不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

「気の問題」

2006年07月11日 01時43分56秒 | Story
 幽霊は信じない。  この世に生を受けて三十余年になるが、一度も見たことのない物は、とうてい信じられないからだ。  それを、あなたには霊感がないから、等という人もいるが、その言い方も、なんだか自分が鈍感みたいに言われている様で、気に入らない。  しかし、「気」という物はあると感じている。  たとえば、元気いっぱいで活気溢れる人と話していると、何となくこちらまで元気になった様な気がした経験は無 . . . 本文を読む

「雪の回廊」

2006年02月20日 22時55分24秒 | Story
 「まるでスターウォーズで★の中をワープしているシーンみたいだ。」  「このままワープして、二人だけの世界に行けたらいいのにね。」  高速をとばしながら、降り出した雪の中、ふと姫と交したそんな会話を思い出す。  「彼氏ができたら姫って呼ばれるのが夢なの。」  その言葉に習って、君を姫と呼んでいたけれど、君が本当に俺にとっての姫だったのだと気付いたのは、姫と別れて俺が姫のナイトを務められなくなってからの事だった・・・ . . . 本文を読む

「みかん山にて」 ~後編~

2006年01月19日 23時51分43秒 | Story
(つづき)  それは、これまで嗅いだことのないええ匂いのする場所じゃった。  へいすけは、うっすらと目を開けた。  あたりには、一面に見たこともない花が咲き誇っておった。 『きれいじゃぁ・・・。』  しばらくの間、へいすけは、ぼーっとしたまま、その花畑に見とれておった。  ずっと、みかん山の世話ばっかりで、こんな風にぼーっとして、景色を眺めるのも久し振りの事じゃった。  なーんも考えず、しば . . . 本文を読む

「みかん山にて」 ~中編~

2006年01月18日 19時57分39秒 | Story
 (つづき)  そもそも、その冬は、どことなくおかしかった。  秋のもみじも散らんうちに、ふいに木枯らしが吹いたかとおもうたら、いきなり、もっさりと雪が降った。  かっぱの長老の亀甲占いじゃ、今年の冬は、そう寒くは無かろうと出とったし、じさまも、ことしは木を守る藁は、あまりいらんかも知れんなぁと言うとったもんじゃから、突然の雪には、人もかっぱも大あわてじゃった。  へいすけは、じさまのみかん . . . 本文を読む

「みかん山にて」 ~前編~

2006年01月17日 23時36分14秒 | Story
 むかし、じさまがおった。  そのじさまはな、みかんつくりの名人じゃった。  じさまのみかんは、とおい国までひょうばんで、たいそう高い値でうれたそうじゃ。  おかげで、じさまのみかん畑は年々大きゅうなり、じさまはちっとばかし、楽な暮らしが出来るようになった。  それでもな。  ねっから、働きモンのじさまは、どんなに畑が広うなっても、どんなに沢山の人を雇えるようになっても、必ず、自分の足でみかん . . . 本文を読む

「THE SHINING」

2006年01月04日 23時06分39秒 | Story
 古(いにしえ)より、「輝き」は、邪を払うとされていた。  それゆえ、水晶を始めとした輝石、宝玉の類は、宗教儀式には欠かせぬものであった。  やがて、その希少さ故に高額となり、その「破邪」の効用よりもステータスとしての効用が強くなってしまうのであるが、それでもなお、貴金属店や博物館で、大きな輝く宝飾の類を見れば、なんとなく清々しい感じを受けるのではないだろうか?  また、高価な宝飾には手が出な . . . 本文を読む

「適当な殿方」

2005年12月25日 23時59分54秒 | Story
 さて、新聞を開いてみたものの今日は日曜。  夕刊は来ないので、一度見た朝刊をもう一度読み直す。  さりとて、楽しい話はなく、仕方なく表のラテ欄へ。  うーむ、既に年末の特番ラッシュ。  しかし、たいした番組はないなぁ。  そもそも、クリスマスらしい番組を少しは放送したらどうだ、などと、放送しても見もしない癖にぶつぶついっていると、彼女がキッチンから声をかける。 「ワインを . . . 本文を読む

「名前を付ける事が好きな王様」

2005年11月27日 00時48分20秒 | Story
「うん、これは、クイット草。  こっちは、ひらりの木じゃ!」    今日も、王様は名前を付けています。  それも、もう、ちゃんとした名前のあるものに。    一度、珍しい木々を贈られて、名前を付けたときに 「いや、流石、王様。  素晴しい名前でございます!」  なんて、褒められたものだから。    それからは、有頂天。  次から次に、新しい名前を付けています。    最初は、木や草だけでした . . . 本文を読む

「初舞台」

2005年11月21日 19時06分04秒 | Story
 今日は、チコちゃんの初めてのピアノ発表会。  今年、一年生になったのと一緒にピアノを習い始めたチコちゃんは、一番最初に演奏します。  開演のブザーが鳴って、ピアノ教室の先生のご挨拶の後、チコちゃんの名前が呼ばれました。 「森の音楽会 ヤマモト チコちゃん」  会場から、みんなの拍手が沸き起こります。  しかし、チコちゃんは出てきません。  心配そうに見ていたチコちゃんのお父さん、お母さんは . . . 本文を読む

「誰そ彼の古都」

2005年11月05日 20時06分26秒 | Story
 黄昏の京は、異界となる。  特に、京の街に疎い、俺のような東者には。  碁盤の目のごとき辻角は、夕闇迫る中では、どこも同じに見える。  さて、どっちに行ったものやら。  素直に待ち合わせて、一緒に来れば良かった。 「京都は、よう解れへんやろうから・・・。」 「わかるよ、大丈夫。  店の名前だけ、教えてくれれば、先に行って待っている。」  気を遣ってくれた言葉の端に、妙に意地を張る莫迦な俺。 . . . 本文を読む

「その場所」

2005年10月25日 00時19分29秒 | Story
 大将。  このお湯割り。そこに置いてくんないか。  莫迦ぁ言うない。  そのくれぇで、奴が足りるわきゃねぇじゃねえか。  そそそ、その冷えた奴ぁもう下げちまってさ。  あと、おでんの厚揚げと底大根。  わかってるって。  そいつがねぇんじゃぁ、奴も寂しいやね。    だけど、良い奴だったよなぁ。  いつも、そこにすわってさ。  ニコニコしながら、人の話黙って聞いてやがった。  たまにゃ、 . . . 本文を読む

「陽溜まりの部屋」

2005年10月16日 02時15分15秒 | Story
 冬の柔らかな日差しが、南面したガラス戸からたっぷりと居間に差し込んでいる。  おばあちゃんは、どてらを羽織り座椅子に座って居間のこたつに入っている。  いや、その「もこもこ」とした様子は、こたつ布団にまみれていると言った方が良いのかもしれない。  あたしは、台所を片付けながら、そんなおばあちゃんの方を見て、思わず涙がこぼれそうになる。  そう、明日になれば、おばあちゃんは、ここを出て行くのだ . . . 本文を読む

「RUNNER」

2005年09月19日 23時23分54秒 | Story
「あっ!」  ボクは小さな声で叫び声を上げた。  小学校の運動会。  縦割りの色別対抗全学年リレーの時のこと。  第一走者の久美が、コーナーから直線にはいるところで、足を滑らせて転んだのだ。  久美は一年生。  ボクの妹だ。  少し体格が良い所為もあって、幼稚園の頃からかけっこだけは誰にも負けたことがない。  だから、このリレーにも文句なしに選ばれた。  1学年4クラスのこの学校の運動会で . . . 本文を読む

「セツナイキモチ」

2005年09月15日 00時47分01秒 | Story
 噂は聞いていた。  彼女とボクの親友が付き合っていると。  有り得ない話ではなかった。  だって、ボクは告白していなかったのだから。  解らなかったのだ。  先に進んで良いのか、このままが良いのか。  気付けなかったのだ。  彼女の本当の心に、自分自身の本当の想いに。  そうしているうちに、気付いてしまった。  噂が本当だったことを。  ボクは、笑って「よかったね。」としか言えなかっ . . . 本文を読む