアアア」って、
訳のわからない奇声を発しながら一目散に逃げた。
後ろも振り向かずにな。

そこにTシャツがあることも忘れ、
靴があることも忘れ、
自転車があることも忘れて、
とにかく猛烈なダッシュをかました。
たぶん、今まで、走った中で一番速かったんじゃないかなあ。

人も車も通るような大きな道路まで走って、もう大丈夫だろうと後ろを見た。
河童の姿はなかった。
逃げている時も、もしかしたら河童は追いかけてこなかったのかもしれない。

海パンだけの姿で、家に帰ることにした。
アスファルトを裸足で歩くのは痛かった。

夕飯の頃には、
いつもの夏休みに戻って、
気持ちも落ち着いたけれど、
同時に罪悪感が沸き起こってきた。

俺は命を助けてもらったのに、
化け物を見るみたいに逃げて来ちゃったなあって。
あの河童は、良い奴だったんじゃないのかなあって。

夕飯を食べた後も、風呂に入っている最中も、布団に入ってからも、
あの河童に悪いことをしたなあって、何度も、何度も思った。

川に置いてきた自転車と靴のことも思い出した。
取りに行かないと、かあちゃんにばれたら怒られるだろうなあと思った。
河童から逃げて来たから、自転車をなくしたなんて、かあちゃんは信じないだろうし。

もう一回、川に行ったら河童に会えるだろうか。
明日、川に行ってみよう。
会えたら、河童にお礼を言おう。
そう決めたら眠気が襲ってきた。



※「グンバズラアアアアア」は、実際に友達が発した言葉ですが、その他の物語はフィクションです。


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河童のかわぐちくん(3)

2011年02月23日 | rakuunanzyuku
まもなく高校生活が終わろうとしていた高校3年の2月。

僕はかわぐちくんと二人で家に帰るところだった。
僕は、何となく、頭に浮かんだ言葉をかわぐちくんに言った。

「かわぐちくんって、自分のやりたいって思ったことをあきらめないよね。今まで出逢った人の中で一番だわ」

かわぐちくんは、少し、何かを考えているようだった。
そして、「こんな話、誰も信じてくれないと思ったから、今まで、話したことがなかったけど、坂本なら、信じてくれそうだから話すわ。あきらめが悪くなったきっかけ」と言った。
きっかけなんてあったんだと思いながら僕はかわぐちくんの顔を見た。



小学生の頃の話なんだけどな。
当時、俺、水泳が苦手でさ。
まったく泳げなかったんだわ。
泳いでいる格好も無様だったらしく、
クラスのみんなは、俺の泳ぐ姿を見て、
「溺れるぅ」って腹を抱えて笑いやがった。

ついたあだ名が『ハンマーブロス』。
スーパーマリオに出てくるだろ?ハンマーブロス。
クッパのちっちゃいやつな。
泳げない人のことを金槌って言うのを知っていた奴がいたんだな。
それから俺は、水泳とともにスーパーマリオが嫌いになった。
俺、クリアしてないからね。スーパーマリオ。

その年の夏休み。
俺は泳げるようになりたくて練習しようと思ったわけよ。
夏休みあけの水泳授業で、また馬鹿にされるのも嫌だろ?
だけど、プールにいくと誰かかれかに会うし、
プールは避けて、川で練習をしようと思ったわけ。
プールより川の方がおもしろそうだし、
川なら、水泳帽も被らなくて良いし。
何せ、馬鹿にされることもないし。
ズボンははかないで、海パンのまま自転車にまたがって川を目指した。

いなかった?
水泳授業があるからって、海パンを履いて学校に来たはいいけれど、
水泳授業が終わって、パンツを持ってくるのを忘れて、帰るまでノーパンだった奴。


まあ、そんなわけで、
川に入って、泳いで、
疲れたら小さい魚を探して、
一人で遊ぶっていうのを何日間か続けた。

ある日、
足が川の底につくっていうのを確認しながら泳いでいたんだけど、
知らず、知らずのうちに、深くまでいっていたんだな。
泳いで、足をつこうと思ったら、川の底に足がつかないわけよ。
もう、その時点でパニック。
やばい、やばいと思いながら、足をバタバタさせるだけでさ。
水は飲んじゃうしでね。


もう死ぬかもしれないと思った、その時、
俺の体が水面から出たのよ。
助かったあって、ふと我に返ったら、誰かが肩車してくれていることに気づいた。
ゆっくり、ゆっくり、川の外に移動しているのがわかった。

川から出てびっくり。
肩車をしている人を見たら、
人じゃなくて河童。

緑色の河童だったわけよ。


またパニックな。




※この物語はフィクションです。




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河童のかわぐちくん(2)

2011年02月22日 | rakuunanzyuku
そういうわけで、僕の友達、河童のかわぐちくんの話なんだけど、
かわぐちくんが河童というわけじゃあない。
かわぐちくんは人間だ。
今まで、出逢ってきた人達の中で、ひときわ、あきらめの悪さにかけては群を抜いている男。
かわぐちくん。

そのかわぐちくんと僕は高校の時に出逢って友達になり、
そのかわぐちくんから聞いた話に、
川で溺れていたところを河童に助けてもらったって話がある。
僕のお気に入りの話だ。

そのお気に入りの話をする前に、
少しばかり、かわぐちくんのあきらめの悪さの話をしたい。
あきらめが悪いというか、粘り強いというか、
僕は、かわぐちくんのそんなところが好きだ。

小学か中学の卒業文集に『世界一周旅行をする』って書いらしいんだけど、
高校の時も、何度か言っていた。「世界一周旅行をする」って。
その時、「やりたいことなんて、そうそう、見つからないからさ。大切にしたいんだよね」とも言っていた。

あと、高校の時に好きになった人ってのが先生だったんだけど、
食事に誘って見事に断られたこともある。
男子生徒から人気がある先生だったんだけど、
食事に誘ったのは、僕の知るところでは、かわぐちくんしかいない。
一年くらい想い続けた結果、その先生には彼氏がいることが発覚。
その時も「別れるってパターンもある」とあきらめていなかった。
さすがに結婚するって退職した時はあきらめたけどね。
その時は、「めっちゃ好きな人なんて、そうそう、いるもんじゃないと思うんだよね」と言っていた。


あきらめないけれど、実現もしなかった。
そんな話の方が実は多い。


そのたびに、かわぐちくんは泣いた。




※この物語はフィクションです。




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河童のかわぐちくん(1)

2011年02月16日 | rakuunanzyuku
君は四季の匂いを感じることができる?


僕は四季の2つの匂いは感じることができる。
実は、別の何かの匂いなのかもしれないけれど、
ああ、春が来るなって匂いで季節の到来を感じるんだ。
毎年のことじゃないし、匂いを嗅いだ、次の日も嗅げるってわけじゃない。
本当に、ふとした時に、季節の匂いがする。
そんな日は、いつも以上に空気を意識的に吸い込んで、
季節の移り変わりを楽しむ。

先日、友達と居酒屋で、ご飯を食べている時にも、そんな話になった。
友達が「私、四季の匂いが4つともわかるんだ」って話をした。

「え?4つとも?」驚きとともに、自分は2つは感じることができるんだって話をした。
2つの季節に匂いがあれば、他の2つの季節に匂いがあってもおかしくない。

「あと、かぜの匂いもわかる」

風の匂い?
僕は、必死で理解しようとした。

「かぜって、くしゃみとかの風邪ね。ばい菌の匂いって言うのかなあ。風邪をひいていない人でも、あっ、この人、風邪をひきそうだっていうのがわかる」

友達は、信じてないでしょ?って表情で僕の顔を見たから、
「信じてるよ」と答えた。

「インターネットで調べたら、風邪の匂いを感じることができる人は私以外にもいたんだ」
他にも、同じ人がいるのが嬉しそうだった。

「そういえば、俺の友達に、テレビの電源がついているのがわかる人がいる。テレビは暗いのに、電源がついているのがわかるの。ゲームをした後にテレビの電源を消し忘れてテレビが真っ暗になるでしょ。あれがわかるの」

「私にもいる!」

お互い、同じいる人がいるのが嬉しくて話は盛り上がった。

「私、霊感もあるみたい」

「いや、霊感があるのは信じるけど、その話は良い」
即答で答えた僕を見て、友達は微笑んだ。


そんな話で盛り上がった、その日の帰り道。
僕は久々に高校の時に出逢った一人の友達のことを思い出した。



河童のかわぐちくん。



かわぐちくん、元気だろうか?
今も、あの口癖は変わらないのだろうか?



これから、話す物語は、そんな河童のかわぐちくんの物語だ。




※この物語はフィクションです。




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花のついた帽子の物語・その後

2011年01月05日 | rakuunanzyuku
ポストを開け、数枚の年賀状を手に取った。
万歳をしている、まだ幼い男の子が年賀状に印刷されていた。
メッセージには、今年の目標は『挑戦!何に挑戦するかは不明!』と書かれている。

不明かよ!と無言のつっこみを年賀状に入れ、
誰だよ、誰なんだよ、この年賀状。
ちょっとうけたじゃねえかよと差出人の名前を確認したら友達のカメムシからだった。
あれ?カメムシに喪中のハガキを出していなかったけと頭の中に一瞬疑問符が浮かぶが、出すのを忘れたのだろうとすぐに解決した。

そして、再び、幼い男の子の写真を見る。
目が似ている気がするなあ。
アゴはまだ出ていないみたいだ。
大きくなったら、「お父さんのアゴが出ているから、僕も出たんだ」って責められるんだろうな。
カメムシよ。もし、責められたら、その子どもを俺に会わせろ。
俺が言ってやる。「俺はお父さんのアゴは好きだけどなあ」って。


前置きが長くなったけれども、
そのいくつか来た年賀状の中に、
モチダさんって人から来た年賀状がある。

モチダさん。塾生諸君は覚えているだろうか?
花のついた帽子をかぶって散歩をしていたおじいちゃんを楽雲庵塾で作品にし贈ったあの話を。

花のついた帽子のおじいちゃんが3年前に亡くなった時、
モチダさんの息子さんから、その知らせを電話でいただいた。

線香をあげに行った時に、初めて息子さんとお会いし、
その後、何度かの手紙のやりとりをしたっきり連絡をとっていなかった。

覚えていてくれてたんだあ。
それだけで嬉しかった。

近々、手紙を書こうと思う。

その年賀状に、ことばを使う動物はイトカワと書かれていたが、
イトカワって何?魚?と未だ、その生き物がわからない。
ひさびさに塾長ブログのカテゴリーの一つ、知ったかシリーズでも更新しようかな。




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あっという間に時は流れる

2010年12月14日 | rakuunanzyuku
楽雲庵塾本第2巻の進捗状況をそろそろお知らせしようかな。
前回は、いつお知らせしたんだっけと、
過去の日記を読み返してみると、
かれこれ2ヶ月近くたっている。
1ヶ月は、ぼけぼけしていたらあっという間に流れる。
なかなかうまく進まなかった。

第三章は勢い良くかけたんだどなあ。
今、書いている章は、なかなか勢いにのれない。
書いては、違うな、書いては違うなと、
なかなか進まない。

進むこと10ページ。
どれだけ遅いんだって話。
12月、1月には一つの章を書き終えたい。

この前まで書いていた『180000のラブレター』は、
かなり勢いよく書けたんだけどなあ。


今日は、ちょっと書いてから寝よっと。



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180000のラブレター(7)

2010年12月13日 | rakuunanzyuku
あの場面で二人っきりになるなんてなあ。
俺は昨日のパチンコ会館王将の出来事を思い出していた。
今日は、携帯電話のメールが気になって仕方がない。
メールが来るたびに、あの女性店員からのメールかなって期待を膨らませて見ている。
こんな時に入ってくる電気屋の宣伝メールがうざくて仕方がない。
期待しては、はずれ、その日は結局、メールはこなかった。


手紙を渡して2日目。
今日も、携帯電話を期待して見ている。
誰かに相談しているだろうかと考える。
仮に相談したら「そんなパチンコ屋に来る男なんてろくな奴いないよ」とアドバイスするだろうなあと悲観的になる。いや、客観的になる。
あの女性店員は迷っているだろうか?
そうして2日目もメールはこなかった。


3日目。
今日、メールが来なかったら、たぶんもう来ないだろう。
メールアドレスを書き間違えただろうか。
電話番号も書いておけば良かったか。
手紙をもっと長くかけば良かったか、後悔の念がよぎる。
そうして3日目もメールはこなかった。


4日が経ち、5日が経ち、1週間が経ち、10日が経った。
結局、メールは来なかった。


あの日をさかいにパチンコ会館玉将にも行っていない。
これからも行くことはないだろう。


あんな好みの人に会うことも、なかなかない。
なかなかないが相手が何とも思っていなかったら仕方がない。
これが現実。
これでふられること6回目。
いや、これはふられたうちに入るのか?
食事を誘って断られるのもふられたうちに入るのか?

まあ、どっちでもいいや。
どっちにしろ、一目惚れは幕を閉じたんだから。

メールが来なかったのは残念だったけれど、
何か、すっきりもしている。


やっぱさ、好きという気持ちが溢れてきてどうしようもなかったら告白すべきだよ。
緊張しまくりながら告白すべきだよ。

無様になろうが、
人に馬鹿にされようが、
泣こうが、




好きなら好きだと言えば良い。




おわり。




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180000のラブレター(6)

2010年12月12日 | rakuunanzyuku
このままで良いのか?
何もしなくて、本当に良いのか?

頭の中でリピートされる。

パチンコ会館玉将の外に一旦、出たものの、すぐに店内に戻った。
店内には、閉店を知らせる音楽が流れていた。

「ありがとうございました、ありがとうございました。お忘れ物なさいませんよう、お気をつけてお帰り下さい」
流暢なアナウンスが店内に流れる。


トイレに行って帰ってくるまでの間に手紙を渡すことができなければ、
もう手紙を渡すこと自体あきらめよう。
これが最後だ。
そう自分に言い聞かせ、
それにしても怪しいよな俺、と思いながらトイレに入った。

そんなにしたくもない小便をしながら、
トイレの前に貼られているビラをなんとなく眺めた。


『王将アイスとパチンコ会館玉将とは一切関係がございません。パチンコ会館玉将店長』


ばあちゃん家で食べた王将アイスを思い出した。
間違う奴なんているのかよ。
ギャグか?

手を洗い、手を乾かす機械に手を突っ込みながら鏡で自分の顔を見る。
トイレのドアが開くのを鏡越しに眺めた。


え?何が起こったか把握するのに時間を要した。


トイレに入ってきたのは、好みの女性店員だった。


戸惑っている俺を見て、
女性店員は照れ笑いを浮かべた。

トイレに誰かいないか、忘れ物がないかを確認しに来たのか・・・。
手紙を渡さないと。
こんなチャンスなかなかない。
勢いが増す。
手が半乾きのまま、ズボンの後ろポケットに手を入れ手紙を取りだした。


「これ読んでください」


封筒にも入っていないメモのような手紙。
手紙は、少し濡れていた。


「え?え?」


女性店員は、頬を紅潮させ、何が起こったか把握できていない。
クレームの手紙ではありませんという言葉がなぜか頭の中に浮かぶ。


「後でで良いんで読んでください」


そう言うのがやっとだった。
トイレから出て、店を後にした。

やっと渡せた。やっと渡せた。
心弾ませる。





180000のラブレター。





つづく。


※この物語はフィクションです。



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次回、最終回。



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180000のラブレター(5)

2010年12月11日 | rakuunanzyuku
次の日も連続でパチンコ会館玉将に行ったが、
やはり手紙なんて渡せる勇気もなく、
財布に入っているお金もなくなり、
結局、マイナス60000円。
2日で合計120000円の負け。


そして、さらに次の日もパチンコ会館玉将に向かった。
これで3日連続。

パチンコをしていない人には、
まったくもって理解できないかもしれないが、
パチンコに負けた、その日は半端じゃない自己嫌悪に陥るが、
大抵、次の日は、リセットされている。
今日は勝てるだろう。良い加減、今日は勝てるだろうと都合の良いように考える。
そして駆り立てられるようにパチンコ屋へと向かう。


パチンコ会館玉将の店内に入り、
相も変わらず、『昆虫に夢虫』に座る。

パチンコを打ちながら、
今日で最後にしようと心の中で呟く。
手紙を渡せば、パチンコ会館玉将に来づらくなるし。


1万円がなくなり、2万円がなくなる。
2時間が経過。


パチンコ会館玉将で働く好みの女性は、
今日も勤務していた。


俺は営業という仕事柄、飛び込みで営業に行くこともあるのに、
どうして、好みの女性を前にすると、
こうも緊張して手紙を渡せないんだろう。

営業も断られるのが当たり前。
食事を誘って断られるのも当たり前。

ただ、時々、幸運が起こる。
時々、起こる幸運を手にしたいがために行動を起こす。

行動を起こさなければ傷つくことはないが何も変わらない。
幸運は行動を起こさない奴には決して起こらない。

だけどなあ。だけど緊張して、どうしようもない。


パチンコをしながら、そんなことを考えていた。


ありえないことに、
俺が座る台、座る台は、
今日もうんともすんとも言わない。


6時間。
これほどまでに、あっという間に流れる時間もない。
これほどまでに、あっという間に金がなくなることも、そうそうない。
閉店の音楽が店内に流れた。

今日も60000円。
3日連続で180000円。
3日で給料を使い果たした。
俺は、何のために働いているのだろうか、と頭をよぎる。

好みの女性に手紙を渡すタイミングをうかがいながら、
足は店の外へと向かう。


もう手紙を渡すことなんてあきらめよう。
何をしていたんだ、この3日間。
足取り重く、店の外に出た。



つづく。


※この物語はフィクションです。



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180000のラブレター(4)

2010年12月08日 | rakuunanzyuku
パチンコ会館玉将に行っていたのは、
あの人に出逢うためだったのかもな。

ポジティブ。
根拠もないポジティブ。

食事に誘う手紙をポケットにしまい、
パチンコ会館玉将に向かうために着替えを済ませた。

給料が入って、すぐの金曜日。
しかも『0』の付く日。
『0』のつく日は玉将デー。
お日柄も良し。
仕事もめずらしく17時きっかりに終わった。
まさしくパチンコに行けと言われているみたいだ。

颯爽と、お決まりの『昆虫に夢虫』に向かった。
パチンコを打ちながら、
先日、会った好みの子が勤務していないかと、周りを眺めながら打つ。

金は次から次へと台に吸い込まれ、
あれよ、あれよと2万円。
我慢だ、我慢の時だ。
まだ、誰もそんなに積んじゃあいない。

隣に座る雪駄を履いている男性が、
ここで当たりをひく。

隣の台が当たり出すと、
自分の打っている台は出ないんじゃないのかという錯覚に陥る。
それまで2万円を突っ込んだ台を移動した。

が、この選択が失敗。

次に座ったおばちゃんが、カメムシゾーンに突入。
カメムシゾーンは当たりが確定するゾーン。
そして、まもなく当たる。

雪駄を履いた男性が、
玉で一杯になった箱を後ろに置いて貰うために店員を呼んだ。


店員を見て胸が高鳴る。


先日会った好みの女性だった。
ポケットにしまってある手紙を意識した。

今日は、ジュースの販売員としてではなく、
店の店員として働いていた。
玉が一杯になった箱を後ろ側に置く。

大抵の店は、ジュースの販売員は販売員しかやらないが、ここはどうも違うらしい。
パンチパーマの店長も、時に、景品交換に回ることもある。
いろんな役割を掛け持ちしているようだった。
まあ、そんなに客もいないから、大変なんだろう。

いや、俺の財布も大変だ。
マイナス3万円になった時点で財布には残り1000円しかない。
近くにあるコンビニのATMに金をおろしにダッシュする。


コンビニから戻ってきたら、
雪駄を履いた男性、その隣のおばちゃんもたくさんの箱を積んでいた。

4万円を過ぎた当たりから、
今日は、当たる気がしなくなってくる。
が、すでに暴走モード突入。
意地。一度で良いから当てたい。

そして終わってみれば、マイナス6万円。
閉店まで残り1時間。

俺は、席を立ち、好みの女性を探した。
女性は、せわしなく働いていた。

まずは、トイレに行こうと、
トイレで用を済ませ、
再び、女性を探すが、
やはり、女性はせわしなく働いていた。

今日は、玉将デーだもんな。
今日のところは、今日のところは、
手紙を渡さないで帰ることにしようと、
いじけながら家路に着いた。


つづく。



※この物語はフィクションです。


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