黒田東彦総裁の就任以降、日銀は異次元の緩和を行い、毎月7~8兆円もの国債を市場から買い上げている。2014年末までに日銀が買い入れる長期国債の残高は190兆円まで増える見込みだ。
その一方で、日銀はデフレ脱却を目指し、2年後にCPI(消費者物価指数)2%達成を目標としている。これにともない、金利は確実に上昇する。金利が上昇すれば、国債の価格は下落する。すると、国債を大量に買い溜めている日銀のバランス・シートは必然的に悪化することになる。
「金融緩和を続ければ続けるほど、日銀は自らの保有資産を目減りさせる宿命にある。近い将来、日銀は債務超過に陥る可能性もある」(大手機関投資家幹部)
長期金利が2%となると仮定した場合、現在の10年物長期国債の金利(0.7%台)は一気に1.2%上昇する。すると、「日銀が保有する国債には16兆円もの評価損が生じる」(債券アナリスト)と試算される。これに対し、日銀の備えとなる債券取引損失引当金と法定準備金の合計は5兆円足らず。保有資産の含み益を加味しても債務超過は免れない。
もし日銀が債務超過になったら、日本はどうなるのか。
「円は通貨としての信用を失い、空前の円安が予想される。黒田総裁は債務超過の可能性について、日銀内に緘口令を敷いています」(市場関係者)
日銀は国債の会計処理について、含み損を表面化させにくい「償却減価法」という特殊な方法を適用しているため、債務超過は杞憂との指摘もある。しかし、日銀といえども東証に株式を上場する銀行。こうした稚拙な手法はいずれ市場のマイナス評価を招く。
黒田総裁は8月8日の会見で、消費税率引き上げ先送りについて「財政規律の緩みや財政ファイナンスなどが懸念されると長期金利に跳ね返り、せっかくの金融緩和の効果が減殺(げんさい)される」と釘を刺した。その真意は、国債の暴落懸念にある。
世界最悪の財政状況下での異次元緩和は、いわば「壮大な実験」である。
だが、日銀前副総裁の山口廣秀氏は「成功する確率は1割程度」と周囲に語っている。自らが債務超過に陥るリスクを冒しても、日銀は「壮大な実験」に賭けるのだろうか。
安倍政権発足から1年が経過した。この間、大幅な金融緩和を行ったアベノミクス効果により、「円安・株高を背景に企業業績は上向き、消費マインドは回復基調にある」(大手証券幹部)ことは確か。だが一方で、アベノミクスの弊害も目につき始めた。
池尾和人・慶応大教授は、「安倍政権発足時から約20%の円高是正が進んだにもかかわらず、輸出数量の増加はほとんどみられていない」と指摘している(日経『経済教室』12月4日付)。
円安が進んだというのに、なぜ輸出が伸びないのか?
通常、円安になると「Jカーブ効果」が現われる。円安で輸出品の値段が安くなるため、貿易収支は一時的に悪化する。だが、しばらくすると輸出の全体量が増加するため、「J」の字を描くように黒字化するという経済理論だ。
だが今回、円安で期待された輸出は「自動車以外は、目に見えた改善品目は見当たらない」(大手商社幹部)。輸入のほうは、震災に伴う石油・ガスなどの代金が円安で膨らむため、日本の貿易収支は10月に過去最大の1兆907億円の赤字となった。貿易赤字は16カ月連続。10月の経常収支は9カ月ぶりに赤字に転落した。日本の「国富」は確実に目減りしている。
しかも新興国の成長鈍化や米国の金融緩和縮小もある。Jカーブ効果は期待薄だろう。
また、アベノミクスを支える日銀にも暗雲が垂れ込め始めた。黒田総裁は2年間で2%の物価上昇を目指すが、政策を決める9人の委員のうち4人もが、黒田総裁に反旗を翻したのだ。
日銀金融政策決定会合(10月31日)では、白井さゆり審議委員と佐藤健裕審議委員の2人が物価見通しに「下ぶれリスク」を明記するよう提案。また、木内登英審議委員は、「2015年度にかけて2%目標達成が可能」とした記述の削除を提案した。
さらに、1人の審議委員は「2%に向かって物価が上昇することは不確実性が高い」とし、見通しが下振れした場合は「金融政策に対する信認を毀損するおそれが高い」とまで指摘した。
来年4月には消費増税も控えている。アベノミクスの行きつく先が国債暴落と海外への資本逃避という悪夢にならないことを祈るばかりだ。
◉ちなみに日本自動車工業会の豊田 章男会長によるコメントは次の通り。全文を引用させていただこう。
「この度、与党・税制改正大綱において、車体課税に関して難航していた自動車取得税率の一部引き下げ、エコカー減税の拡充等が決定され、自動車ユーザーの税負担が一定程度軽減されることとなった。関係者のご尽力に感謝したい。 自動車メーカーとしては、今後も魅力ある商品を投入していくことで、国内市場の活性化を図ってまいりたい。
しかしながら、二輪車、及び対象が限定されたとはいえ軽自動車の増税については、残念と言わざるを得ない。
当会としては、今後、消費税10%段階において、自動車取得税の確実な廃止を実現するとともに、今回提示された環境性能課税が、自動車ユーザーの確実な負担軽減に資する制度となるよう、引き続き活動してまいりたい。」
★トヨタは本当に日本の会社なのか?
その一方で、日銀はデフレ脱却を目指し、2年後にCPI(消費者物価指数)2%達成を目標としている。これにともない、金利は確実に上昇する。金利が上昇すれば、国債の価格は下落する。すると、国債を大量に買い溜めている日銀のバランス・シートは必然的に悪化することになる。
「金融緩和を続ければ続けるほど、日銀は自らの保有資産を目減りさせる宿命にある。近い将来、日銀は債務超過に陥る可能性もある」(大手機関投資家幹部)
長期金利が2%となると仮定した場合、現在の10年物長期国債の金利(0.7%台)は一気に1.2%上昇する。すると、「日銀が保有する国債には16兆円もの評価損が生じる」(債券アナリスト)と試算される。これに対し、日銀の備えとなる債券取引損失引当金と法定準備金の合計は5兆円足らず。保有資産の含み益を加味しても債務超過は免れない。
もし日銀が債務超過になったら、日本はどうなるのか。
「円は通貨としての信用を失い、空前の円安が予想される。黒田総裁は債務超過の可能性について、日銀内に緘口令を敷いています」(市場関係者)
日銀は国債の会計処理について、含み損を表面化させにくい「償却減価法」という特殊な方法を適用しているため、債務超過は杞憂との指摘もある。しかし、日銀といえども東証に株式を上場する銀行。こうした稚拙な手法はいずれ市場のマイナス評価を招く。
黒田総裁は8月8日の会見で、消費税率引き上げ先送りについて「財政規律の緩みや財政ファイナンスなどが懸念されると長期金利に跳ね返り、せっかくの金融緩和の効果が減殺(げんさい)される」と釘を刺した。その真意は、国債の暴落懸念にある。
世界最悪の財政状況下での異次元緩和は、いわば「壮大な実験」である。
だが、日銀前副総裁の山口廣秀氏は「成功する確率は1割程度」と周囲に語っている。自らが債務超過に陥るリスクを冒しても、日銀は「壮大な実験」に賭けるのだろうか。
安倍政権発足から1年が経過した。この間、大幅な金融緩和を行ったアベノミクス効果により、「円安・株高を背景に企業業績は上向き、消費マインドは回復基調にある」(大手証券幹部)ことは確か。だが一方で、アベノミクスの弊害も目につき始めた。
池尾和人・慶応大教授は、「安倍政権発足時から約20%の円高是正が進んだにもかかわらず、輸出数量の増加はほとんどみられていない」と指摘している(日経『経済教室』12月4日付)。
円安が進んだというのに、なぜ輸出が伸びないのか?
通常、円安になると「Jカーブ効果」が現われる。円安で輸出品の値段が安くなるため、貿易収支は一時的に悪化する。だが、しばらくすると輸出の全体量が増加するため、「J」の字を描くように黒字化するという経済理論だ。
だが今回、円安で期待された輸出は「自動車以外は、目に見えた改善品目は見当たらない」(大手商社幹部)。輸入のほうは、震災に伴う石油・ガスなどの代金が円安で膨らむため、日本の貿易収支は10月に過去最大の1兆907億円の赤字となった。貿易赤字は16カ月連続。10月の経常収支は9カ月ぶりに赤字に転落した。日本の「国富」は確実に目減りしている。
しかも新興国の成長鈍化や米国の金融緩和縮小もある。Jカーブ効果は期待薄だろう。
また、アベノミクスを支える日銀にも暗雲が垂れ込め始めた。黒田総裁は2年間で2%の物価上昇を目指すが、政策を決める9人の委員のうち4人もが、黒田総裁に反旗を翻したのだ。
日銀金融政策決定会合(10月31日)では、白井さゆり審議委員と佐藤健裕審議委員の2人が物価見通しに「下ぶれリスク」を明記するよう提案。また、木内登英審議委員は、「2015年度にかけて2%目標達成が可能」とした記述の削除を提案した。
さらに、1人の審議委員は「2%に向かって物価が上昇することは不確実性が高い」とし、見通しが下振れした場合は「金融政策に対する信認を毀損するおそれが高い」とまで指摘した。
来年4月には消費増税も控えている。アベノミクスの行きつく先が国債暴落と海外への資本逃避という悪夢にならないことを祈るばかりだ。
◉ちなみに日本自動車工業会の豊田 章男会長によるコメントは次の通り。全文を引用させていただこう。
「この度、与党・税制改正大綱において、車体課税に関して難航していた自動車取得税率の一部引き下げ、エコカー減税の拡充等が決定され、自動車ユーザーの税負担が一定程度軽減されることとなった。関係者のご尽力に感謝したい。 自動車メーカーとしては、今後も魅力ある商品を投入していくことで、国内市場の活性化を図ってまいりたい。
しかしながら、二輪車、及び対象が限定されたとはいえ軽自動車の増税については、残念と言わざるを得ない。
当会としては、今後、消費税10%段階において、自動車取得税の確実な廃止を実現するとともに、今回提示された環境性能課税が、自動車ユーザーの確実な負担軽減に資する制度となるよう、引き続き活動してまいりたい。」
★トヨタは本当に日本の会社なのか?