マクドナルドの横暴

　最初、いつもながら凝った良いCMだと思った。

　マクドナルドのマックグランのCMの事である。

　怪獣やメカの造詣は賛否あると思うが、雰囲気としては、「東宝特撮」の感じが良く出ているし、「マックグラン」の看板を見て、怪獣が「ううん、わしも食べたいぃぃぃ」とばかりに車をサンドしてしまうと言う安直なオチも、CMなので許してしまおう。

　問題は、その後である。
　CMの作成者側も平板な仕上がりだと思ったのであろう、もう一段のオチが用意されている。

　いきなり、「怪獣」の頭が取れてスーツアクターが顔を出す。
　で、それでも「着ぐるみを着たまま」では、やっぱり食べれないと泣き声をあげるのであるが、これはちょっと調子に乗りすぎだと思うのだ。

　何に怒っているのかと言うと、子供への配慮である。

　確かに、今の子供たちは結構判っている。
　実際に、巷にはメイキング物も溢れている。
　だけど、彼らは彼らなりに、現実と空想に折り合いをつけつつ、ヒーロー物、怪獣物を楽しんでいるのである。

　判っているような顔をして、目の前で暴れる「ゴジラ」や「ガメラ」を見ると、「あぅ、やっぱりいるのかな？」とどきどきしているのである。

　なのに、それを天下のマクドナルドが、したり顔でこういうCMをがんがん流してしまって、本当に第一の顧客である子供のことを考えているのか、と疑ってしまう。

　『「ゴジラ」でも「ガメラ」でもありませんので』と、言い訳するのかもしれないが、子供は馬鹿ではない。
　結構な数の子が、このCMをキッカケに、いろいろと気付いてしまったのではないかと、私は恐れている。

　子供たち自身も、夢見る時間がどんどん少なくなる昨今である。
　確かに、いづれ、子供たちは「正解」にたどり着くのであるが、だからと言って、大人の手で、その子の残された時間を毟り取るのは、なんとも納得のいかない話だ、と私は思う。