紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「寡黙な華」榎田尤利

2004年11月30日 | あ行の作家
榎田さんは、とても大好きな作家さんなのですが、
いちばん最初に読んだ魚住くんシリーズのインパクトが強すぎて、
その後にどんなにほぼのぼな作品を読んでも、どんなにシリアスな
作品を読んでも、感じ方が鈍くなってしまっているのです。
あれです。加納朋子とおんなじ。
「ななつのこ」「魔法飛行」のインパクトが強すぎて、
何を読んでもこれ以上のモノが見つからない…。

とは言っても、好き嫌いの激しいBLの中では、ダントツです。
それは何故かというと、物語の方向が私好みだからなんでしょうね。
普通のBL(という言い方もおかしいのですが)は、
男×男というだけで、普通の恋愛小説(少女小説)と
変わらなかったりするんですよね。もともと恋愛モノが苦手な私としては、
それだけでは読めないのです。だから、BLというジャンルは
得意だとしても、その中での好き嫌いが激しいわけなのです。

では、榎田さんの作品の、ほかとは違うところは何でしょう。
多分ですね、やっぱりキャラじゃないかと思われます。
前回読んだ「少年はスワンを目指す」にしても、
ホントの姿は誰にも理解されていない硬派な原と、
心に傷を持ったわがまま王子というカップルは魅力的です。
今回も、鼻持ちならない馬宮辺は濱田センセに似てるし(笑)、
強引で傲慢な邦彦と、どこまでも弱い千蔭はすれ違い過ぎて
どういう展開になるのか心配になるほど(大きなお世話)。
で、まさかあんな風になるとは思わなかったですしねえ。
(ヒドイよ、榎田さぁん。というような展開なんですっ)
でも結局、思った以上に千蔭が強かった、と。
それでみんなが救われました。そういう救いを残してくれるのも、
やっぱり榎田さんらしいのです。
だから榎田さんが好きなんですねえ。


寡黙な華(Shy novels 112)
榎田尤利著

出版社 大洋図書
発売日 2004.09
価格  ¥ 903(¥ 860)
ISBN  4813010318

bk1で詳しく見る オンライン書店bk1