紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『ウロボロスの偽書』竹本健治

2005年08月04日 | た行の作家
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ウロボロスの偽書(上)
ウロボロスの偽書(下)』竹本健治(講談社文庫)


京極夏彦の『どすこい』の中で、唯一読んでいなかったネタ元。
(正確には『ウロボロスの基礎論』の方なのですが)
これでついに『どすこい。』に手が出せる(違)。
という、なんともいい加減な動機で手に取ったわけなのですが、
想像していた以上に楽しみました(^-^)。

実名小説というと、それだけでもうわくわくしてしまうのです。
カバー裏には綾辻の名前なんかも出てきたりして、作中、私の
知っている作家さんがたっくさん、それなりの行動&活躍をしてくれる、
ともうそれだけで嬉しかったり(笑)。竹本健治の作品はあまり読んで
いないのですが、『匣の中の失楽』の世界を、ちょっと軽めに仕上げました、
という感じ。それがむちゃくちゃフィットして、堪能したわけなのです。

物語は、いきなり殺人鬼の手記から始まります。そして、作者を主人公に
したエッセイ風な作品、それに本格作品である“トリック芸者シリーズ”と、
3つの“世界”が同時にスタートします。最初は混乱するのですが、
そのまま放っておいて、雰囲気で読み進んでいけば大丈夫。進むにつれ
さらに混乱していくこと請け合いです(笑)。混乱している自分を、
客観的に楽しめれば、もう読破したも同じです(何)。終盤には
作者による「この作品に論理的な解決を求めてはいけない」というような
注意書きなんかもあったりするのですが、それすら“作品の一部”であるよう。
私はただただこの世界(混乱)を満喫したのでした(^-^)。
加えて、巽さんによる解説が秀逸。巽さんも作中に登場していて、
もしかしたらこれすら私は作者による作品なのではないかと思っていたり
するのですが、どうでしょう(笑)。さらに、作者によるあとがきも
3段落ちのように用意されていたりして、ホントにもう、
全部ひっくるめて、とっても面白い作品でした。

匣の中の失楽』はなかなかてこずったりもしたのですが、
ミステリーランドの中ではあまり評判がよろしくない『闇のなかの赤い馬』。
実は、ミステリーランドの中では私、これがいちばん好きだったりします。
そういう経緯も含めて、たぶん私、竹本健治とは相性がいいんだろうな。