紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『刺繍する少女』小川洋子

2005年08月30日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:刺繍する少女刺繍する少女』小川洋子(角川文庫)

博士の愛した数式』で初めて読んだ小川洋子ですが、
それ以来、密かにハマってます(笑)。
基本的に恋愛小説は苦手なのですが、単なる恋愛モノではなく、
そこに恋愛以外のモノが描かれていると、もしかしたら
大丈夫なのかもしれません(笑)。

さて、本作ですが、“美しくも恐ろし十の「残酷物語」”と
いう風に紹介されておりましたが、思ったほど残酷ではありません。
以前に読んだ『完璧な病室』とか、『まぶた』とかの方が
よほど残酷だし、より痛くてエグイです。
しかしながら、そこに流れる美しさ、凄みを帯びた美しさ、
というものは変わりません。これがなかなか言葉にしづらくて、
結局“独特の”という風に言うしかないのですが、
なにせその、短い物語にまとわりつく雰囲気というか、
その物語たちがまとっている空気というか、それが好きです。
日本語なのに、どこか日本ではないところ、
それこそフランスとか、ヨーロッパあたりで彼女の作品が
好まれている理由はその辺にあるんじゃないかと思ったりします。

小川洋子という人は、ずっと岡山にいるんだそうですね。
岡山といって思い出すのは岩井志麻子です。
まったく作風も違えば、向かっている方向だって違うのに、
どことなく同じ“におい”を感じるのは、私だけでしょうか(^^;)。
残酷さに容赦がないところ、恐ろしいことを淡々と語るところ、
そして何より、それらフィクションであるはずのことが、
実は紙一重であるということを、とてもよく知っている。
そんな風に思ったりしているのですが。