紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『あいにくの雨で』麻耶雄嵩

2005年08月04日 | ま行の作家
オンライン書店ビーケーワン:あいにくの雨であいにくの雨で』麻耶雄嵩(講談社文庫)


麻耶流、学園ミステリー。あるいは、学校が舞台となるわけではないので、
青春ミステリーとした方がよいかもしれません。まあ、どっちにしろ
紛れもない麻耶流。麻耶色。麻耶風味。そう。救われない(笑)。

雪に囲まれた廃墟の塔で、高校生の烏兎(うと)と獅子丸、祐今(うこん)の
3人は死体を発見する。現場には塔へ向かった足跡しかなかった…。

ちなみに烏兎の名字は如月です。でも、烏有と関係するのかどうか、
作品の中では一切触れられません。同様に、もちろんメルカトル鮎も
登場せず、同じシリーズとしてくくるなら、番外、ということでしょうか。
とか書いてみましたが、実際は千街さんの解説を読むまでそこら辺、
何も分かっていなかったりします(笑)。もちろん、いろんな作品に関連
する部分もあるんでしょうが、一応事件は解決を見ているので、単品で
楽しめます。最初の方はちょっと文章が読みにくいな、という感想を
持ちましたが、それも物語が進んでいけば気にならなくなりました。

殺人事件に関しては、祐今の身にのみ多大な不幸が注がれます。
それが、麻耶流の重々しい雰囲気で綴られていくので、輪をかけて
不幸な気になります(笑)。とても冷静で思慮深い烏兎と、親友で
頭の切れる獅子丸は、少しでも事件の解決に協力したいの思うのですが、
なかなか思うようにはいきません。この殺人事件に平行して、学校では、
生徒会によって組織された“諜報部”の仕事を引退したはずの2人にしか
できない仕事、というものを引き受けてしまい、多忙な日々を過ごすことに
なるのです。この辺はいかにも学園ミステリーですね。殺人事件なんか
起こさなくても、そっちだけでシリーズになりそうなのに(笑)。

学校の事件も殺人事件も、解決します。しかし問題なのは、その
解決の仕方(笑)。私はこういう雰囲気、とても好きなのですが、
もしかしたら、もやもやが残る方もいらっしゃるかもしれません。
でも、千街さんの解説を読めば、少しはスッキリするかもです。